聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラ
【42日目◆12年10月20日(土)◆晴れ◆Monte do Gozo➔Santiago de Compostela◆4.5km/累計780.5km】
おっと、寝過ごした。7時に起きるつもりが25分も過ぎている。あわてて支度をし、7時49分出発。それでも、巡礼事務所が開く9時にはサンティアゴに着くだろう。
▼最後に泊まったアルベルゲだ。一枚、撮っておこう。
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坂道を下って歓喜の丘を後にする。道の右側に開けたところがあり、サンティアゴ市街の夜景が見えた。市街といってもまだ外れのほうだが。
▼これまでの田舎道と違い、明かりの数が都会に近づいたことを感じさせる。
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▼この道しるべも今日で終わりだな。40日間、本当にお世話になりました。感謝!
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寒さはそれほどでもない。空に満天の星。いい天気になりそうだ。
50分ほど歩いて空が白んできた。歩く道筋も夜から朝に変わっていき、まわりの様子が目に入るようになった。わりと大きな街のようだ。
数階建てのビルが並び、アパートかマンションか、洗濯物がぶら下がっている。このあたりは下町なんだろうな。
▼ちょっとくたびれた建物が、そこで暮らす人の生活臭を感じさせる。
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8時46分、ついに尖塔がひとつ顔を見せた。狭い通りの家の屋根の間に! 歩くにつれ、2つ、3つと数が増えていく。
▼あれは大聖堂の尖塔! 感無量というべきワンショットだ。
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▼歩くにつれて尖塔が2つ、そして3つと数を増していく。期待感で背中がゾクゾクしてくる。 |
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大聖堂へ向かう巡礼路はそれほど広くない。標識に従って2度ほど曲がり、アサバチェリーア通りに入れば、あとはまっすぐ進むだけ。そして、最後はトンネル。大聖堂の正面に出るには、ここをくぐりながら階段を降り、左に進む。
▼トンネル上の建物はカテドラルの一部。これはあとで知ったことだ。
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トンネルをくぐり降りて、ほんの少し左に行くと、石畳のオブラドイロ広場があり、巨大な建造物――サンティアゴ大聖堂の威容が目に飛びこむ。ついに到着! 感激の一瞬だ!
▼サンティアゴ大聖堂の正面。巡礼の旅に出て42日目、とうとう目的の聖地に到達できた。感無量!
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▼巡礼仲間に記念写真を撮ってもらう。大聖堂の大きさに比べ、なんとちっぽけなわたし。
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到着したときにはほとんど人影のなかったオブラドイロ広場に、少しずつ巡礼者が増えてきた。写真は撮ったし、感慨にふけるのは後まわしにして、混まないうちに巡礼事務所に行こう。
▼仲間も次々にやってくる。今の時間に着くということは、わたしと同じアルベルゲから来たんだろう。
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巡礼事務所で、午前11時までに巡礼完遂証明書を入手すると、正午から行われる巡礼者のためのミサで、出発地・出身地(国)・人数が読みあげられるそうだ。
本当は名前まで読んでほしかったが、そこまではムリだ。なにしろ人数が多すぎる。「日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会」のホームページで公開している統計データでは、去年(2011年)の10月、巡礼証明書を手にした人の数は1万6000人強。単純計算で1日500人を超えている。
今年はもっと増えているだろうな。早く行かないと混雑して待たされるかもしれない。
おっ、大聖堂の鐘が鳴りだした。いいなあ。
鐘の音を聞きながら、大聖堂沿いに左に曲がり、3、4分歩くとビラール通り。巡礼事務所は通りに入ったすぐのところにあった。
▼白い看板の出ているところが巡礼事務所の入り口。
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▼2階に受付けがあり、クレデンシャルを提示して証明書の発行手続きをする。
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▼手続きを終え、無事に証明書を手にできた。
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巡礼証明書をもらってホッとひと息。少し休もう。
通りに出ると、お土産物屋が並んでいる。紙筒を売ってるじゃないか。そうだよなあ。大事な証明書に折り目をつけるわけにもいかないし、どうしようか、みんな考えるもの。さすが商売人だ。で、紙筒を買い、証明書を丸めて入れた。これで日本まで安心だ。
カテドラルのあるオブラドイロ広場への道をゆっくり歩く。通り沿いにバルもあるけど、休むとしたらあそこだな。今日の宿として予約してあるホテルのバルだ。
▼ホテルへ行くにはオブラドイロ広場を横切る。日差しを浴びて今日は上天気だ。
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▼大聖堂の斜め前にある横長の建物が「ホテル パラドール デ サンティアゴ - オスタル レイス カトリコス」という長い名前のパラドールだ。スペインでも有数の芸術的建造物として知られている。
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▼5つ星ホテルのこのパラドールは、オブラドイロ広場の北側に面している。ここのバルでひと休み。
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▼パラドールの入り口。
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スペイン国内に数あるパラドールのうち、1、2を争うといわれるのがここサンティアゴのパラドールだ。
旅の最終地の夜はここにしよう。そう決めて日本で予約してきた。
チェックインは3時だから、ちょっと様子見でバルへ。
リュックが重いし、フロントに預けてもよかったのだが、言葉の壁を乗り越えるのがおっくうで、まあいいか。いつものことだ。
15世紀建造の歴史を誇る建物だけに、調度はさすがに重厚・壮麗で、風格・貫録ともに群を抜いている。
背筋をピシッと伸ばし、慇懃な態度の老ウェイターが運んできたケーキを食し、カフェオレを飲む。だけど、10時のお茶にしてはなんだか少し硬すぎやしないか。
▼ケーキとカフェオレでひと休み。使い古した、いやいや、使いこまれたテーブルが歴史を物語る。
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それはともかく、さてと、正午のミサの前に大聖堂の中を見ておこうか。
リュックをかつぎなおして広場へ出、大聖堂の正面階段を上る。入り口から中に入ってみると、ミサまでまだ1時間もあるのに、すでに大勢の人が席を埋めていた。
▼聖堂の正面の席は埋めつくされていた。巡礼者だけでなく一般の人も混じっている。
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▼空席をさがしていると、昨日着いたはずのジョディに遭遇。もう帰国したとばかり思っていたのでびっくり。
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▼大聖堂の祭壇。
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ようやく空席を見つけ、リュックをおろして座る。信者でもないわたしだが、今日だけは祝福してもらいたい気持ちでいっぱいだ。日本を発って42日目、よくぞ歩きとおした。その総決算がこのミサだ。
カテドラルの中で、ブラジルのジョデイをはじめ、旅の途上で顔を見知った人に何人か出会った。彼ら巡礼仲間もみんな同じ思いでここにいるのだろう。
▼正午ちょうどにミサが始まった。
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12時6分、午前11時までに到着して巡礼証明書をもらった人たちの読みあげ。耳をすまして聞く。ハポン。たしかに呼ばれた。それ以外の言葉は耳を素通りしたが、ハポンだけはしっかり記憶に残った。
巡礼者のためのミサは1時で終了。これでサンティアゴ到着のセレモニーは終わった。少しだけやり残したことはあるが、それは明日にまわそう。
カテドラルの裏手にあるキンタナ広場のオープンテラスでお昼。
▼キンタナ広場からも大聖堂の巨大な塔を仰ぎ見ることができる。
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▼サラダとトルティージャのお昼。なんともそっけないサラダで、思わずムムッとうなる。
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昼食のあとは、カテドラル近辺を散策。リュックを背負ったままだから、遠くに行く気はない。パラドールにチェックインできる3時まで、のんびりと時間を過ごす。
▼レトロな木箱カメラで記念写真を撮るおじさんを発見。さすがに歴史の街サンティアゴだ。
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▼教会前の一団はなんだろう。結婚式ではなさそうだけど、よくわからない。
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▼歩き疲れてオブラドイロ広場に戻り、石のベンチでひと休み。
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3時過ぎにパラドールにチェックイン。フロントから3階の部屋まで案内される。いつもはフロントで鍵を渡され、はいどうぞ、で終わりだが、5つ星パラドールはさすが、客の扱いが違う。
感心もするが、かしこまったおじさんに案内されるのはどうも気づまり。知っているスペイン語を反芻してみるが、何を言っていいやらわからず、沈黙のまま部屋に着いた。
部屋はすばらしい。15世紀に巡礼者のための王立病院兼宿泊所として建造された歴史を持つとおり、調度品の重みが違う。素人目にも、由緒正しきと言いたくなるような家具が配置されていた。
▼ホテルはベッドがいいのがいちばん。旅の疲れをとるのがベッドだから。
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▼戸棚を開けるとテレビが現れたが、昔は何を入れていたんだろう。
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▼クローゼットも年代物の木製扉。
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▼開けてびっくり。ハンガーは金色の刺繍を施したえんじ色のカバーで覆われていた。
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▼洗面所も立派。ここだけは21世紀風だな。
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荷物を解いて、シャワー・洗濯。いつものルーチンワークをすませる。
ひと息ついたら、これまた定番の市街散策だが、その前に、パラドール内の見学という、ここならではの楽しみがある。チェックインのときに渡されたパンフレットには、図解入りで79ものチェックポイントが列記されていた。全部、見てまわれるんだろうか。
▼部屋の前の廊下。この造りはさすがと言うほかないよなあ。
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▼2階へ降りる階段。案内図には3floor→1floorと書いてあり、2floorはないことになっていた。
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▼2階の客室前の廊下。
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▼2階から見下ろした回廊のある中庭。4か所の中庭がある。
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▼吹き抜けの2階から見た食堂。
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▼ここらで切りあげ、休んだら街に出てみよう。
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パラドールの外に出ると、日差しはだいぶ傾いていた。もう少しすると太陽も沈むな。夕食の店をさがしながら、ぶらついてみるとするか。
▼パラドール前のオブラドイロ広場は日差しが傾いて影が伸びてきていた。人出はまだ多い。
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▼広場の西側にある市庁舎に灯がともるころ、空に三日月が見えはじめる。
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▼巡礼者定食は骨付き肉のやわらか煮込み。ワイン付きだったので断酒やぶりの祝杯をあげる。
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晩ご飯も食べた。ワインも飲んだ。いい一日の終わりで満足。
サンティアゴにも着いたし、ミサで祝福された。まさに大願成就の一日。
今日は言うことなし! 大満足!
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