楽勝と思いきやバテバテ
【35日目◆12年10月13日(土)◆晴れ◆Fonfria➔Samos◆17.8km/累計654.2km】
6時に目が覚めたが、起きたのは7時30分。今日はのんびり行くつもりだ。身支度をして出発したのが8時20分と、いつもより遅い。
アルベルゲの外に出ると寒い。道路わきの草むらにはうっすらと霜がおりている。フォンフリアは標高が1300メートルなので、季節は初冬といってもいいのかもしれない。
今日はサモスまで18kmほど歩く予定だ。サモスが標高550メートルぐらいだから、高低差750mの下り。昨日が上りで今日は下り。苦あれば楽あり。今日は楽勝だな。
村を出て県道を歩く。朝早いので車はほとんど通らない。巡礼仲間が何人か、道路わきを歩いているだけだ。それにしても寒いな。手が凍える。100円ショップの薄い手袋じゃあ、役に立たないぜ。
▼早朝の県道を歩く。手が凍えるほど寒いが、もうすぐ日が昇り気温も上がってくるはずだ。
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やがて県道を離れ山道に入る。このあたりは眺望がすばらしい。遠くの山が雲海に沈み、まるで島のように見える。さしずめ瀬戸内海に浮かぶ島々といったところか。
▼雲海に浮かぶ山々が幻想的な風景を織りなしている。
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▼日が昇ってきた。山陰の牧草地は一面の霜で白っぽく見える。
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▼花も霜に打たれてぐったり。このあたりは秋も終わって冬を迎える時期のようだ。
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6日前にアストルガを過ぎたあたりから山道が多くなった。それにつれて牧畜を生業としている村も増え、道のあちこちに牛の糞が落ちている。このところずっとそうだから慣れてはきたが、やはりその臭いにはへきえきさせられる。
ま、村を通るときだけだから、我慢して早く慣れることだな。50年も昔の話だが、田舎育ちのわたしが子供のころは、日本もまったく同じ状況だった。ポタポタと糞を落としながら道を歩く馬の後を、糞をよけながら歩いていたものだ。当時の農村なら、どこでも同じだったはずだ。
フォンフリアを出発して2.3kmでビドゥエド村を通り、そこから先はフィロバル、アス・パサンテス、ラミルと小さな村を通過してトリアカステーラの町に着く。その間6.4Km。
▼ビドゥエド村のサン・ペドロ礼拝堂。かなり古びており、今は使われていないのかも。右下にオ・セブレイロ峠で見かけたのと同じような石碑があるが、これはやはりサンティアゴまでの距離を示すものだった。
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▼これはモホンと呼ばれる道標だった。ガリシア州に入ると、サンティエゴ・デ・コンポステーラまでの距離が、「K.136.5」のように示される。
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モホンについては、ガイドブックを読み返してわかった。旅に出る前に目を通したのにすっかり忘れていたのだ。
ガリシア州に入ったのが昨日のオ・セブレイロ峠だから、距離の刻まれたモホンはそこから始まったということだ。
モホンを見る気分は悪くない。刻々とゴールが近づいていることが実感でき、その気分は楽しいものだ。
なんてことを考えながら歩いていると、畑仕事をしていたおばさんが大声で「ノー」と言う。あぶないところだった。無意識に曲がってしまった道が、巡礼路ではなかったのだ。
少し戻り、曲がり角で確認したが、標識はない。でも、地元のおばさんが言うのだから間違いないはずだ。
しばらくして黄色い矢印にぶつかった。ありがとう、おばさん、助かりました。
最初はこれですんだが、2度目はそうはいかなかった。
たぶんラミル村だと思うが、村はずれから上りになり、急坂をえっちらおっちら上り、15分ほどでようやく平坦な畑地に出た。すると今度は農作業をしていた男性から「ノー!」。
さすがにガックリだよ。原因は矢印の見落とし。村の途中で細い脇道に入る矢印があったのだが、気がつかずに道なりに歩いてきてしまったのだ。
時間のロスは大したことはないが、こうしたミスがたび重なると心理的にまいる。アップダウンもけっこうある道で、出かけるときは楽勝だと思っていたが、そうは問屋がおろさなかった。やってみなきゃわからない、とはこのことだ。粛々と歩くのみ。
▼これは野イチゴと山ブドウ? ものは試し、食べてみるか、1ユーロだし。……期待したほど甘くなかった。
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▼トリアカステーラの入り口で見かけた大樹。何本かがねじれてより合わさったように見える。
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▼10時26分、トリアカステーラのバルを横目で見て通過。まだ、残りが9kmもある。
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トリアカステーラはこのあたりでは大きな町で、公営のアルベルゲもあるようだ。町のサンティアゴ教会も巡礼者のためのミサを催すなど、時間があればゆっくり休憩したいところだが、そんな余裕がなくなってしまった。パス。
トリアカステーラから先は、3つほど村を通り、目的地のサモスまで9.1km。これまでのようにアップダウンがあれば、3時間はかかりそうだ。これまた粛々と歩くのみ。
▼11時19分、県道を歩く。舗装道路の外側を歩くようになっているので、車は気にならない。
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▼ときおり県道と交わってそこを歩くが、巡礼路はこうした山道がほとんどだ。
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▼ホッとひと息つける場所。
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▼小さな村ばかりで人に出会うことはほとんどない。珍しくおじいさんが歩いていた。
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1時48分、サモスの標識を通過。予想どおり3時間と少しかかっている。楽勝のはずがけっこうバテたな。もう少し距離が長かったらどうなっていたころやら。
県道沿いのバルで休憩&昼食。店のおばさんに聞いてみると、目の前に見える建物の向こう側にアルベルゲがあると言う。よかった。これで今日の歩きは終了だ。
▼バルのテラスで昼食。通りの向うに見える重厚な建物はサモス修道院だった。
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▼サモス修道院の全景。緑に囲まれたすばらしい環境の修道院だ。
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▼サモス修道院のアルベルゲ入り口。受付は3時からなのでまだ閉まっていた。待っている人がひとり。
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▼清潔なベッドが並ぶアルベルゲ。ドーム状の天井が室内を広く見せ、壁の絵もステキ。
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修道院が運営するアルベルゲは宿泊費無料。わたしは献金箱に4ユーロ入れておいた。
夕食は道路をへだてた向かいにあるバル。無料のWi-Fiが使えたので、アルベルゲに戻ってから、ものは試しとやってみたが、電波が弱くてつながらなかった。もう少し距離が近ければ、ベッドに寝転びながらネットを使えたのに残念。
最初はがら空きだったベッドもかなり埋まっている。今日は子連れの夫婦が泊まっていた。数日前にアストルガの町で見かけた人たちかもしれないな。
子供の騒ぐ声もたまにはいいもんだ。それほど気にはならないし、寝るとするか。
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