ただワインの飲みすぎ
【37日目◆12年10月15日(月)◆曇り◆Vilacha➔Palas de Rei◆26.3km/累計712.7km】
そっと起きだし、荷物を抱えて廊下に出る。ほかの5人はまだ寝ているから、物音をたてないように。大きなアルベルゲだと少々の物音は当たり前だが、これだけ人数が少ないと、ちょっとした音でも耳ざわりなもの。起こしては悪いから、身支度は廊下で静かに行う。
1階に下りると、オスピタレロが起きだして見送ってくれた。いつものように外は真っ暗。7時30分出発。
▼ストロボの光に浮かぶ道路標識。これはわかりやすい。とにかく右へ行けば間違いなし。
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▼ミーニョ川にかかる橋から撮った夜明け前の川面。橋を渡るとポルトマリンの町に入る。
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橋を渡りきったところに町に続く階段があった。その近くには「89.5km」を示すモホンもある。なんだ、90Kmのモホンを撮りたかったのに。暗くて見過ごした。500m戻ろうかとも思ったが、往復1Kmのロス。あきらめた。
▼ポルトマリンの入り口にある、残り「89.5km」を示すモホン。90kmから撮っていきたかったのに残念。
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ポルトマリンからは県道を離れて山道に入っていく。小さな村を通り抜け、そろそろ休みたくなるころにバルが現れた。が、そこは満員の盛況。あきらめて次の村に行く。
▼ゴンサール村のバル。巡礼者で大にぎわいだった。
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バルに限らず、今日は道路も巡礼者の姿が多い。というのも、昨日わたしが通ってきたサリア近辺から、巡礼を始める人がたくさんいるからだ。
これも100kmルールのせいだろう。つまり、巡礼完遂証明書は、サンティアゴまでの最後100Kmを歩いた人にしか発行されない。サリアは114km地点だから、そのあたりで出発地のスタンプをもらい、サンティアゴめざして歩きはじめるのだ。
ゴンサール村のバルをあきらめ、次の村まで歩きつづける。30分で道路わきに小さなバルを発見。今日の巡礼路は2、3kmおきに村があるので、休むところの心配はいらない。
▼おばちゃんがひとりでやっている小さなバル。木漏れ日が実に気持ちいいひとときだった。
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▼朝食のボガディージョ。手首のところにポツンと水疱ができている。広がる気配があり、気がかりだ。
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遅い朝食だったが、腹ごしらえは終わった。そうそう、忘れないうちにスタンプをもらっておこう。サンティアゴまで100km圏内に入ったら、一日に2個以上のスタンプをもうらうこと。ガイドブックにそう書いてあった。
バルのおばちゃんも心得たもので、クレデンシャルを出すとポンと景気よく押してくれる。今日、1個目のスタンプゲット。あとは今晩の宿でもらえば、最低限の2個は確保できる。
休んでいる間に、数日前、一緒に歩いた男性が追い抜いていった。歩くペースが同じだと、
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残り80km |
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顔なじみができるものだ。わたしも出発しよう。11時26分になってしまった。
出発して20分ほど歩いたところで、残り80Kmのモホン通過。この調子だと、70kmのモホンも今日中に通過できそうだ。あと10km。まあ、歩けるだろう。
このあたりは、土の巡礼路と舗装道路が並行して走っている。脚にやさしいのは土だが、歩きやすいのは舗装。ということで舗装道路を歩く巡礼者もいる。
自転車組はもっぱら舗装道路だ。巡礼路は細いので、今日みたいに人が多いと、自転車は通りにくいし、あぶない。
ちなみに、自転車巡礼の場合は、サンティアゴまでの最後の200kmを完走する必要があるそうだ。徒歩の倍の距離ということだね。
そういえば、馬軍団と抜きつ抜かれつ歩いたが、馬の場合は徒歩と同じ100Km。馬巡礼のほうが楽そうな気もするが、人間は楽でも馬はキツイのだろう。
静かな田舎道が続く。緑に包まれた農村地帯。標高が600~700mあるから山里という感じだ。四国のお遍路道にもこんなところがあったよな。時々そう思うことがあるほど、巡礼路の雰囲気が似ている。
▼軽装で歩く一団。100km巡礼のようだ。軽そうな荷物がなんともうらやましい。
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▼こんな巡礼者も。日本の巡礼体験では出会ったことがない。さすがにスペイン。
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▼自然の雰囲気は日本と同じでも、時おり目に入る風物が異国だということを思いださせる。
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▼へんなオブジェがあった。蟻のように見えるが……。
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残り70km |
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順調に歩き、2時5分には70kmのモホン通過。普通なら目的地に到着している時間だが、今日は欲張って26.3Kmの行程だから、目的地のパラス・デ・レイにはもう少しかかりそうだ。
3時前、パラス・デ・レイの公営アルベルゲ事務所のそばを通る。プレハブのような小さい建物。
今日はガイドブックに出ていたオスタルに泊まるつもりだったので歩き過ぎようとしたが、スタンプだけをもらおうと立ち寄る。2個目のスタンプゲット。
あたりは自然公園のような広い敷地で、感じのいい木造平屋の建物があった。これがアルベルゲなら文句なしだが、レストランのようでもありよくわからない。泊まるつもりはないから、ま、いいか。
▼事務所から少し離れたところにある平屋の建物。看板にアルベルゲの文字はないからレストランかも。
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パラス・デ・レイは人口800人ほどの小さな村だというが、そのわりにはけっこう大きなビルもある。とくに巡礼路が国道を交わるあたりは、ちょっとした町のようだ。
▼巡礼路を歩いていくと目に入るマリア像。由来はわからない。
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▼サン・ティルソ教会も巡礼路沿いに建っている。
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泊まるつもりのオスタルはすぐに見つかった。だが、国道に面している。うるさいかもしれないな。ほかにオスタルやホテルの看板を掲げている建物もあり、村を見てまわった。どこも似たり寄ったり。それならガイドブック紹介の宿にしよう。決定。
▼生乾きだった昨日の洗濯物もあり、部屋にロープを巡らした窮余の一策。
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オスタルに泊まるのは久しぶりの感じがする。今日の部屋はシングルで狭い。ガイドブックには24ユーロとあったが10ユーロ高い34ユーロ。ツインでもおかしくない値段だ。
それに、部屋に入った時点で、シャワー室からの水が外まで漏れ出ていた。大した量ではなく、文句を言うのも面倒なのでガマン。こんなトラブルは初めてだ。
夕食も兼ね、外に出る。だが、寒いので、散歩もリラックスできない。早々に切り上げ、夕食にする。レストランは雰囲気がよかった。偶然にも3日前にフォンフリア村の同じアルベルゲに泊まった陽気なおばさんがいた。
絵葉書を書きながら前菜。注文もしないのにワインが1本どんときた。巡礼者定食に含まれているようだ。これは飲むしかないだろう。
1本といっても半分ほど空いている。ワインはテーブルに1本とかなのだろう。わたしはひとりだからね。それでも、グラスになみなみついで3杯はあった。これほど飲むのは4年ぶりか。いかん、効いてきた。やっぱり飲むべきじゃなかったな。意地汚いやつだ。
赤い顔をして帰ったらフロントの兄ちゃんが笑っていた。部屋に戻ってすぐに寝る。テレビもないからね。
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