ゴールまであと100kmを切った
【36日目◆12年10月14日(日)◆雨のち曇り時々晴れ◆Samos➔Vilacha◆32.2km/累計686.4km】
7時7分出発。
夜の間に雨が降ったようで、路面が濡れている。風が少しある。だが、昨日よりはるかにあたたかい。手が凍えないもの。
雰囲気のいいアルベルゲだったな。
今日もがんばって歩こう。
雨だけが心配だ。念のためポンチョはリュックにかぶせてある。
道は昨日の続き。県道の脇を歩く。2車線の舗装道路は歩いていてもつまらない。1時間半歩いて、バス停のような休憩所で最初の休み。パンとトマト1個で朝食をすます。
▼道路脇の休憩所。バス停なのかもしれないが、風が強かったので壁があるのはありがたかった。
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風が強くなり、雨も少しまじってきた。ポンチョを着こみ、8時41分出発。雨は覚悟のうえだ。
休んでいる間に追いこしていった2人連れの後をついて歩く。県道を行くぶんには道に迷うこともないだろうが。
途中、車をつかまえて何やら聞いていた2人が、標識を無視して県道をそのまま直進する。どうしようか一瞬迷ったが、2人についていくことにした。たぶんどちらでもいいのだろう。
読みはあたり、10時前にサリア着。
サリアは人口1万3000人というから、巡礼路では大きな町といえる。当初のスケジュールでは、ここで一泊する予定だった。が、今は出たとこ勝負。サンティアゴの到着日だけ決めてあるので、あとは帳尻が合えばいい。
で、サリアは通過。雨も少しずつ強くなってきたし、のんびり町を見て歩く気分じゃない。
▼サリア川を渡ると旧市街に入る。ガイドブックにはそう書いてあったが、人通りもなくなんだか寂しい。
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▼ん、この壁画はなんだ? 旧市街に入ってすぐに目についたもの。子連れの巡礼者かな。
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▼雨のせいか静まりかえった旧市街。店名が「km.111」というバルがあった。あと111km?
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▼雨にけむるサリアの町。レインズボンをはかずに歩いてきたが、そろそろ限界だな。
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▼111キロのモホン。
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サリアの町を見下ろす高台からほんの少し下ると、サンティアゴまで111Kmを示すモホンがあった。
100km地点まであと11km。雨も降ってるし、3時間は必要だろう。
今は10時25分だが、さてどうする?
今日中に行けそうな気もする。だが、問題は近くに宿があるかどうかだ。雨の中、宿を求めて次の村、また次と歩くのはイヤだぜ。
ま、考えてもしかたがない。出たとこ勝負でいいじゃないか。なんとかなるよ。
それより、どこかで雨宿りして、レインズボンをはこう。雨足が強くなってきた。
幸い10分ほど歩くとメルセド修道院の立派な建物が目に入った。運のいいことに一般公開しているようだ。巡礼仲間も何人かそちらに向かっている。
入り口でリュックをおろし、中に入ってみると、修道士らしき人がクレデンシャルにスタンプを押している。もちろんわたしも押してもらった。
▼雨に濡れる修道院の中庭。
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▼20分ほど雨宿りして修道院の外に出てみると、雨はほとんどあがっていた。ラッキー!
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さっきがいちばん激しい降りだったんだな。このままあがってくれれば嬉しいが。おっと、もう11時を過ぎている。雨もやんだし、少しピッチを上げるか。
サリアの町を抜け、線路を渡り高架をくぐると、道は田舎の素朴な風景の中へと続く。注意して歩いているせいか、モホンがやけに目につく。
▼線路を渡る。すぐそばを通る高架は高速道路のようだ。
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▼分かれ道に置かれた石の標識が3本。左端のものが109.5kmを示すモホンだった。
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▼またあった。ビレイ村には108kmのモホン。
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▼そして101kmのモホンがあり、いよいよ100キロのモホンも見つけた。が、なんだかおかしい。 |
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これはだれかのイタズラか? それにしてもたちが悪すぎる。ホタテ貝のマークと数字の刻印を削り取り、マジックで100と書いておくなんて!
このときばかりは、わたしもさすがにキレた。怒り心頭に発し、怒髪天を突き、ワナワナと体が震え……そのあとはどっと疲れが襲ってきた。
今日は100km突破が目標だったのに、これじゃあひどすぎないか。
意気消沈し、急に重くなった足を、それでも先に進めるしかない。モホンがどうであれ、100km通過は達成したのだ。よかったじゃないか。
そうやって自分を慰めてみる。だが、気分は落ちこむ一方で、気力は完全に失せているのがわかる。ただ、今日まで700kmを歩きぬいた成果か、足は無意識に歩を刻む。
そうやって歩いていると、道路の右側に建つ次のモホンが目に入った。ガリシア州では500mおきにモホンが残り距離を知らせてくれるというから、次は99.5kmか。
▼100kmのモホンの次に現れたモホン。99.5kmを刻んでいると思ったら……。
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▼ついに残りが100kmになった。12年10月14日2時14分到達!
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なんとそのモホンには、しっかり「K.100」の数字が刻まれているではないか。
えーっ、さっきあったのはニセモノ?
どうやらそうらしい。手の込んだイタズラをしやがって。
怒りの気持ちはまだ収まらないが、それはそれとして、だれか来ないかな。ここは記念写真を撮ってもらう重要場面だ。
そんなわけでパチリと一枚。やってきた巡礼仲間とお互いに写真を撮りあい、さて、あとは今日の宿をさがすだけだ。
気持ちを新たにと言いたいところだが、ダメージは大きい。いちばん近い宿、と思って歩きはじめた。
にもかかわらず、村を2つ過ぎても泊まるところがない。
結局、2時間歩き、ようやくビラチャ村で私営のアルベルゲが見つかった。チェックインしたのは4時を少し回ったころ。長い一日だったなあ。歩いた距離は32.2km。おつかれさん。
▼アルベルゲの看板を見つけたときには本当に嬉しかった。一泊8ユーロ+夕食10ユーロ。
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ベッド定員8人の小さなアルベルゲ。今日は宿泊客6人。設備もよく、シャワーなんかジェット噴射で上下左右からお湯が噴出。びっくりした。
難点は、村にただよう牧牛の臭い。入り口を入ってすぐのロビー&食堂なんか、臭いが容赦なく押し寄せる。カーペット敷きの小奇麗な食堂なのに、なんとかならないの? こればかりはなんともならないだろう。
なんとかならないものがもうひとつ。シャワーのときに気づいたのだが、先日からの湿疹が顔の左上側、それと背中の汗をかく部分に広がっていた。左指の湿疹は関節に集中し、かゆみが少し出てきた。痛みはない。
背中に出てきたので、漆の木などのかぶれではないことがはっきりした。なんだか気持ちが悪い。だが、原因がわからないだけに、なんともしようがない。様子を見るしかないな。
夕食はカレーだったので、臭いはいくらかましだった。気にしない、気にしない。
夕食のテーブルを囲んだ6人の宿泊客のうち、2人は韓国女性。顔だけ見ていると、つい日本語で話しかけたくなる。が、2人とも流暢な英語を話す。年配のほうのおばさんは、ご主人がアメリカ人で、連れだってのサンティアゴ巡礼だ。シカゴで飲食店をやっているとか。
おばさんは、お遍路にも興味があるらしく、しきりに聞いてくる。いちばんの違いは費用で、宿代が一泊2食で60~70ユーロ、40日ほどかかるから、と計算してみせると、ご主人になにやら言うものの、いい返事がないようだ。そうだよなあ。日本の巡礼はお金がかかりすぎ。スペインを歩いているとつくづくそう思う。
夕食後は寝る前に日記書き。湿疹という心配事が今日の問題か。
だが、先のことを心配してもしかたがない。今日は100km通過でよしとしよう。指をポリポリかきながら、日記を書き終える。
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