写真を撮られる
【19日目◆12年9月27日(木)◆晴れ◆Hornillos del Camino➔Castrojeriz◆20.3km/累計328.3km】
朝の出発はあわただしい。準備に手間どって、ようやく7時27分出発。今朝も寒い。1時間歩いたころに日が昇る。
このあたりは起伏がほとんどない。見渡す限り平坦な麦畑。春ならば青いじゅうたんなのだろうが、今は枯れ野砂漠だ。遠くに風車が20本ほど建っている。今日は風がないので、とまっているものもある。
▼道路わきに積み上げられた石。まったく変化のない道を歩いていると、こんなものでも珍しくなる。
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出発から2時間、行けども行けどもオンタナスの村が見えてこない。とっくに見えてもいい時間だが、と思っていたら、道が下り坂になり、すり鉢状の底に集落がある。道理で遠くからは見えないわけだ。
▼オンタナスは住民が60人ほどの小さな村。すり鉢状の土地の底にあった。
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▼オンタナスのバルで小休止。朝は寒かったが気温も上がり、今日はいい天気が続きそうだ。
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休憩も終わり、さて行こう、と歩きだしたら、横丁から出てきた車が急にとまり、若い女性がおりてきた。そしてわたしに話しかけてくる。
きれいな人だなあ。彼女は早口の英語で何やら言っているが、ほとんどわからない。ボーッと見とれていると、カミーノなんたらと言うのが耳に入った。
なんだ、巡礼者の取材なのか。どうやらブルゴスの地方新聞らしい。
英語もスペイン語もダメ、ジャパニーズオンリーと言うと、残念そうに、しかたないわね、という感じで、それじゃ、バーイ。
彼女と別れてしばらく歩いていたら、後ろから声をかけられた。さっきの車を運転していた若い男性だ。ハアハア息を切らしながら話す。車を止める場所をさがしてから、走って追いかけてきたようだ。で、写真を撮らせてほしい、だと。
話さなくていいのならOK。彼が演出するままに歩いたり、振り返って手を上げたり、何枚か撮られた。彼がカメラマンで彼女がレポーター。そんな役割らしい。日本人の巡礼者は珍しいから、写真だけでもニュースになるんだね。
彼女はダメだと思ったようだが、彼はいけると踏んで追いかけてきた。うん、彼のほうがジャーナリストとしては見る目がある(?)。
残念なのは、彼はキャノンの一眼レフを使っていたこと。わたしはニコンだ。
オンタナスの村を出はずれると、小鳥のさえずりが聞こえるのみ。前後左右だれもいない丘の道を行く。爽快なり。
▼細い巡礼路がどこまでも続く。休んだばかりなので歩きも快調。気持ちがいい。
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▼突如、現れた並木道。これほど立派な並木は初めてだ。
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並木道を過ぎ、15分ほど歩いたところでサン・アントンの修道院跡。ここからだと、今日の目的地カストロヘリスには1時間ぐらいで着けるはずだ。今は11時21分だから、余裕で到着できそう。軽いもんだ。
▼サン・アントンの修道院跡。残された外壁から想像するにかなり大きな建物だったようだ。
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▼この修道院には病院もあったようだ。これはその跡らしい。修復された小部屋に2段ベッドが数台置いてあった。緊急時の避難用として使われている。
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1時間もかからず、12時少し前にはカストロヘリスの村の入り口に到着。時間も早いので、道のそばにあった教会を見学。1ユーロだった。
▼カストロヘリスの村は、城跡のある小高い山の下側半分を巻く形で延びている。
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村に入り、ゆっくり歩きながら泊まるところをさがす。安いオスタルはないかなあ。
アルベルゲを通り過ぎ、町の中心のマヨールプラザを過ぎ、そろそろ町外れだぜ、と思ったら、壁に「casa rural」と書かれたプレートと黒板のある建物が目についた。
「casa rural=カサ・ルラール」は、日本の民宿みたいなものだ。黒板に書かれた値段を見ると、「シングル25ユーロ、ダブル32ユーロ、トリプル45ユーロ」とある。
ここしかないな。そう思ってドアをノック。出てきたおばさんが、どうぞ、どうぞと迎えてくれ、すんなり泊まることができた。
▼外観は普通の家。日本の民宿と同じ感覚で泊まれるのが「casa rural」だ。
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通された部屋は3階。天井がなく屋根裏の部屋で、なかなかいい雰囲気だ。内装は現代的だが、でも、どこかしら古さを感じさせ、それがまたいい。シャワー、トイレは共同。あとで気づいたが、1階に共用のキッチンやリビングがあった。
▼自宅をリフォームして民宿を始めた、という感じ。木張りの床は昔のままののようで年代物だった。
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▼買ってきたボカディージョとトマトを窓辺に置き、通りを見下ろしながら昼食。
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部屋でのんびりくつろいだあと、村の散策。宿泊施設はこの「casa rural」が最後で、通り過ぎると村が終わり、丘に向かう巡礼道があるだけだった。ぎりぎりのところでいい宿に出合ったもんだ。
▼明日の道を偵察。ここが村外れで、巡礼路は丘を上って続いていた。
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今日は風がなくいい日よりだ。散策している今もほんわか暖かく、これが小春日和というやつだな。
城跡のある丘の南側に、段々畑的に形成された村の道を歩く。スペインの典型的な田舎という印象。巡礼路を歩くのとは違い、自由気ままというのがこたえられない。
▼少し雲が出てきた。なんの変哲もないおだやかな風景がいい。
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▼路傍の草花。
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ぶらぶら歩きの最後にスーパーを発見。バルはすぐに見つかるが、スーパーは簡単には見つからない。ポストも見つからず、書いてある絵葉書は持ち歩くことになる。
ちょっと気になったのは左の脇腹痛。リュックのない今のよう身軽な歩きでも痛みを感じる。どこか、筋でも傷めたか。まさか盲腸ではないだろうな。
太陽が丘に隠れ、残照が広がっている。日没。時計を見ると7時57分。これから夕闇がおおっていくのだろう。暗くなるのは9時に近いころかな。
今日はいい午後を過ごした。が、夕刻のこの時間になると、少し寂しい。
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