▲ブルゴスのカテドラル。スペイン3大カテドラルのひとつとされる。さすがに美しく天に伸びている。
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ブルゴスのカテドラル
【16日目12年9月24日(月)曇りのち晴れAgesBurgos23.9km/累計288km】

 昨日はさんざんな目にあったが、どうにか出発までこぎつけた。朝食は食べられたし、念のために、持ってきた胃腸薬も飲んだ。
 7時ジャストにアルベルゲを出る。外は風が冷たい。長袖にしたのは正解だ。

 なんとか歩けそうだ。幸いなことに今日一日23km歩けば、巡礼路の大都会・ブルゴスで2回目の休養日になる。明日はオ・ヤ・ス・ミ。そう思うだけで弱った体もいくらか元気になる。

 2・5kmでアタプエルカ。丘を上り、だんだん開けてくるカスティージャ地方の平野を見下ろしつつ台地を歩いていくと、大きな十字架にぶつかる。

▼木製の大きな十字架。吹きつける風が冷たくて寒い。みんなそそくさと通り過ぎる。

 そこから2、3分歩くと、昨日見たものよりさらに大きなストーンサークルがあった。いやはや、ヒマなやつもいるもんだと思いつつ、わたしも一個おいていこうか。

▼この場所を誰も訪れなくなり、数百年がたって再発見されると、謎のストーンサークルと騒がれるかも。

 このあたりは台地のてっぺんだけに、北からの風が冷たい。おまけに曇り空で太陽も顔を出さない。ズボンの裾をはずしたまま出てきたのは失敗だったな。
 歩くべい、歩くべい。体もあったまる。

▼セルフタイマーで一枚。100円ショップで買ってきた手袋が初めて役立った。先はまだ長い

 十字架を過ぎるとやがて道は下りになる。ロバに荷物をのっけ、向こうから歩いてくる巡礼者とすれ違う。巡礼が終わり、帰りの旅だろうか。

▼2人と1匹は黙々と歩き去った。「オーラ」の挨拶も元気がなかった。ひょっとしたら巡礼を途中であきらめて、引き返しているのか? ……妄想はやめよう。今日はマイナス思考になりそうだ。

 いつもいつも晴れ晴れと歩けるわけではない。疲れもたまっている。あまり考えず、淡々と一歩、一歩だ。歩いていればいつかは目的地に到達する。それがカミーノのいいところだ。

 9時を過ぎたころ、天気がよくなり晴れてきた。
 10時すぎ、飛行場の脇を歩く。中型の旅客機が降りてきた。単調なアスファルト道路が続く。やや疲れる。
 11時にはブルゴスの郊外に着いたようだ。ブリジストンの大きな看板発見。どうやらスペイン工場らしい。あざやかな緑の芝生の敷地が延々と続く。かなり大きい工場だ。

 ブルゴスに入ったら人が変わった。通りすがりに3人挨拶して3人とも無視。何の関心も示さない。都会だからか、それともたまたまか。疲れてもいるし、わたしも無関心で歩こう。なまじ挨拶して無視されると、ムッとして心が乱される。未熟な人間だなあ。

▼11時33分、ブルゴスの市街に到着。確かに大きな街のようだ。

 ブルゴスの標識を見かけてから市街を歩くこと1時間5分、ようやく公営のアルベルゲに着いた。ブルゴスでは2泊するので、アルベルゲに泊まるつもりはない。前にも書いたとおり、アルベルゲは1泊しかできない(病気の場合は別)。

 ここに来たのは、近くにホテルを見つけるのが目的だ。アルベルゲの近くに泊まっていれば、仲間がたくさんいるので、何かと都合がいいのだ。

▼アルベルゲの前で順番待ちをする巡礼者。ここは巡礼路随一の規模だとガイドブックに書いてあった。

 さて、今日最後の仕事、ホテルさがしだ。これにはいつも苦労する。安くて、きれいで、居心地がよく、食事や買い物に便利。そして親切――こんなホテルは……ない。何かが欠ける。今日は値段だな。少々高くても可。休養日ぐらいぜいたくしてもいいだろう。

 アルベルゲ前の坂道を2、3分上っていくと、左手に世界遺産のブルゴス大聖堂が目に飛びこむ。スペイン3大カテドラルのひとつに数えられるだけに、さすがに大きい。そびえ立つ尖塔が印象的なカテドラルだ。

▼アルベルゲから歩いていくとすぐに見えるブルゴス大聖堂。

 坂道から大聖堂前のプラザに行く階段を降りていたら、右手にホテルの看板が目についた。大聖堂の真ん前にある建物だ。

 少々高くても可だが、場所が場所だけになあ。階段の途中でしばし思案。よく見ると、「H」の下に「★★★」が描かれた青いマークがある。パンプローナが5つ星だった。3つ星ならあそこより安いだろう。

▼ブルゴス大聖堂の真ん前にあるホテル。休養日を過ごす場所としては最高だ。

 フロントで値段の交渉、といきたいところだが、そんなことはとても無理。相手がメモに書いた数字「75€」を見て、「OK」と言うのみだ。というより、一泊75€=7500円なら文句なし。
 「ウイフィ?」(スペインでは、Wi-Fi=ワイファイよりウイフィのほうが通じる)と聞くと、フロントの女性はにっこり笑ってメモをくれた。パスワードが書いてある。

 ちなみに、無料のWi-Fiサービスは、日本より圧倒的に多い感じがする。だから、ネットもメールも不自由を感じたことはない。携帯を持っていかないと決めたので、出かける前は通信手段が不安だったが、杞憂だった。

 荷物を解いてシャワーを浴びたら、さすがに疲れが出てきた。洗濯はあとまわし。なんなら明
▼ベッドでひとやすみ。窓からはカテドラルの塔が見える。
日でもいいや。休みだし。今日はシエスタと決めこもう。

 5時過ぎに起きだして市内散策。雲がとれ、いい天気になっている。が、気温は低い。

 街を歩いていると、半袖の人は観光客、長袖は地元の人、と見分けがつく。

 今日は急に冷えこんだという感じで、地元の人は引っぱり出した長袖を着ているが、9月のスペイン観光に長袖はいらない、と持ってこなかった観光客はやむなく半袖。

 夏の名残りと秋のせめぎあい、といった時期なんだろうな。そして今日は、秋が勝った。空の青さも夏のものではない。空気も澄んでいる。

 わたしがいちばん好きなスペインの風も、冷たさのほうがまさって、ゆったり包みこまれる感じではなくなっている。

 ガイドブックでは、ブルゴスの標高は860mとあるから、秋が来るのも早いのだろう。ビーチサンダルをペタペタいわせて歩いていると、季節外れの感はいなめない。足元もスースーするし、普段ばきの軽い靴でも買うとするか。

▼ブルゴス大聖堂.。1221年に着工され、現在の形に完成したのは15世紀だという。

▼カテドラルのシンボルともなっている尖塔は15世紀につけ加えられたという。

▼カテドラル前のプラザ。

▼サンタ・マリア門。カテドラルを見てからこの門をくぐり、橋を渡ると、新市街になる。

 橋を渡って新市街にも足をのばした。大きな街だけにオフィスやマンションばかり。裏通りにでも入らないと、商店街はなさそうだ。散策の最後の最後に、果物を置いている小さな店を見つけた。無愛想なおやじだった。

▼ブルゴスの新市街。どこかに商店街もあるのだろうが、街が大きすぎてさがしきれない。

 今日の散策はなんだか疲れた。まだ8時すぎだが、疲れたので寝る。外は薄明るい。


ブルゴスの休日
【17日目12年9月25日(火)曇りのち雨・寒い休養日】

 夜中(2時20分ごろ)に目が覚めた。トイレに行く。その後、眠れずに、小さな菓子パンを1個食べる。それでも眠気は訪れず、ウォークマンで音楽。次に気づいたら7時半近かった。
 朝食は、乾パン状態に干からびたパンひと切れとトマト1個。食後に胃腸薬を飲む。

 今日は楽しみにしていた休日。なのに窓の外は、今にも雨が降りそうな曇り空だ。それに寒い。前回の休日のパンプローナとは大違い。たった10日しかたっていないのに、季節が夏から冬に変わってしまった感がする。

▼陰鬱な曇り空が広がる窓の外。古びた建物がお似合いの天気だ。

 午前中は日記をつけたり荷物を整理したり。ひと段落して午後から市内散策へ。ところが、なんということ、散策の大きな目的だったカスティージョが13時30分までだった。着いたのが31分で、ちょうど係員が門を閉めるところ。
 シエスタだよ! いいかげんスペイン方式に慣れないと。午前中散策、午後雑用だね。

▼ライトアップされたカテドラルを見ながら寝よう。
 しかたなく市内をぶらついていると、とうとう雨が降りだした。まったくついてない。散策をあきらめ、ホテルに戻る。

 今日も、なんだか疲れた。せっかくの休養日なのに、気持ちが晴れないと疲れもとれないようだ。

 窓の外の大聖堂が見えるように、窓を半分開く。ライトアップされたカテドラルが闇に浮かんでいる。この眺めで少しは気持ちが休まるな。

 外は雨が降っている。この分だと、明日の雨は覚悟しなくちゃダメかな。

 ベッドに横になってカテドラルを見ていると、ウトウトしてしまう。少し早いけど、今日はこのまま寝てしまおう。



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       ◆聖地巡礼:カミーノ・デ・サンティアゴ