急に冬がやってきた
【18日目◆12年9月26日(水)◆曇り、風が冷たく寒い◆Burgos➔Hornillos del Camino◆20km/累計308km】
6時起床。いつもより遅めだが、今朝は雨だろうから、少し明るくなってから出発しようと思ったからだ。しかし、起きてみたら雨はあがっていた。ポンチョは着なくてすみそうだ。
寒い。一気に冬になった感じだ。
▼ホテルの部屋で食べる朝食はいつもこんなもの。今日のように寒いと温かいスープなんかがほしくなる。
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7時24分、寒くてうす暗いブルゴスをあとにして、休み明けの道を歩きはじめた。1時間歩くと完全な農村地帯。といっても人家は見当たらず、茶色い畑地が広がるのみだ。
その畑の中の農道を軽トラックがゆっくり近づいてきた。道行く巡礼者に何か渡している。わたしも受け取ったが、バルの宣伝ビラだった。これほど商売熱心なスペイン人には初めて出会った。
9時前に鉄道の下をくぐる。あたりは麦畑。刈り取り後の茎だけが残っている。遠くに見える丘は、野焼きで黒々した面を見せている。荒涼という言葉がぴったりの風景だ。
▼曇り空のせいもあり、刈り取り後の麦畑は寒々しい。晴れてくれればいいのだが。
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10時5分、休憩。ベンチに座っていると、女性が歩いてきた。彼女もわたしを見て休むようで、ベンチ脇にリュックをおろす。席をゆずり、わたしはストレッチで体をほぐしてから出発。彼女も同じタイミングで歩きはじめ、自然に並んで歩く。
日本人? イエス。ユー? ブラジリアン ……。
片言の英語でポツポツ話しながら、歩く。ブラジルはポルトガル語だから、スペイン語は少しわかっても、英語はあまりできないと彼女は言う。
▼ブラジルからやってきた彼女はジョディと名乗った。
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ここからの2時間は人家も水飲み場もなく、広大な麦畑の中を行く道だ。メセタ(台地)を歩く単調な道だとガイドブックに書いてある。
こんな道は、連れがいたほうが気がまぎれる。ただ、沈黙の時間が続くと、ツライいかな。でも、話せないものはしかたがない。こればかりは急にどうこうなるものじゃなし。
それで電子辞書を買って持ってきた。だが、こんな場合にはまったく役に立たない。歩きながら話をしているとき、辞書を引くなんて論外。
そりゃあ、たとえば命にかかわるような話なら別だけど、普通の日常会話で辞書を引きつつなんて、机上の空論の典型。これまた体験してみて初めてわかることだけど、ね。
で、わたしの場合、自分がわかる範囲の単語を並べて言い、相手の話は、理解できる単語をもとに想像力を働かせて解釈する。だから、わたしの会話のポイントは想像力だな。問題なのは、想像が正しいか否か、そこにある。
ま、間違ってたらゴメンナサイだ。それしかない。
そんなあいまい会話でわかったのは、ジョデイの娘さんが日本に留学しているということ。それもあって日本人らしきわたしに話しかけてきたようだ。
それじゃあ、日本に帰ったら、一度、娘さんの様子を見てあげようか、なんて言おうと思ったものの、まてまて、8割がたは想像で会話しているのだから、逆におせっかいになりかねない、と思いなおす。
この旅は一期一会が旗じるし。
▼スペインの中央部を占めるのがメセタで、乾燥した広大な台地。植生は貧弱だという。前を行くジョディが道路を外れて畑を歩いているのは、固い道より柔らかい畑のほうが脚への負担が少ないため。
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思いだしたように会話を交わし、そのうち彼女が何か言いだした。理解できる単語をつなぎ合わせると、わたしに合わせて歩かなくもいいの、自由に歩いてちょうだい、と言っているようだ。
たしかにペースは遅めだったので、それからは自分のペース。が、ジョディもしっかりついてくる。それほど離れることはなかった。
12時6分、目的地のオルニージョス・デル・カミーノ着。村の入り口から10分ほど歩くとアルベルゲがあった。
アルベルゲは教会の併設のようだ。一部屋に6台の2段ベッド。入り口にいちばん近い1Aが割り当てられたベッドで上段だった。ジョディも同じアルベルゲに泊まった。
▼オルニージョス・デル・カミーノの標識が立っている村の入り口。小さな村のようだ。
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▼正面の建物が教会。併設のアルベルゲは教会の階段を上って右に曲がったところにあった。6ユーロ。
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一段落したあと、村をぶらついてみた。寒い。長袖の上にウインドブレーカーだけではもたない。もう一枚、フリースを着てもいいぐらい。とても散策という気分ではない。
▼寒いとぶらぶら歩きは楽しくない。家並もなんだかくすんで見える。
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早々に切りあげ、アルベルゲ前のバルでカフェ・コン・レチェを飲む。メニュー写真にサラダの盛り合わせがあった。夕食には忘れずにそれを頼もう。このバルは珍しくレストランもやっている。
▼寒いときは店内に限る。テラス好きのわたしもさすがに今日は風に吹かれたいとは思わない。
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帰りに教会に入ってみたが、やっぱり気持ちが落ちつく。時間があれば夕食のときにでもま
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▼小さな村だが教会は立派だった。毎度のことながら気持ちが安らぐ。
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た来てみるか。
アルベルゲに戻って明日の準備。
頃合いを見計らってバルのレストランに行ったら、すでに満席だった。
村を散策したとき、ほかにはレストランを見かけなかったし、たぶんここが村で唯一のレストランなのだろう。みんながやってくるのですぐに満員になるようだ。
待っていても、ひとりでテーブル席を独占するのは無理だから、カウンター料理から選んだ。
ありきたりの料理で合計9ユーロ。ところが、ディナの値段は8・9ユーロ。なんだよ。そっちのほうを食べたかったな。
夕食を食べて、すぐにベッドにもぐりこんだ。7時10分だ。寒いと意気が上がらない。こんなときは寝るに限る。
今日までに歩いた距離は累計308キロ。残り500kmか。先は長いなあ~。
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