▲サンティアゴ駅のホーム。22:33の表示が出て、そろそろトレンオテルが入ってくるころだ。

サンティアゴを去る
【45日目12年10月23日(火)晴れSantiago de Compostela➔Madrid

 今日はマドリードへの移動日。大枚をはたいて、寝台列車トレンオテルを予約した。列車は、サンティアゴ駅発が夜の10時33分だ。予約したときはそれほど気にしなかったが、夜の10時までどう過ごすのか、という問題が、実は大変だということがわかった。

 前日はホテルに泊まるが、当日の午前中にはチェックアウトしなければならない。そうなると大きなリュックを背負い、夜の10時までどこで何をする?
 これが日本ならいくらでも時間のつぶしようはある。だが、見知らぬ旅の地でとなると、なかなか面倒だ。しかも大きなリュックがね、じゃまなんだ。身軽に動けない。

 ああだ、こうだ、と検討したが、考えるのもイヤになり、ホテルに泊まっちゃえ、という結論になった。で、今日も同じホテル泊まり。ただし、チェックアウトは夜の10時。サンティアゴ駅までは10分もあれば行けるので、それで問題はない。
 泊まらないのに一泊分を払うのはもったいないが、夜の10時まで部屋を使う料金だと思えば、まあいいんじゃないの。

 そんなわけで朝もゆっくり起き、10時過ぎにホテルを出て市街散策。今日でサンティアゴともお別れだから、アラメダ公園から旧市街をぶらつき、大聖堂まで行ってみるか。

 天気もいい。珍しくポカポカ陽気で暑いくらいだ。
 昨日とは逆まわりにアラメダ公園を歩く。雨上がりの公園は、日差しをさえぎる木々がひんやりと湿り気を帯び、すがすがしい気分にさせる。

▼横断歩道の向こうは、公園に隣接するサンティアゴ・デ・コンポステーラ大学の広大なキャンパス。赤屋根の建物は学生寮とか。このあたりのバルに若者が多いのは大学があるからなんだ。

▼並木道ではジョギングの一団が駆け抜けていった。

▼秋晴れの空を背景にそびえる大聖堂の尖塔。ここからの眺めはやはり最高だ。

▼空にひと筋の飛行機雲。行き先はどこなんだろう。
 アラメダ公園をゆっくり歩いて一周すると約1時間。マネキンおばさんに挨拶して公園を出る。

 旧市街に入り、大聖堂方面へ、裏通りから裏通りへと伝い歩く。

 表通りは一度通れば十分だ。観光用の飾りを施してあるから、一度は物珍しさにつられて歩くのはいいけれど、二度、三度となるとうるさいだけ。つい人通りの少ない裏通りに入ってしまう。

 人の気配がしない石畳の小路を歩いていると、しみじみと時間の重みを感じる。石は時間の積み重ねに耐えていけるからね。

 ときおり顔をのぞかせる尖塔を目印に、裏通りを伝い歩いてオブラドイロ広場へ出る。

▼大聖堂近くの裏通り。いい感じなあ、と思ってしまうのは、わたしが旅人だからなのかも。

 大聖堂に着いたのはお昼少し前。中に入ってみるとミサを待つ人で席が埋まっていた。ただ、わたしが到着した日より人の数は少ないように感じる。そろそろ10月も下旬だから、巡礼シーズンも終わりが近くなったということだろう。

▼主祭壇へ続く身廊部分。いつものことだが、この広がりには圧倒される。

▼ミサの開始を待つ人々。

▼昨日は工事中で素通りしてしまった栄光の門の中央の柱(左)。本来なら、今は閉まっている向う側の扉から大聖堂に入ってきた巡礼者は、この柱に手をつき、聖ヤコブに感謝を捧げるのがしきたりだという。柱の上部には聖ヤコブの座像があるが、ここからは見えない。柱下部にはこちら向きの像が見える。栄光の門の作者、巨匠マテオで、祭壇に向かってひざまずいている。
 

 大聖堂の重要部分のひとつが工事中で、立ち入り禁止の紐が張られているのは残念だった。またの機会に、と言って立ち去りたいところだが、はたして「また」があるのかどうか……。
 いやいや、残り少ないとはいえ、人生、何が起こるかわからない。
 いずれまた。グラシアス!

 ホテルへの帰り、アラメダ公園に寄って午後の光に包まれた大聖堂を堪能し、夕刻、これがほんとの最後と、今日3度目のアラメダ公園。もちろん行くのはお気に入りNO.1の場所、大木そばのベンチだ。

 空がだんだん暗くなり、家の明かりが目立つようになってきた。
 少し雲が出てきたようだ。だけど、もう天気の心配はしなくていい。歩きの旅は終わってしまったからね。

▼これで見納め。いずれまた。グラシアス!

 すっかり日の落ちた街を歩き、ホテル近くのバルでクロワッサンとカフェオレ。本来なら夕食の時間だが、トレンオテルは食事付きだから、今は軽くお茶でしのぐ。
 追加で、カフェソロを初めて飲んだ。ミルクなしのコーヒーだ。カフェオレよりひとまわり小さいカップだった。あまりうまくない。2ユーロ。

 通りをはさんで向かいにもバルがある。老人がひとり新聞を読んでいた。今は8時50分だけど、こんな時間にふらっとバルに来て、一杯やりながら新聞を読むなんぞ、なかなか渋いスタイルじゃないか。

▼家の近くにこういう場所があれば、わたしもこんなふうに時間を過ごしてみたいものだ。

 と思っていたら、そのうちに娘さんらしき女性がやってきた。なんだ、待ち合わせをしていただけか。2人は席を立つでもなく、なにやら話しこんでいる。フム、相談事だな。家に訪ねていくより、こういうところのほうが話しやすいのかも。

 さてと、妄想はこれぐらいにして、そろそろ時間だな。
 ホテルに戻り、チェックアウト。9時40分にホテルを出る。サンティアゴ駅には9時51分に着いた。少し早目だけど、余裕があるに越したことはない。

▼夜のサンティアゴ・デ・コンポステーラ駅。

▼階段の鉄柵にはホタテ貝が並んでいる。おなじみになったこいつともお別れだ。

▼トレンオテルは定刻に発車。スペインの国鉄は日本並みの時間厳守のようだ。

▼204ユーロの個室やいかに。う~ん、もっと豪華かと思ったが、ま、それなりに快適そうだな。それでも、2人部屋をひとりで独占しているのだから、ぜいたくと言えばぜいたくだ。
 

▼イス席がベッドに。2人の場合は2段ベッドになる。  ▼手前が洗面所で奥がシャワー室。
 

 シャワーを浴び、食堂車へ行く。もう11時をまわっている。こんな遅い夕食は初めてだ。
 席に着くとメニューを渡された。てっきりコースになっていると思っていたが、料理を選べるようだ。メニューに値段が書いてあったのには驚く。

 食事代込のチケットだから、当然、いちばん高いものをチョイス。値段の安いものから先に見ていくのが普通なのに、こんなぜいたくな選び方なんて、人生初の体験だ。

▼料理も超豪華というのではないが、それなりにおいしいコースだった。

 1時5分、ベッドに入る。明日は6時半起き。5時間ぐらいしか眠れないが別に問題なし。しんどい歩きは終わった。

 いろんな意味で今回の旅はツキに恵まれた。自然にいいことが起きた感じがする。いいことと悪いことをはかりにかければ、いいことのほうがずっと多い旅だった。
 これはだれに感謝すべきだろう。こういう旅をさせてもらった、まわりのみんなに感謝だな。

 ということで、おやすみなさい。
 そうそう、疱疹はかなりおさまってきた。


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     ◆聖地巡礼:カミーノ・デ・サンティアゴ