▲サンティアゴ大聖堂の中央祭壇に祀られた聖ヤコブ像。巡礼者は背後からこの像に抱擁する。

最後のセレモニー
【43日目12年10月21日(日)晴れのち曇り休養日(Santiago de Compostela)

 朝はゆっくり起きて、9時すぎにパラドールの食堂に行く。
 申し込んだ宿泊プランが「ゴールデン デイズ プロモーション」(55歳以上対象)というやつで、ビュッフェ式の朝食が付いているからだ。

▼パラドールの廊下は、どこを歩いてもため息がもれるほどシックだ。

 シニア向けの割引プランなので、まあ、大したことはなかろうと出向いたら、案に相違して実に豪華&美味。こいつは出されている料理すべてを制覇しなくちゃなるまい。
 ほんのひと口ずつ皿にとり、並べられた料理のほとんどを食べ(9割ぐらいは食べた)、朝からおなかパンパンの状態で、部屋に引きあげる。

 11時30分にチェックアウト。カード支払いの料金明細は151.44ユーロ。アルベルゲ泊なら優に30日分か。ぜいたくだなあ、と思うものの、ま、残された人生で二度とは体験できないだろうし、これも冥途のみやげのひとつだ。

 リュックをかついで大聖堂に行く。昨日は混雑してあきらめた、聖ヤコブ像の抱擁という、巡礼の締めくくり儀式を行うためだ。

▼中央祭壇に祀られた聖ヤコブ像。この像の背後から抱擁の儀式を行う。

▼聖ヤコブ像が祀られている中央祭壇の後ろ側に行くために並ぶ人の列。左端に少し見える入り口から階段を上がる。正午から始まるミサのときは、並ぶ人はほとんどいなくなる。

▼階段の上り口で見上げた天井。細かい金細工が施され、まばゆいばかりの輝きを見せていた。

▼階段を上がると聖ヤコブ像が鎮座している。サンティアゴに着いた巡礼者はこの像に後ろから抱きつき、巡礼が無事に終わったことを報告、感謝の意を伝える。わたしもその儀式をようやくすませることができた。

▼祭壇の裏側から見たミサの様子。ミサに出る人が多いこの時間は、昨日と違って写真も楽に撮れる。

▼昨日は人波に押されて通るだけだった地下の聖所で、聖遺物が納められた銀の箱も撮影できた。

 巡礼を締めくくるセレモニーはすべて終わった。
 長い巡礼旅もこれで終わりだ。
 歩くのも終わり。
 アルベルゲに泊まるのも終わり。
 クレデンシャルにスタンプを押すのも終わり。
 オラの挨拶も、手洗いの洗濯も、すべて終わった。

 巡礼の旅に幕が下りたところで、さて、日本に帰るとするか。

▼大聖堂から広場に出ると、到着した巡礼者たちが市庁舎の柱に背をあずけて休んでいた。お疲れさん!

▼新旧のいでたちをした巡礼者が立ち話。

 今日、泊まるホテルへ移動。新しいホテルは新市街にあった。
 新市街に滞在すると、旧市街との違いがよくわかる。旧市街は観光の街になっており、物価が高い。新市街は生活の街。住居もマンション形式が多く、旧市街の石組みの家はほとんど見られない。物価も安い。

▼新市街の街並み。

 今日から3日間を過ごすホテルは、シングルの狭い部屋。パラドールとは雲泥の差。値段が151ユーロと30ユーロじゃ、それもしかたがない。

 このホテルを選んだのは、サンティアゴ駅がすぐ近くにあるからだ。そこからマドリードまで列車で行き、マドリードのバラハス国際空港から帰国、というのがこれからの予定だ。
 さっそく駅を見に行く。迷ったり遠まわりをしたりで15分ほどかかったが、最短ルートだと7、8分といったところか。

▼スペイン国鉄のサンティアゴ・デ・コンポステーラ駅。

▼駅の構内に入るのはフリー。日本のように入場券はいらない。地方の小さな駅という感じだった。

 サンティアゴからマドリードまでの列車は日本で予約してきた。トレンオテル(Tren Hotel)という寝台列車の特等で、夕・朝食付き(Gran Clase)というデラックス版。お値段なんと2万4600円也。
 ただしこれは、「マックスビスタトラベル」に手配してもらったので、その手配料を含んだ金額だ。自分でネット予約すれば2万円ぐらい。送られてきたチケットの金額欄は204.4ユーロだったからね。

 マドリードまでは安い航空便もあるが、トレンオテルを絶賛しているホームページの体験談を読んで、これまた冥途の土産とばかり、乗ってみることにしたのだ。

 ともあれ手配はすべて終わっているし、駅も確認した。これで安心して日本まで帰れる。あとはのんびり体を休め、サンティアゴから成田まで25時間の長旅に耐えるだけだ。

 サンティアゴ駅からホテルまで、来たときとは別の道を通って帰る。

▼街で見かけた書店のディスプレー。なかなかおしゃれじゃないか。日本でも真似できそう。

 ホテル近くのバルで夕食を食べ、あとはやることもなく、ベッドに寝転んで12時近くまでテレビを見る。チャールズ・ブロンソンのアクション映画が、くだらないけどおもしろい。頬がふっくらしていたから、だいぶ歳をとったときのやつだな。

▼シングルの部屋が狭いと感じるのはぜいたくというもの。アルベルゲに比べれば天国だ。

 気になる疱疹は、最初にできたものはよくなったが、また新しいものができる。ただ、全体的な数は減少傾向のようだ。あまりひどいと、帰国のときに申告する必要があるかもしれない。面倒だから、早くよくなってほしいよ。


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      ◆聖地巡礼:カミーノ・デ・サンティアゴ