▲通りすがりに声をかけられて宿泊したアルベルゲ。広い庭がすばらしく、こんな家に住みたいと思う。
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間違えて別ルートを歩く 
【27日目12年10月5日(金)晴れLeon➔Villar de Mazarife21.1km/累計489.9km】

 外を通る人の声がうるさくて目が覚める。ホテルの部屋は道路に面した2階だから、通行人の声もよく聞こえる。それにしても6時前だ。あんなに大きな声で話しながら歩かなくてもいいだろうに。起きてもいい時間だけど、朝食が7時半からだ。寒いし、7時まで寝ていよう。

 リュックは昨夜のうちにまとめ、準備はできている。が、ふと思いだした。そういえば杖はどうした? あ、用意した覚えがない。……ということは、どこかに忘れてきた?

 寝ている場合じゃない。起きだして部屋中を改めたが、やっぱりない。昨日は使っていないから、どこかに置き忘れたとすればレオン到着のおとといだ。
 おとといか。何をしたっけかな。レオンまでは間違いなく杖をついてきた。そのあとはホテルをさがし歩き、バルでお昼を食べた。そうだ、そのとき、ウェイトレスが杖に足を引っかけたのを覚えている。

 お昼を食べてすぐにチェックインしたから、忘れたとすればそのときしかない。フロントでリュックをおろし、杖は……壁に立てかけた。そうだ、杖はフロントそばの壁に立てかけた。間違いない。

 支度を整え1階に降りる。フロントの係はもう来ていた。杖は……あった。カウンター内に置いてあった。よかった!

 朝食。7時45分、チェックアウト。
 楽しい休日が終わり、巡礼再開だ。下見は完璧だから難なくレオンの旧市街を出る。

▼夜明け前の大聖堂広場。散水車が広場を洗い清めたのだろう、石畳が濡れていた。これが見納め。

 1時間ほど歩くと少し汗ばんでくる。いつもよりあたたかいようだ。今日は天気もいいし、気持ちよく歩けそうな気がする。

▼巨大なパンを売っている屋台。出発して1時間40分ぐらいだけど、ここもレオンの市街地なんだろうか。

▼巡礼者の像。鉄の板をくり抜いて作ってある。

 10時15分、道を間違えたことに気づく。ガイドブックにも道が分岐すると書いてあり、注意しなければと思っていたのに、メインルートではなく別ルートを通ってしまった。
 とはいえこれは、ガイドブックの記述も不正確だし、道路標識もおかしなもので、わたしとしては納得いかないのだが、ミスはミスだ。

▼道が分岐して5分ほど歩いたところで見つけた標識。どう解釈すべきか悩んだ末、逆戻り・Uターンの意味だろうと結論し、分岐まで戻ってもう一方の道を進んだ。あとで考えれば、ここから戻ると別の道もありますよ、という意味の標識だったのかもしれない。真相は不明だが……。

 2つのルートは2日後に合流するからいいのだが、問題は歩く距離。メインルートだと今日が26.1キロ、明日が22.8kmだ。
 一方、今歩いている別ルートは、今日が21.1km、明日が27.8km。泊まれる村が適当な距離にないので、どうしてもそうなってしまうのだ。これでは、休養明けで元気いっぱいの今日が短く、疲れの出る明日は長くと、逆転してしまう。

 いまさらグチってもはじまらないな。明日は明日の風が吹くだ。それにこの道を歩いている仲間もけっこういる。この別ルートが全然ダメということではなさそうだ。

▼頭がまったく見えないほど大きなリュック。よくまあ、かつげるな。わたしには真似できない。

▼雨が降ると泥だらけの道になるとガイドブックに書いてあった。このところ晴天続きでありがたい。

 12時8分、昼食。ここまで休まずにきた。まだ余力がある。休養の効果絶大なり。
 道を間違え、杖を忘れ、わたしはドジな人間だが、わたしの体はきちんと働いてくれる。わたしはわたしだが、わたしの体もわたしなんだろうか。

▼バルで昼食。家でネコを飼っているので、野良ネコを見かけるとついついエサをやったりしてしまう。

 お昼休みを終え、1時間歩いてビジャル・デ・マサリフェの村に入る。今日の目的地。
 村に入るとすぐにアルベルゲの立札があり、庭のベンチで休んでいた女性がオーラと声をかけてくる。先客のようだ。年の頃は四十前、目鼻立ちくっきりのスペイン美人。
 その明るい声にさそわれ、今日の宿はここに決めた。白いパラソルのある庭のテーブルにはギターをつまびく男性も。いい雰囲気だなあ。

▼おしゃれな感じの私営アルベルゲ。宿泊7ユーロ、夕食9ユーロ、朝食4ユーロ、計20ユーロだった。

 新しいアルベルゲのようで、中もきれいだ。受付に貼ってある夕食のメニューなんかを見ていたら、いらっしゃい! という感じで、先ほど声をかけてきた女性がやってきた。

▼明るい室内はまだ新しく清潔。真ん中のベッドがくっついているのが気になる。

 なんのことはない、彼女がオーナーだったのだ。道理で派手な声で気を引くけわけだ。
 おまけにギターをひいていた男性は彼女の旦那で、夕食のときに給仕をしてくれた。昼間のあれは、道行く巡礼者をさそいこむための演出だったんだな。

 3時半ごろ、村の散策に出る。今日は夏のように暑い。小さな村で30分ほどで一周してしまった。偶然、Wi-Fiの使えるアルベルゲを発見。こっちのほうがよかったかもしれないが、巡礼路を大きく外れているから、普通に歩いていたんじゃ見つけるのは無理だな。

▼教会の鐘壁。コウノトリの巣はもはやおなじみだ。

▼小さな広場で見かけた巡礼者の像。後ろの黄色い建物はWi-Fiが使える私営アルベルゲ。

 夕食は総勢30人ぐらいが食堂に集まった。オーナー夫妻とまかないのおばちゃんの3人がてんてこ舞いで給仕に当たる。田舎の家庭料理というおもむきで、下手なレストランよりおいしかった。

 こういった食事でちょっと癪なのは、みんなはワイン飲み放題、わたしは水の飲み放題。でも、料金同じということ。
 ま、これもサダメだ。あきらめるとしよう。ともあれ夕食は満足、満足。明日は少し長く歩くし、早いところ寝よう。

 夕食後、庭に出てみたら、コオロギの鳴き声が聞こえた。季節は秋に変わりつつある。


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      ◆聖地巡礼:カミーノ・デ・サンティアゴ