▲スペイン語の「BAR」は「バル」と読む。食事もできれば酒も飲める便利な店で、朝早くから夜遅くまでやっている。
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初めてBARに入ってみた
【6日目12年9月14日(金)晴れZubiriPamplona21.7km/累計68.2km】

 6時起床。7時30分出発。この時間だと、夜はまだ明けきっていない。
 昨日、町に入るときに渡った橋を戻り、すぐに右折して坂道を上る。この道が、巡礼路で最初の都会パンプローナへ通じている。

▼部屋を出る前にスビリの町を一枚。車はまだヘッドライトをつけて走っている。

▼町の入り口にかかる橋。なんでもこの橋は「狂犬病の橋」と呼ばれ、橋を3度巡回すると狂犬病がたちどころに治る――という奇跡が伝わっているとガイドブックにあった。来るときは左の道からだったが、町を出るときは橋を渡ったらすぐ右に曲がる。まだ夜を引きずっているせいかやや寒い。

 巡礼者たちが橋を渡っていく。後を追いながら、胸がワクワクする。パンプローナに着けば、待ちに待った休養日なのだから。今日一日歩けば、明日はオ・ヤ・ス・ミなのだ。

 一日20kmとして800km歩くと40日かかる。その間休みなしでは体がもたない。10日に一度は休養日を入れよう――巡礼のスケジュールをたてるときにそう決めた。
 ただし、今回は特別。はるばる日本からやってきたばかりだ。1週間目に休みを取っても罰は当たらないだろう。

 通算47日間の巡礼旅。うち、実際に歩くのは40日で、うち休養日は4日。その最初の休みが明日なのだ。考えるだけでウキウキ気分になるなあ。

 1時間歩いてイララッツ村の水飲み場で休憩。次のララソアーニャ村まで同じく1時間。
 天気は快晴。冷たい風が吹いて、何もしなければ寒く感じるのだろうが、歩いているとちょうどいい気温だ。
 道の脇の畑にひねこびた柿がなっている。やや黄色みがかっているので、もうすぐ熟すのかな。秋近し。

▼イララッツ村の水飲み場。ここのように整備されていればいいが、なかには手入れが悪く、飲用に適さない水になってしまったものもあるようだ。あやしいと思ったら飲まない。自分の身は自分で守るしかない。

 前を行く女の子は、日本人じゃないのかな?
 9月の巡礼路は盛りをすぎたとはいえ、まだまだ人が多い。でも残念ながら日本人には出会っていない。ひょっとして?

 その子を追い抜いたら英語で話しかけられた。韓国のお姉さんだった。
 なぜか知らないが、東洋系だなと思うとほとんどが韓国人。それも若い人が多い。韓国では若者にサンティアゴ巡礼がはやっているのだろうか。

 それにしても、やっぱり英語は必須だよな。巡礼者は、ほとんどの人が英語でコミュニケーションをとっている。スペイン語なんてだれも話していない。これなら中学英語でいいから、復習してくるんだった。後の祭りだけど。

 アルガ川のほとりで小休止。パンを1個と半分。残りは1個半になってしまった。心細い。
 休んでいると、先ほど追い抜いたひとり歩きのご婦人が、キャッキャッと声高にはしゃぎながら、男性とやってきた。ときおりこの手合いを見かける。
 1人より2人で歩くほうが楽しいのはわかるが、巡礼だぜ、たしなみってものがあるだろう。わたしには媚を売っているように見えてしかたがない。

▼アルガ川沿いの巡礼路。ベンチがあったので小休止。

 歩きはじめて3時間、バルを発見。休んでいこう。バルは初体験だ。フルーツ盛り合わせのパックとヨーグルト、ミートボールを頼む。5ユーロ札を出したら足りなく、7ユーロだった。ちょっと高いんじゃないの。

▼初めて入ったバル。BARと書いてあると日本だとバー。だが、スペインでは、軽食、酒類、果物など、食べる&飲むには事欠かない飲食店がBARだ。ピザを焼く石窯の煙がもうもうとたちこめているこのバルは簡単な造りの屋台風だった。

▼パンは頼まなくても必ずついてくる(何軒か入ってわかったこと)。カウンターに並べてあるものを指さすだけだから、注文も簡単。指さしながfら日本語で「これください」と言っても通じた。飲み物は水かカフェオレ。これは見本が置いてないし、日本語では通じない。水は「アグア」、カフェオレは「カフェコンレチェ」。なお、水はすべて有料。日本のように水のサービスはない。アルコール類は注文したことがないのでわからない。たぶん、ごく普通のワインと水は、同じぐらいの値段だと思うが。

 ほとんどのバルには、店の外にイスとテーブルが並べてある。客は注文をすますとそこに陣取り、品物が運ばれてくるのを待つ。地元の人もフラッとやってくるが、カウンターで一杯ひっかけて小銭を出し、サッと帰っていく。日本でいう立ち飲みだな。昼日中から大丈夫か?

 初めてバルに入ってみたが、案ずるより産むがやすしとはこのことで、「オーラ」と元気よく挨拶して入っていけば、あとは笑顔で料理を指さすだけでOK。
 大きなリュックを背負った格好で巡礼者とわかっているから、相手もこころえたもの。言葉ができないと察すれば、それなりに対応してくれる。

 このバルでは靴を脱いで大休止。歩いているとき小指にピリピリ感を覚えたからだ。靴を脱いで見てみたが、何も異常はなかった。念のため、小指にテープを巻く。
 ピリピリ感はマメができる前兆。このとき、面倒くさがって放っておくと、気づいたときにはマメができているものだ。マメはできる前に予防。これが歩きの鉄則だ。

 11時出発。おなかはいっぱいになった。考えてみれば、これが、歩きはじめて最初の、お店で食べた食事だった。

 日本だと、お昼ぐらいになれば、どこかしら食堂が開いている。が、スペインでは、食堂(レストラン)は夜の8時、9時が開店時間。とてもじゃないが、朝が早いので夜の9時には寝ているわたしが行ける場所ではない。
 その点、バルは朝から夜まで開いている。これからも食事はここしかないな。

 バルを出て5分ほど歩いたところで十字架に遭遇。これは間違いなく墓標だ。十の字が交差したところに金属のプレートが貼ってあり、プレートに刻まれた「Fin del Camino Rosanna di Verona 2006」がそれを物語っている。ただただ合掌するのみ。

▼両側がやぶになっているこんな細い道だと、通るのは巡礼者しかいないだろう。寂しいところだ。

 そこから歩くこと1時間半、町が見えてきた。あれがラ・トリニダッド・デ・アレなら、目的地のパンプローナまであと4km足らずだが。

▼いい眺めだ。あれはパンプローナのベッドタウンといわれるラ・トリニダッド・デ・アレだろう。

▼石造りの橋があるこの町はやはりラ・トリニダッド・デ・アレだった。橋は中世に造られたものだという。

 1時54分、パンプローナの城門をくぐる。2時1分には巡礼事務所に到着。ここにはアルベルゲも併設されている。

▼パンプローナの街に入る城門。高い城壁に沿って歩いていくと、この門にぶつかる。紀元前に築かれたという歴史を誇る街だけに、思わず見とれてしまう建造物だ。

▼巡礼事務所とアルベルゲがある石造りの建物。これまたいい雰囲気じゃないか。こんなところのアルベルゲなら泊まってみたいと思わせる。なにやら相談している一団は韓国の若者たちだ。

 時間はたっぷりあるので、スタンプをもらったら、まずホテルをさがそう。明日はせっかくの休日だから、ホテルに2連泊したいのだ。
 適当なホテルがみつからなかったら、ここのアルベルゲでもいい。ただし、アルベルゲは一泊という規則があるので、明日はまた泊まるところをさがさなければならないが。

 事務所でスタンプをもらったついでに、近くにホテルがないか聞いてみた。すると大きな地図を渡され、いちばん近いのはここ、と教えられた。
 行ってみると、すばらしい場所にあるホテルだった。なにしろカスティージョ広場に面して建てられている。気に入った!

▼夕暮れのカスティージョ広場。泊まったホテル(中央の建物)は、広場に面した一等地に建っている。

 何も考えずにホテルに入り、フロントへ。なんだかこれまでと雰囲気が違う。重厚な造りのロビー、丁重に応対するフロントマン。汗にまみれ、ほこりだらけのわたしでは、場違いの感がある。ビシッと決めた人の来るところだ。

 「いらっしゃいませ。お泊りですか」(たぶんそう言っているのだろう……)
 「2泊、お願いします」(指を2本立て、ポルファボールと言う)

 ちなみに、ポルファボールは魔法の言葉だ。「お願いします」という意味で、これさえ覚えておけば万事OK(だと思う)。簡単な単語を言ったり動作をしたりして、最後にこれをくっつければ、頼み事だとわかってもらえるから。

 慇懃にうなずいたフロントマンは、メモ用紙に「120€」と書き、次いで「×2=240€」、さらに「×10%」、そして「T=264€」と書いて、わたしに渡した。

 ゲッ、税込2万6400円か! 素泊まりで?
 ここ数日でスペインの安い物価に慣れてしまったわたしは思わず絶句。そして、おそるおそる聞いてみる。
 「ディナー?」
 彼は、言い遅れてすいません、と恐縮した態で、なんたらかんたら言う。聞き取れたのは「ノー」と「ブレックファースト」という単語のみ。

 夕食なしの朝食あり、と解釈。う~ん、どうしよう。
 あまり迷っているのもみっともない。えい、ここは日本男児のいさぎよさを見せてやろうじゃないか。

 「OK」とひとこと言い、カードを取りだして渡す。サンティアゴ巡礼のためにわざわざつくったVISAカードだ。文句はあるまい。

 こうして豪華絢爛の部屋に通され、優雅な休日が始まった。あとで確認したら、ここは5つ星のホテルだった。高いはずだ。

▼部屋は、残念ながら広場に面していなかったが、窓を開けるといかにもスペインらしい街並を見ることができた。
 荷物をとき、シャワー、そして洗濯をすませ、さて、どこに干せばいいのだろう。

 これまで泊まってきたアルベルゲやペンシオンには物干し場があった。が、こんな高級ホテルにそんなものがあるわけがない。必要な人はランドリーに出すのだから。

 といっても、今日着ていたパンツ、Tシャツ、靴下だけの洗濯物をランドリーというのもおおげさだし。

 幸いこの部屋の洗面室は広い。そこで、ロッカーからハンガーを持ってきて、洗面室のあちこちにぶら下げた。それに洗濯物を干し、換気扇を回しておけば、いずれ乾くだろう。

 巡礼旅では、この洗濯物がやっかいだ。
 そこで、その日の汚れ物は
その日のうちに洗って乾かす――これを原則にし、到着→シャワー→洗濯→干す、までを一気にやってしまう。習慣になってしまえば、なに、たいしたことはない。

▼ひとりで泊まるにはもったいないほどの部屋だった。Wi-Fiも使えていうことなし。

 さて、洗濯も終わったし、Wi-Fiが使えるのでメールの整理でもやるとするか。録音してあるメモもテキストにしなくちゃいけないし、休日返上にならないよう、今日のうちに片づけよう。


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     ◆聖地巡礼:カミーノ・デ・サンティアゴ