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脳梗塞よれよれ日記【008】 |
退院できない眠れぬ夜は | |
◆2017年03月17日(金) 発症9日目 | |
朝、採血。カミさん来る。 10時からCT検査。あっという間に終わる。今日のお勤めはこれにて終了。あとは、土・日・月と3連休。火曜日の先生との面談まで何もすることがない。 日中はデータ整理。眠い。 看護師から24日(金)に採血とCT検査が入ったと言われる。 なんだぁ、1週間も先じゃないか。来週は火曜日に、これまで受けた検査の総合的な説明を聞いて、そのあとは退院ともくろんでいた。なのに、金曜検査ということは、退院は再来週ということかぁ! 怒・怒・怒! なれど、怒りを抑える。 夕方、別館の休憩所でスクワット30回。100回が目標なのにヤル気なし。 夕食前、空腹感あり。小食に慣れたのに、腹が減るのは珍しい。 夜はいつもどおり9時就寝。午前2時、これまたいつもどおり点滴終了のピーピー音で目が覚めた。これで朝まで眠れない。 昨夜は、夜中の12時にトイレ覚醒だった。そうなると、12時から起床の朝6時まで、一睡もできない。 睡眠障害というやつで、なんとかしたいと思えども、打つ手なしの状態が続いている。気がついたら朝だった……という、昔がなつかしい。 ないものねだりをしてもしようがなく、昨夜は朝までの6時間、今夜はあと4時間、どう過ごすかという難問に立ち向かわねばならないのだ。 暗い天井を見ながら、宙に文字を書いて覚える。 脳梗塞の種類は? 1にアテローム血栓性脳梗塞。予防治療にはアスピリン。抗血小板薬。 2にラクナ梗塞。同じくアスピリン。 3に心原性脳塞栓症。薬はワルファリン。抗凝固薬。 昼間のお勉強の復習。いつもキーボード入力なので、たまに文字を書くのはいい暗記法だと思う。 ただ、効率は悪い。覚えた端から忘れるからね。 それにしても、いつからこんなふうに眠れなくなったのか。思い起こすと、9年前、食道がんの抗がん剤治療で入院したときのような気がする。 抗がん剤治療では、体内に注入した抗がん剤をなるべく早く体外に出すため、大量の水分を摂る。生理食塩水の点滴、さらに水分摂取。とにかく水を飲め、と言われた。 そして、排出したおしっこは容器に貯め、量を記録しなければいけない。この作業が3、4時間おきなのだ。それが3日間、24時間続く。 あれ以来、3時間リズムで眠りが浅くなるたびに、尿意で目が覚めるようになった。時を同じくして前立腺肥大が昂じてきたのもまずかった。 前立腺肥大は医者に診てもらい、頻尿の薬をもらった。だが、まったく効かない。数年がまんして飲み続けたが、かんしゃくを起こして放り投げ、以来、薬は飲んでいない。もはや、なすがままの心境である。
カーテン一枚へだてた隣のベッドからは、安らかな寝息が聞こえる。 連休明けには退院が決まっている65歳おじさん。ベッドにこもりきりで、顔を出すこともない。カーテン一枚とはいえ、閉め切ってしまえば個室だ。 ただし、声はつつぬけだから、だいたいのことはわかる。脳梗塞ではない。一過性脳虚血発作の診断が出ているようだ。 この病室では、たまたま同じ日に、同じ程度の軽い発作の年寄りが3人入院した。わたしを除いた2人は連休明けの退院予定。入院当日、CT+MRIで検査を行い、確定診断が早くできたからだ。 この65歳おじは、イヤホンなしでテレビを見ていて、看護師に怒られている。それでも懲りなくて、今もイヤホンなしで平気だ。 老人は長く生きてきたので、叡智にすぐれているとされてきた。だが、長く生きてきたから分別がつくのではなさそう。人によりけりだな。 とはいえ、他山の石だよ、おまえさん。 自分を振り返ってよく観察すれば、老人はやはりうとまれる存在だと確認できる。歳をとっているだけで、敬われる存在になれるわけではない。 その基本は、新陳代謝なり。陳は新に代謝される存在。つまりは、古い役立たずなのである。 ただ、まれに、若いやつではとうていかなわない叡智の持ち主、長老たるべき人がいる、というだけのこと。 大部分は、古くて頑固で、どうしようもないやつらなのだ。俺も含めてだよ、もちろん。 窓の外が少し明るくなったようだ。 長い一日の始まりだなあ。どげんもならん。 【008・退院できない眠れぬ夜は 了】 |
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