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脳梗塞よれよれ日記【001】 |
アッ!ろれつが回らない | |
◆2017年03月09日(木) 発症 | |
春まだ浅き3月9日。 あとで考えると、この日は語呂が悪かった。3と9で、さんざん苦しむ、だ。 それはさておき、その苦しみはちょっとしためまいから始まった。 めまいの詳しい経緯は別カテゴリの「このめまいはナンダ?」を参照していただくとして、その日1回目のめまいは朝6時30分に起き、2、3分でおさまった。 ごく軽いものだと思い、それほど気にしなかった。 日中は何事もなく過ぎ、めまいのことも忘れかけた午後7時30分、2度目のめまいがやってきた。 最初は朝と同じような症状。 頭がふら~りと揺れる。だが、そのあと、左手の指先、左足の指先にしびれを感じた。めまいは朝より少し長く、3、4分も続いただろうか。 そして、二度あることは三度ある。午後9時30分、今度はかなり強烈なめまいだ。 心臓の不整脈によるめまいとは明らかに違う気がする。ひょっとしたら昨年の6月に植込んだペースメーカーの故障か? カミさんは仕事でいないし、ひとりきりでパニックになりそうな気持ちを抑え、ペースメーカーを植込んだT病院に電話する。 今の時間は救急外来のはずだ。電話に出た看護師と話しているうちに、しだいにろれつが回らなくなる。 なんだ、これはッ! 「ろれつが回らない」と言うと、看護師もそれを察知し、先生と相談します、とあわただしく答えてくれる。 すぐに戻ってきた看護師は、 「脳梗塞の疑いがあるとの先生の判断です。この病院には脳疾患の受入れがありませんので、救急車を呼び、TPA(*注1)をやっている病院に搬送してもらってください」 と切迫した調子で言う。 ろれつが回らなくなった時点でわたしもハタと気づいた。 心臓じゃない、脳だと! すぐに電話を切り、生まれて2回目の「119」をプッシュする。 つながった電話に夢中で話すが、うまく言葉が出ない。このころになると、わたしのろれつはもう完全に回っていない。 住所だけはしっかり言わないと。一語一語区切って大声で発声し、なんとか通じたようだ(*注2)。あとは待つだけ……。
これだけの混乱状態なのに。意識は不思議にしっかりしている。 心臓に続き、今度は脳梗塞かよ。どげんもならん! 救急車が来る前に玄関には出ておこう。 発作も少しずつおさまってきた。 力の入らない足を踏みしめ、手すりにすがりついて階段をおりる。 電話をしたのは2階。連絡先を書いたメモが2階にしかなかった。だから発作をガマンして這うように2階へ上がったのだ。 これは大失敗だった。 1階にも電話はあるのだから、そこにも連絡先メモを置いておくべきだった。 さて、持っていくものは、財布に保険証、ペースメーカー手帳、それに家の鍵。 待てマテ、それを入れるバッグがないぞ。またも2階か、やれやれ。 部屋着のままだけど、着替えたほうがいいのでは? 入院準備は? 2階に上がり、シャツだけ着替え、バッグを手に部屋の電気を消した。さっきは気づきもしなかった。まわりのことがわかるほど状態がよくなったんだな。 1階に下り、火の気の点検をし、準備完了。さっき頭をかすめた入院準備は気力なし。玄関の上がりがまちに座りこむ。 待つ間もなく、救急車到着。 発作はおさまったように感じられる。玄関先に来た救急隊員にその旨を伝え、歩けるのでストレッチャーはいらないと断る。 口調もなめらか。うん、大丈夫だ。元に戻った。 隊員に抱えられるようにして門の前まで階段を下り、道路に置かれたストレッチャーに横たわる。 すぐに救急車内に運び入れられ、さて出発、と思ったら、名前の確認から始まり、症状の詳細、発作の経過、連絡できる家族の電話番号など、あれこれ聞かれる。 停車したままなのは、わたしの様子を見てそれほど切迫していないとみたのか。 受け入れ病院さがしもあるようだが。 病院は「×××に決まりました」と言われた。覚える気にもならない。そのうちわかることだし。 仕事で出張中のカミさんとは2度目の電話でつながり、状況を知らせた。救急隊員の要請で長男に連絡し、病院に来てもらうことになる。連絡はカミさんにまかせた。 ここまで手配がすんで、ようやく救急車が走りだした。 このころになると発作は完全におさまり、めまいやしびれ、脱力感などまったくない。いつもどおりの状態なのでリラックスして車の揺れに身をまかせる。 到着後(たぶん夜の10時半ごろ)、医師の問診があり、治療方針の説明があった。 まずCT検査。そのあと、本来ならMRI検査だが、ペースメーカー使用者は、夜間は規則でやらないことになっていると言われた。MRIは明日以降になるとのこと。 わたしにとっては毎度おなじみのCTを撮り、待っていると、画像のコピーを渡してくれた。脳の右側下部に黒い線がある。これが梗塞跡ではないか、とのこと。 確定診断はMRIを撮ってからになるので、今は脳梗塞疑いの所見だと言う。 現状、わたしの病名は「一過性脳虚血発作(*注3)」と言うそうだ。CTの黒い線がMRIで梗塞跡と確認できれば、脳虚血発作が脳梗塞という病名に変わるわけだ。
症状は完全におさまっており、気分は平常どおり。わたしの実感もごく軽い梗塞、たぶん一過性のものだと告げている。 一時はどうなることかとあわてふためいたが、ごく軽くすんで幸いなり。 明日にでもMRIを撮り、一過性脳虚血発作、あるいは軽い脳梗塞の確定診断が出れば、治療は薬のはずなので、処方箋をもらい、即退院の運びになるだろう。 ホッと一息ついたころ、二男が顔を見せた。長男には連絡がつかなかったようだ。 入院の手続きは二男がやってくれ、深夜の病棟入りになる。 4人部屋の窓際のベッドだった。 ぐっすり眠りたいところだが、風呂にも入っていないし、昂ぶった気持ちは睡眠モードじゃない。それでも大ごとにならずによかったよ。 点滴が2袋、スタンドにぶら下がっている。 救急当直の先生の名前不明。名札を見ている余裕もなかった。観察甘し。 【001・アッ!ろれつが回らない 了】
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