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脳梗塞よれよれ日記【003】 |
アテローム血栓性脳梗塞 | |
◆2017年03月11日(土) 発症3日目 | |
朝食8時。 昨日の夕食とよく似た浮遊感がやってくる。だが、昨日より弱い。ちょっと待っていると、食べられるようになった。それにしても、なぜ食事時ばかりなんだ? お昼前、リハビリ担当者が2人。 ひとりは挨拶だけ。もうひとりのOさんから知能テスト式の脳力テストを受けた。 暗算は苦手だと再認識。脳の機能には問題なしの判定だった。 午後、長男のヨメさんくる。カミさんも出張から帰ってきた。状況を話し、週明けの検査待ちと伝える。ともあれ、軽い発作でよかった、よかった、だ。 病院内を散策。病棟の外れのほうに談話室があった。ちょっと寒い。日中はここで過ごすほうがよさそうだが、一枚、よけいに着ること。 病室に帰ってくると、担当のF先生がみえていた。これからの予定。 *月曜に頸動脈と心臓の超音波検査。 *水曜か木曜に造影剤を使ったCT撮影。これはMRIより有効とか。期待できる。 そのあと、午前中に挨拶にきた理学療法士のNさんが、歩きをみてくれる。臀筋が弱いと言われた。虚血発作の影響はまったくないが、この際だから臀筋の強化法を教えてもらおう。ついでに棘上筋の強化法も。 わたしの場合、一過性の虚血発作だと思われるので、発作時に体験した障害は残っていない。その状態から判断し、リハビリはいらないと思う。 とはいえ治療メニューにある以上、やらざるをえない。筋トレだと思えばいい運動だ。 昼食、夕食とも前2回のような異常はなし。
今日から少し気合を入れてお勉強。 これまで読んだ資料で、脳梗塞の本質はわかった。発症するまでの経過を時系列でシンプルに表すと次のようになる。 脳の血管が詰まる➜血流がストップする➜脳細胞が死ぬ➜体の障害発症 これでわかるように、脳梗塞の出発点が「脳の血管が詰まる」ことなのは明白。 では、いったい何がどう「詰まる」のか? 詰まるメカニズムを調べてみると、その原因別に大きく3つの脳梗塞タイプがあることがわかった。 1)アテローム血栓性脳梗塞 2)ラクナ梗塞 3)心原性脳塞栓症 今日はまず1番目の「アテローム血栓性脳梗塞」の勉強だ。 さて、このタイプの脳梗塞では、脳の血管に詰まるものは何か。それは病名に出てくる「アテローム血栓」というものだ。 「アテローム(Atheroma)」とは Wikipedia によれば、 「脂質(コレステロールや中性脂肪)、カルシウムや様々な線維性結合組織を含んだ細胞(ほとんどマクロファージ)や細胞の死骸から構成された動脈血管内での蓄積物であり固まりである」 ということになる。 つまりは、「脂質・カルシウム・細胞・細胞の死骸」などの「蓄積物・固まり」がアテロームということだ。 下の写真を見ればよくわかる。写真は、首の頸動脈が分岐する部分の血管に蓄積されたアテローム斑の標本だ。 写真は標本なので固形物に見えるが、実際はお粥のようにドロドロした蓄積物で、粥腫(じゅくしゅ)と呼ばれる。
こうした粥腫が血管の内膜にでき、年月とともに大きくなるのだ。 首の両側にある頸動脈といえばとても太い血管だ。そこに写真のような固まりが、これほどまでに蓄積するのは驚きだし、こうなってしまえば、血管の狭窄もはなはだしく、血流も大きく阻害されるというものだ。 Wikipediaでは、先の解説に続けて、 「心臓や動脈で問題になるアテロームは、通常、粥腫(en:atheromatous plaques)である。アテロームは、不健康な状態であるが、ほとんどの人で見つかっている」 と結んでいる。 ゲッ、こんな蓄積物が「ほとんどの人で見つかっている」というのか。げにオソロシヤ。 まあ、老若男女、人により大小はあるのだろう。わたしにしても、自分の血管がこれほどになっているとは思いたくもない。 しかし、こうなる可能性はだれにでもあるということだ。 しかも、頸動脈がこれほどの状態にまでなっているなら、ほかの血管も大なり小なり蓄積物があると思わなければならない(*注2)。 そして、こうした蓄積物・固まりこそ、脳梗塞を引き起こす元凶なのだ。 だから極端にいえば、わたしを含めほとんどの人が、いつなんどき、脳梗塞の悲劇に襲われてもおかしくない。 わたしたちは、そんなタイトロープを渡りながら生きているのである。 いや、ちょっと待て。脳梗塞の元凶がそれだとし、また、ほとんどの人でそんな蓄積物が見つかるにしても、もともとの血管はきれいなはず。 まさか生まれたての赤ん坊の血管がこうなっているとは思えない。 そう、血管内が写真のようになるには、長い年月が必要なのだ。 その年月の間にいったい何が起きているのか? 簡単にいうと、生まれてから数十年をかけ、ヒトの血管は少しずつ衰えていく。 本来の弾力性が失われて硬くなり、同時に粥腫が血管壁(膜)の内部に蓄積され、膜層が肥厚する。そのため、血液が通る内腔が狭くなってくる。 端的にいえば、血管が「硬く、狭く、モロく」なる。 これが、わたしたちがよく耳にする「動脈硬化」という生理現象だ。 じつはこの動脈硬化こそ、脳梗塞の黒幕といってもいいものなのだ。 弾力を失った血管は、血液を送る力が弱くなる。 それに加え、先のアテローム写真のように、大きな腫物が血管内壁のあちこちにでき、内壁を小山のように隆起させる。 そうなれば、血液の通り道は否応なくせばまり、血流はどんどん阻害されていく。
始末の悪いことに、アテロームはお粥のように軟らかい腫れ物なので、ちょっとしたことで傷つき破れてしまう。 すると、その破れ・血管内壁の傷を修復するため、血液中の血小板が凝集し、血栓をつくって傷をふさぐ。
いずれにせよ、動脈硬化が進んで内腔が狭くなった動脈で、こんな作業が延々と行われているのだ。 それにつれ、年月とともにアテロームが大きくなっていくのは言わずもがなのこと。 そしてあるとき、アテローム血栓のダムが完成し、動脈の血流をせき止めてしまう。突発的な動脈閉塞。アテローム血栓性脳梗塞のはじまりである。 こうなると、先の時系列式は修正が必要だ。 動脈硬化が進行➜アテローム生成➜脳の血管が詰まる➜血液がストップする➜脳 細胞が死ぬ➜体の障害発症 なるほど。血管の詰まりも重要だが、それよりも動脈硬化だ。 脳梗塞になりたくなければ、これをなんとかしなければならない。 69歳の今まで、気にしたこともなかった。どげんもならん大バカだ。 間にあうか、あわないか、いずれにせよ何かをやらずばなるまいて。 アテローム血栓は、比較的太い動脈にできやすいとされる。それだけに脳梗塞にまで至れば、脳の障害領域も大きく、甚大な後遺症を残す。 ただ、そこまでいかず、形成された血栓がはがれて流れ、その先の細い血管で詰まることもある。 一過性脳虚血発作は、そうした場合に起き、アテローム血栓性脳梗塞の前兆ともいわれる。 ほとんどの脳梗塞は、なんの前触れもなく突然起きる。だが、一過性脳虚血発作をアテローム脳梗塞の前触れと考えるなら、何か打つ手がありそうだ。 もちろんわたしの発作が一過性と決まったわけではない。 でも、今のところ体はなんともない。ピンピンしている。 ここはひとつ馬力をかけ、災い転じて福となすべく、脳梗塞を発症しない妙手はないか、考えてみることにしよう。 【003・アテローム血栓性脳梗塞 了】
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