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脳梗塞よれよれ日記【007】 |
脳梗塞の黒幕は動脈硬化 | |
◆2017年03月15日(水) 発症7日目 | |
発症して1週間が過ぎた。今朝は禁食。 9時半、CT検査に呼ばれる。車いすで移動。今日のCTは造影剤使用。 前処置で、造影剤を点滴するための針を静脈に挿入される。処置室は暖房がきいていてあったかい。 少し待って検査室へ入る。おなじみの検査台にあお向けに横たわり、頭の検査なので、額と顎をベルトで固定される。これが食道がんの定期検査と違う点。 ウィーンとドラムが回転を始め、ゴトンと検査台が動きだす。 検査の始まりだ。ドラムの回転が強くなる。脳が輪切り状態でスキャンされている。もちろん、何も感じないが。 検査の最終段階で造影剤が注入された。点滴の針を刺した右腕から熱がワッと広がり、上半身が熱くなる。 これまで体験してきた食道がんの造影CTに比べ、倍は熱く感じる。 造影剤は、食道であろうが脳であろうが、同じものが使われる。それは事前に確認しておいた。だが、それにしてはこれほど熱さが違うのはなぜ? 尋常ではない熱さに驚いたが、問題なく検査終了。 病室に戻るとカミさんが来ていた。 午後、担当のF先生来室。造影CTはきれいに撮れていたそうだ。しかし、内容はというと、脳梗塞の痕跡が見当たらない、と言う。 え? 救急搬送で入院直後に撮ったCTのあの梗塞痕は? う~ん、わからない ―― というのが現状。あと1回CTが残っており、それが終わってから総合的な説明をするということで、結論はそれまでおあずけになった。 CTはあさって金曜の午前中なので、その日の午後、あるいは連休明けの火曜、都合のいいほうで結果を聞く。 金曜はカミさんが女子会とか。しかたなく、火曜に説明を受けることにした。わたしとしては早く結論を聞き、もう、家に帰りたいのだが。 同じ日に入院した I さんには、連休明けの退院の話ももれ聞こえてくる。最後のMRI検査で異常がなければ、退院になるようだ。 わたしも今日の造影CTでは梗塞跡が見つからないのだから、もう「一過性脳虚血発作」に決まったようなものだとは思う。 それならそうで、さっさと治療方針(予防治療の方針)を決め、早く退院したいなあ。そう思うけれど、確定診断が出ていない状態では、退院はムリだ。 しかたがない。お勉強でもするしかないか。今日のテーマは動脈硬化。
脳梗塞の元凶が動脈硬化にあることは間違いない。しかし、これまで動脈硬化など他人事のように思ってきた。いい機会だから、基礎から学ぶとしよう。 さて、動脈硬化とは何か。次のような年老いた欠陥血管をイメージしてみる。 ①弾力性が失われて硬くなった血管 ②内側がもろくなって傷つきやすい血管 ③内壁が厚くなった血管 ④内腔が狭くなって血液が通りにくくなった血管 どうだろう。硬化した動脈という単純なものではなく、さまざまな病変におかされた欠陥だらけの血管という気がしないだろうか。 まあ、簡単にいえば、血管が「硬く・もろく・狭く」なるのが動脈硬化である。 赤ちゃんの血管が「柔らかく丈夫で広い」としても、成長するにつれ(加齢=老化といってもいい)、血管は少しずつ“衰え”ていく。この血管の衰え、それが生理的動脈硬化と呼ばれるものだ。 生理的である以上、だれもそれから逃れることはできない。動脈硬化は加齢とともにあらゆる人に進行するのだ。
常に血流と接している内皮細胞は、 「血管の緊張性の調節、血管内血栓形成の防止、動脈硬化の予防にあたるなど、驚くべき多様な機能をもつ」 ことが、最近の研究で明らかになってきた(詳しいことは*注1参照)。 問題なのは、この重要な機能を担う内皮細胞が傷つくこと。原因は、高血圧・高コレステロール・高血糖、そして喫煙や運動不足・偏食などの生活習慣だ。もちろん加齢も原因のひとつ。 こうなると、あらゆる人が内皮細胞を傷つけながら生きている、といってもいい。 で、この細胞が障害されると、LDLコレステロールなどの血中脂質が、内皮細胞層の隙間から内膜に侵入するようになる。
そして、LDLコレステロールを取り込むのだ。 やがてLDLコレステロールを取り込んだマクロファージが死ぬと、内膜にはコレステロールの固まり、アテローム(粥状硬化巣)ができる。 さらに、傷ついた内皮部分を補修するため、血小板が凝集して付着・凝固し、傷をふさごうとする。 こうして、アテローム硬化巣を拡充させ、内膜が厚く盛り上がっていく。 内膜の肥厚に伴い血管の内腔は狭くなり、血流が悪くなる。血圧も高くなる。 さらに、お粥のように軟らかいアテローム硬化巣が破れてしまうと、凝集してきた血小板による血栓が形成され、内腔がせばまった血管だと、閉塞してしまう。 また、形成された血栓がはがれて血中に流れだし、その先の細い血管を詰まらせることもある。これまた閉塞の発生だ。 こうした現象は長い年月、普通の人で、20年から30年もかけてひそやかに進行していく。 その間、自覚症状はない。痛みもかゆみも感じることがないから、ある日突然、わたしみたいに血管梗塞の発作が起きるまで、まったく気づくことがないのだ。
最後に自戒の念を込め、恐ろしいデータを2つ記しておく。 ひとつは年代別の血管内部の詰まり具合 *0歳代――― 0% *20歳代―― 25% *40歳代―― 50% *60歳代―― 75% もうひとつは自覚症状が現れる詰まり具合 *心臓の血管――75%詰まるまで自覚症状は何もない *脳の血管――― 90%詰まるまで自覚症状は何もない これらのデータは、実をいえば確たる裏づけがとれていない。さがしてみたが、今のところエビデンスは見つからなかった。 しかし、わたしは、当たらずといえども遠からず、の数値ではないかと思っている。人生ひと回りの還暦を過ぎたら、血管の4分の3は詰まっている。そう思って生きたほうがいい。 「ゼロ歳の時点ですでに主な動脈に『硬化』の初期病変がみられ、10歳前後から急に進んできます。30歳ごろになると、まさに“完成”された『動脈硬化』が現れるようになります」 という医師の述懐もある(*注3参照)。 動脈硬化なんて、中高年になってから注意すればいい――。 それは大いなる誤解だと、今、痛感しているわたしだ。どげんもならんアホ。 動脈硬化による血管の疾患は、本格的な梗塞症状が出たら終わりなのだ。 それに、今回のような青天の霹靂はもうごめん! 【007・脳梗塞の黒幕は動脈硬化 了】
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