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脳梗塞よれよれ日記【006】 |
MRIは検査なしになった | |
◆2017年03月14日(火) 発症6日目 | |
今日は何も予定のない一日だ。 同室の I 氏と四方山話。 I 氏は75歳。発症の経緯はわたしとは違い、左手の脱力だけ。わたしのようなふらつきや構音障害はなかったと言う。 「左腕が、切り離されたようにストンと落ちた」 異変はそれだけだから、自分で車を運転して近所のかかりつけ医まで行ったと言う。 これには驚いた。発作直後に車が運転できるほど軽い症状もあるんだな。そんな人は、わざわざ医者にまで行かないのでは? I 氏は、知りあいから聞いた話が頭の片隅にあったから、医者に行ったと言う。 I 氏の知人は、食事中に箸がポトリと落ちたことがあった。拾って握ろうとしたが、また落ちてしまう。おかしいと思ったのに、すぐに異常が収まったので医者には行かなかった。ところが、それからしばらくして脳梗塞の発作で倒れてしまった。 「あの時、医者に行っていれば……」 そんな話を以前に聞いていた。だから I 氏は念のため近所の医者に行ったそうだ。 「そうしたら、医者はすぐに救急車を呼び、即、入院だよ」 なるほどなあ。餅は餅屋だ。ささいな症状から脳梗塞を疑い、間髪を入れずに救急車を呼ぶなど、「時間との戦い」という脳梗塞の本質をよくわかっている。 それにしても、予兆ともいえる初期症状には、人によってかなりの違いがあるようだ。たぶん梗塞の場所によるのだろう。こればかりは運しだいということか。 「お互い、軽くてよかったね」 今は、二人ともなんの症状もない。会話もはずもうというものだ。 空いた時間は話しをしたり資料を読んだり、疲れると横になってテレビを見る。体がだんだんなまってくるのがわかる。 午後、カミさん来る。長女、頼んだデータを持って来る。 明日の造影CTについて話すと、カミさんは、最後にMRIを撮る予定なら、今、CTを撮る必要はないのでは、と言う。 がん治療の過程で、何回CTを撮ったことか。2、30回はくだらないだろう。それをまとめて一気に浴びたら、即死するぐらいの放射線被ばくではないか? それは大げさだとしても、CTはなるべくやりたくないのはわたしも同じ。 で、カミさんが帰ったあと、MRIの予定も含めてスタッフステーションに検査内容を聞きに行った。
たまたまステーションにいたのがM主任看護師。彼女は脳神経内科で6年もやっており、ベテランだけに知識は豊富だ。 造影CTの必要性について聞くと、 脳梗塞の主原因は動脈硬化症。そのため血管内の評価はどうしても行う必要がある。その評価が出ないと治療の方式が決まらない。 造影CTは血管内の評価を行える検査法なので、やるべき検査のひとつ。 ということだ。 もちろん、MRIは診断確定のためには重要な検査だが、それを待っている間に何が起きるかわからない。 前に書いたように、わたしのペースメーカーだと、撮影できるまであと1~2週間は待たなければならない。 その間に治療を要する疾患があるかもしれず、そうなれば手当てが必要。そんな理由もあり、時間がかかりすぎるMRI検査はやらない。やらずに、造影CTなどの検査で診断を下す方針だと話す。 いつMRI検査をやるんだろうと思っていたが、結局、ペースメーカーのせいで、それはなしということに決まったようだ。 事情はよくわかった。ただし、心配もある。 これまで読んだ資料では、MRI検査は脳梗塞の確定診断には欠かせないものだという。それをやらずに診断を下した場合、信じていいものかどうか。 「MRIヌキの検査で、信頼性、正確性はどうなんですか?」 と聞くと、 「信じていいですよ」という返事。 まあ、ベテランの主任看護師が断言するのだから、問題はなかろう。 MRI問題が片づき、この際だから、もうひとつの疑問「血液サラサラ問題」についても聞いてみた。 血液をサラサラにする薬を飲むと、出血しやすくなったり、血が止まりにくくなる。そうした副作用はあるけど、脳梗塞になるよりはメリットが大きいので、薬の服用は欠かせない、と説明された。 それはわかる。でも、サラサラにする度合いを、健康な人並みに調整すればいいのでは? これがわたしの疑問だ。
たとえば、健康な人の血液が、サラサラ度100だとする。 で、脳梗塞になるほどのわたしの血液は、かなりドロドロで血栓ができやすく、それを仮に50サラサラだとする。 この場合、わたしが飲む薬は50サラのものにする。つまり、足して100サラサラ。健康な人と同じサラサラ具合になるように薬で調整するわけだ。 こうすれば、梗塞も起こらず、出血しても血が止まるから、観血手術もOK。 なにも超サラサラにしなくてもいいじゃないか。超サラサラだから「血が止まんない」になるのだから。 これに対する主任看護師の答えをまとめると。 50サラサラのドロドロ血液だけが梗塞の原因ならば、おっしゃるとおりでいい。しかし、あなたもわたしも同じ100サラサラの血液だとして、それでもあなただけ梗塞になる場合がある。 たとえば、あなたの血管に狭窄があったり、内部がでこぼこしていたり、とにかく血液が通りにくい状態になっていると、100サラサラなのに流れが妨げられ、血流の乱れが生じる。その結果、よどみができ、そんな場所では血液が超ドロドロに固まり、やがて血栓ができる。 本来なら、その欠陥血管の治療が先決だけど、それが不可能な場合、どうするか。それには、血液を150サラサラという超サラサラ状態にし、欠陥血管でもよどみができずに流れるようにするしかないでしょ。 これが超サラサラ血液による梗塞予防法ですよ。 うん、理屈はよくわかる。 だけど、それは対処療法であり、欠陥血管を治すことこそ本当の医療じゃないんですか? 欠陥血管はホントに治せないの? (キッパリと)できません。治りません。 そんなふうに言われると、もう笑うしかないやね。 しかも、欠陥血管は生活習慣病だから、そもそも生活をきちんとしていれば治療うんぬんにはいたらない、と言われると、内心ムカッとしてしまうよ。 自己責任論はわかる。反省もしている。だけど人間だもの。弱い存在だよ。 その弱さを救いとってくれるのが医療であり、医師、看護師ではないの? 脳梗塞疑いで入院なんかしていると、軽くすんでよかった、よかった、と口では言っていても、いつなんどき次の発作が起きるか、けっこう気にしている。 それなのに、治りませんと突き放されると、あ~あ、どげんもならん。 動脈硬化が進んだでこぼこ血管を、きれいさっぱり掃除する方法はないものかね。 【006・MRIは検査なしになった 了】 |
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