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‡2009年7月9日(木)
  ◆e−クリニックのサプリメント




 白血球を上げるために飲んでいるe−クリニックのサプリメントについて、質問のメールを書く。会員になると、がん治療に関する質問を受け、スタッフ医師が回答をくれるのだ。
〈メール内容〉
4月9日から下記のサプリメントを使っています。目的は「免疫力の強化」です。
★ベースセットF+ベースアップチョイス1
約3か月たちましたが、効果が実感できません。
免疫力の客観的なデータとして白血球とリンパ球を見ていますが、低い数値のままです。
★09年03月24日 白血球3900  リンパ球1450
★09年06月23日 白血球3400  リンパ球1140

私としてはリンパ球2000をめざしたいので、サプリメントのアドバイスをお願い致します。
また、サプリ以外に有効な方法があれば、それもご教示ください。
ご指導のほど、よろしくお願い申しあげます。

‡7月10日(金)
 e−クリニックから回答メールがきた。
〈メール内容〉
 おっしゃるように、今こそ自己治癒力(免疫力)をアップさせておきたいところです・・・ね。
 そのためには、まずはベース治療ということになるのですが、天然サプリメントはその1つにすぎません。もちろんサプリメントも必要ですが、食事の是正、ストレス負荷への対処そして、フィットネス(血行、自律神経バランスの是正)もしっかりとやる必要があります。特にベース治療は非常に大切です。腹式呼吸(深呼吸)、ふくらはぎマッサージ、爪もみ、温冷浴、易筋功、ツボ刺激を念入りにやってみてください。
 その上でアクティブな治療ということになりますが、メラトニンを1日に20mg摂取してみる、マイタケエキスを摂取してみる、あるいは714X治療をやってみてもいいと思います。また中医処方薬もためしてみる価値はあると思います。
 アクティブ治療方法の詳細はHPをぜひごらんください。

‡7月21日(火)
 
 eークリニックの回答を検討。
 まとめてみると、自己治癒力(免疫力)強化には、

 1・食事の是正
 2・ストレス負荷への対処
 3・フィットネス(血行、自律神経バランス是正)
  *腹式呼吸  *ふくらはぎマッサージ  *爪もみ
  *温冷浴  *易筋功  *ツボ刺激
 4・アクティブ療法
  *メラトニン摂取 20mg/日
  *マイタケエキス摂取
  *714X治療
  *中医処方薬

 などが有効のようだ。

 
◆玄米のフィチン酸問題

 玄米は白米に比べ、豊富なミネラルが含まれている。しかし、それが吸収されずに、体内を素通りして排出されてしまうとしたら、玄米を食べる意味がない。じつは、こうしたことが現実に起きているのだ。
 原因は玄米に含まれるフィチン酸という物質。このフィチン酸が、玄米中のカルシウム、亜鉛、鉄、マグネシウムといったミネラルと結びつき(キレート作用という)、大切なミネラルが水に溶けて失われないようにしている。つまり、玄米中のミネラルは、水に溶けにくい性質を持っているのだ。
 一方、わたしたちの体が吸収できる食べ物は、水に溶けやすいもの、という条件がある。となれば、玄米のミネラルは体内に吸収されることなく、右から左に便として排出されてしまうわけだ。
 水に溶けにくいのなら、ドロドロになるまで噛めばいいじゃないか――ということではないのだ。先のキレート作用は化学的な結合であり、いくら噛み砕いたからといって、フィチン酸とミネラルの結合がとけることはない。
 ミネラルなどの栄養素がほしくてわざわざ玄米を食べるのに、肝心の栄養分は体内に取り込めずに素通り。なんとも悩ましいのがフィチン酸問題なのだ。
 まず「1・食事の是正」について。
 これはおおむね今の状態でいい。玄米のフィチン酸問題が残っているので、引き続き情報を集める。また、甘いものが無性にほしくなる肉体的・心理的メカニズムをはっきりつかむこと。課題はそれぐらい。

 「2・ストレス負荷への対処」はどうだろう。
 仕事をやめたことでストレスは激減したと思う。ただし、ストレス負荷がかかったときの対処法は相変わらず下手だ。具体策を見つけること。
*落ち込んだときに聞く音楽、見る映画、読む本の選定
*落ち込んだときに行く場所の選定

 「3・フィットネス(血行、自律神経バランス是正)」について。
 これは「腹式呼吸、ふくらはぎマッサージ、爪もみ、温冷浴、易筋功、ツボ刺激」が推奨されている。 
 爪もみは実践中。腹式呼吸は必要に応じてでいいだろう。頭が痛いとき、気持ちが動転したときなどは有効。温冷浴はちょっと面倒。ツボ刺激も。易筋功とふくらはぎマッサージは、寝る前のストレッチに加えてもいい。

 最後に「4・アクティブ療法」だ。
 スタッフ医師の回答は「メラトニン摂取=20mg/日、マイタケエキス摂取、714X治療、中医処方薬」を推奨している。このなかで興味があるのはメラトニンだ。

 メラトニンについては、会員ページに次のような説明がある。

〈安西薬剤師の情報抜粋〉
 
 近年米国では、メラトニンを抗がん剤と併用すると奏功率が高まり、生存率も高まり、副作用が緩和されるというデータが得られています。まだ研究は初期の段階ですが、その現状を以下にご紹介します。

 メラトニンは脳の松果体(しょうかたい)から分泌されるホルモンです。1日の明暗周期に対応して周期性(概日リズム)を持って分泌され、睡眠と覚醒の周期をもたらします。
 メラトニンの安全性は高く、米国では睡眠誘導のサプリメントとして親しまれてきました。

 近年メラトニン(概日リズム)とがんの関係が研究者の関心を集めています。夜勤の多い人や国際便の客室乗務員(メラトニン分泌が低い)にはがんが多いこと、パーキンソン病や全盲の人(メラトニン分泌が高い)にはがんが少ないこと、乳がん・子宮内膜がん・大腸がんの人ではメラトニン分泌が低くなっていること、などが次第にわかってきました。そして実験でも、概日リズムの乱れはがんの増殖を促進すること、メラトニンはさまざまながんの増殖を抑制することが示されました。

 メラトニンは下記のようにいくつもの作用機序で抗がん作用を示すと考えられています。
1抗酸化作用:メラトニンには強力な抗酸化作用があり、また抗酸化酵素のグルタチオンやSODの産生も促します。
2免疫賦活作用:メラトニンはリンパ球・マクロファージ・NK細胞を活性化し、Th-1細胞優位を誘導し、IL-1・IL-2・ IL-6・IL-12・ TNF-α・IFN-γなどの分泌を促進します。
3リノール酸の取り込み阻害:メラトニンはがん細胞の増殖を促進するリノール酸の取り込みを阻害します。
4がん細胞にアポトーシスを誘導します。

 
 メラトニンは、臨床試験では20mg/日を夜に服用しています。
 メラトニンの安全性は高く、重篤な副作用はこれまで報告されていません。眠気、頭痛、めまい、吐き気などの報告があります。また鮮やかな夢を見ることがあるといわれています。
 リウマチなどの自己免疫疾患の方は、免疫賦活作用により症状が悪化する恐れもありますので、服用は慎重にするのが良いと思われます。

 以上のような内容が、e−クリニックの薬剤師の説明だ。
 このメラトニンは、個人輸入ができるそうだ。アメリカの医家向け専用サプリメントメーカーの「ピュア・エンキャプスレーションズ」からだ。値段は20mg60カプセル(60日分)で53・3ドル、2本セット(120日分)で99・7ドル。
 値段的には問題ない価格だ。ただ、安全性に不安が残る。e−クリニックの医師は推奨するが、全面的に信用してもいいのかどうか……。

‡8月6日(木)
 今日から9日まで4日間の夏の休暇。信州の温泉めぐりをしながら、カミさんの妹の家に行く。
 万座温泉、草津温泉、湯田中温泉。もういい、というほど温泉を堪能した。寛解2年目はテニスによる体力強化と、温泉の癒し、このふたつがメインになりそうだ。

‡8月15日(土)
 近所の小学校の休日開放コートでテニス。50代から70代の年寄連中が集まって、テニスを楽しんでいる。このところ、いい当たりがまったく出ない。力みがあるようだ。
 それもあり、土曜日のテニスがつまらない。おもしろいよりは休みたい気分のほうが強い。何かの本で、そんな気分のままやるよりは思い切ってやめてしまいなさい、と書いてあるのを読んで納得したことがあった。老後のサークル活動の秘訣だそうだ。

 
◆アメリカ直送のメラトニン
 メラトニン服用開始。次の検診まで2か月。それまでに効果が出るかどうかわからないが、白血球増加のためにやってみる。アメリカ直送のメラトニンは、代金99・7ドル、送料が25ドル。計124・7ドル。約1万2000円也。4か月分だから月3000円。ま、安いほうか。

‡8月31日(月)
 今日は台風のせいで雨。予約したコートも使えない。一日、家で過ごす。久しぶりに何もない一日だった。北からの風で、8月だというのに寒い。靴下をはかないと足先の冷えが気になる。

‡9月5日(土)
 土・日と伊東の温泉へ行く。窓なしの部屋だった。喫煙室なので、タバコの臭いがとても気になる。くつろげない。温泉は普通。提携旅館などを含めて3か所のお湯に入れるのはいい。
 安いのはいいが、日常生活を離れてくつろぐという点では、いまいちかな。安くても、もっといいところがあるはずで、下調べが大切だ。

 昭和初期の旅館・東海館の望楼がよかった。高いビルが建って眺望をさえぎっているが、建築当時の見晴らしを想像すると絶景。四方の窓から入ってくる海風がじつに心地よい。昼寝をしたら最高だろうな。

‡9月9日(水)
 たまったメールを読んでいたら、e−クリニックのこんな情報にぶつかった。

*健康情報の見極め方
 インターネットをはじめ、本、新聞、テレビ・・・にと、常に健康情報が氾濫しています。しかしその真偽は混沌としていてどれが本当の情報なのかを見極めることは至難の業といわざるを得ません。
 しかし、一人一人が健康情報(サイト)の信頼度を知る手がかりを持つことが不可欠です。そのチェック方法として、「10のチェックポイント」を提案します。できれば「10のチェックポイント」すべてをクリアしていることが望ましいですが、少なくとも項目1〜7については、そのすべてをクリアしない健康情報(サイト)は信用しないほうが賢明です。

 
*10のチェックポイント詳細はこちら
1 情報発信者、所在地がはっきりしていること
2 医師が発信者であるか、少なくとも責任を持って監修していること
3 情報発信責任者に会おうと思えば会えること
4 断定的な言い方でないこと
5 デメリット、安全性が明示されていること
6 効果に再現性があること
7 人を対象にしたデータであること
8 体験談でないこと
9 数が多いこと
10 論文になっていること

 なるほど、そのとおり。ネット情報に頼る身としては、肝に銘じておく事柄ばかりだ。ネットの世界は玉石混交だと思っているが、よりいっそう注意しなければ。ありがたいアドバイスだ。

‡10月1日(木)
 
 昼間、甘いものを食べすぎたのか、夜中にお腹が痛くなって目が覚める。3時半、我慢できずに起き出してトイレにいくが、30分たっても出ない。お腹が張って苦しく、眠れずに本を読んで朝になる。
 朝ご飯は食べたが、調子が悪いのでお昼はバナナ一本のみ。夜もバナナと梨、みそ汁だけのプチ断食。お腹が空いた。

‡10月9日(金)
 初めて参加したベテランテニス大会。まったく歯が立たず惨敗。8ゲームマッチの試合がわずか30分で終わってしまった。0-8の完敗。手も足も出ずにテニスをさせてもらえなかった。
 シングルスの戦い方を知らないとはいえ、1ゲームもとれないのはみじめ……。こうなったら特訓あるのみ。ただし、練習で疲れきらないこと。テニスの目的は試合に勝つことではなく、体力養成なのだから。

‡10月13日(火)
 朝の目覚めが悪い。どうもお腹が張った感じがして、胃に何かが残っている。寝る前に胃が空っぽになっていない。それが長く続いている。便も出きらずに残っている感じ。臭いもきついことが多い。

 腸の働きがよくない。サプリも効いていない。原因はよくわからない。最近変わったことといえば、嗜好品としての糖分の摂取が増えたこと。糖質はカロリーオーバーになりやすいが、体重に変化はないのでそれをいいわけにして食べている。これがいけないのか?

‡10月19日(月)
 
 今日は定期検査。前回の6月以来4か月目になる。
 早朝5時40分出発。がんセンター東病院へは8時前に到着。整理番号12番。採血→CTは9時前に終了。このぶんだと10時には内視鏡まで終わるかと思ったが、どっこい、終わったのは11時半だった。

 内視鏡は生検の組織採取をしなかった。つまり、問題がなかったということ。フーッと安堵のため息が出る。
 生検をするとしないでは、結果を待つ1週間のストレスが大きく違う。検査なんかするな、体に悪い、という意見も一理あると思うのは、そんなときだ。

 待合い室で清算を待っている間にジュースを飲む。貧血の原因として低血糖があるかもしれないとのことで、内視鏡の先生がいうにはジュース(糖分)を飲むといいらしい。帰りの電車では異状なし。ジュースがよかったのか、あるいは麻酔剤を半減したせいか。

‡10月26日(月)
 
 3月15日の朝日新聞の切り抜き「プロバイオティクス」を読み返した。
 「腸内では、常にある善玉菌と悪玉菌がいす取りゲームをしている状態。善玉菌がたくさんのいすを占拠して、勢力を増せるよう送り込む援軍が、プロバイオティクスです」(新潟薬科大・平山匡男教授)。

 記事では「ほどよい量を食べたり、飲んだりすれば、自前の善玉菌が活性化され、免疫力が高まるなどして、体の調子を整えてくれるという仕組みだ」と説明する。
 ただし「腸内には自前の乳酸菌やビフィズス菌があり、外から来たものは、どうもすみつきにくいらしい。役目を終えると、便とともに排出される」とある。

 「どうもすみつきにくいらしい」という記述は、『病気にならない生き方』の新谷弘実アルバート・アインシュタイン医科大学教授の見解と一致する。腸内にもともとすみついている菌を「常在菌」というらしいが、常在菌でないものは入り込めない「セキュリティシステム」がある、と新谷教授はいう。

 第1の関門は「胃酸」で、ヨーグルトの乳酸菌は、胃に入った時点で胃酸によってほとんどが殺されるらしい。
 そこでメーカーは「腸まで届く乳酸菌」を開発したと宣伝する。これもおかしな話で、では、それまでの乳酸菌含有飲料はいったいなんだったのか。
 乳酸菌が体にいいと宣伝しながら、胃に入った時点で殺されてしまい、実際はなんの役目も果たしていなかった。それを詫びるでもなく、シャーシャーと「腸まで届く」を売りにしているこの厚顔さ。
 次は腸まで届いたはいいが、常在菌からつまはじきにされてなんの役目も果たさずに便として排出されていた……なんてことになるんじゃないか。

 
 記事では「役目を終えると、便とともに排出される」とあるが、腸まで届くヨーグルトを飲んで、腸に届いた乳酸菌はいったいどんな役目をしているのか明確には説明していない。文脈では「自前の善玉菌を活性化させる」と読めるが、なぜ活性化するのかは記事からは読みとれない。作用機序の説明がないと、素人にはわけがわからない。

 というわけで、いまいち詳細が不明なまま、プロバイオティクスが一人歩きしている。e−クリニックの説明でも「いい」ということだけはわかるが、なぜかの詳細は不明。以下はe−クリニックの説明。

 「プロバイオティクスについての質問が多いので、ここで簡単にまとめておきましょう。
 プロバイオティクス(probiotics)とは抗生物質(antibiotics)に対比される言葉で、生物間の共生関係(probiosis)を意味する生態学的用語を起源としています。と言うとなんだか難しそうですが“消化管内の細菌叢を改善し、宿主に有益な作用をもたらしうる有用な微生物など”と定義すると少しはイメージしやすいかもしれません。みなさんがよくご存知の乳酸菌などが代表的なものです。

 いっぽうプレバイオティクス(prebiotics)はそれら“有用な微生物の増殖促進物質など”と定義するとわかりやすいかと思います。具体的なものとしてはオリゴ糖や繊維質などが例として挙げられます。ただ最近では、プロバイオティクス、プレバイオティクスを一緒にしてプロバイオティクスとも言われたりしています。

 ベースサプリと言えば一般的には、ビタミン、ミネラル、植物ファイトケミカルのことだということが半ば定番化しているのが現状なのですが、最近はプロバイオティクス(プレバイオティクス)もこのベースサプリに付け加えようという動きも出始めています。それはとみに腸内細菌や腸内環境の重要性が注目され話題になりつつある昨今の風潮とも符合しているのかもしれません。

 
 確かに、いくらいい食材をチョイスし、いいマルチビタミン・ミネラルを摂取していても、なおかつ腸の調子が優れない、ひいては体調が芳しくない事例は少なからず見られます。その多くはおなかがはった感じ、ガスが多い、お腹がゴロゴロいう、便秘、下痢、食欲不振など消化器の不快感を訴えています。免疫力の指標であるリンパ球数の低迷、NK活性の低迷も時には認められる場合もありますし、抑うつ症状を訴えられることもあります。

 そんな場合、プロバイオティクス(プレバイオティクス)をしばらく摂取することで意外に上記症状や検査値の改善が認められることが多いのですが、合点のいく道理なのかもしれません。

 


◆プロバイオミン

 ただ、私たちもいろいろと探してみたのですが、実際にはなかなかいいプロバイオティクスがないのですね・・・。で、やはり自分たちで作るしかないと考え、(セミナーでもお話ししましたが)ほぼ理想的なプロバイオティクスであるプロバイオミンの誕生となったわけなのです・・・」

 と、最後はプロバイオミンの宣伝で終わるのだが、プロバイオティクスがいいらしいということだけはよくわかる。

 先の新聞の記事では、食品としてヨーグルトや乳酸飲料、キムチなど発酵食品を紹介している。菌を多くとりやすいヨーグルトの場合、「効果を期待するなら、1日に100グラムくらいから始め、できれば200グラム以上」という。

 ヨーグルトに関しては新谷教授の本を読んで以来、どうも懐疑的だ。今はe−クリニックの「プロバイオミン」を飲んでいる。
 明日の診察で白血球がどのくらい上がっているか、それによってプロバイオミンの効果を判定しよう。
 e−クリニックのサプリは4月9日からで、6か月以上になる。メラトニンが8月15日からだから、2か月。このところ、腸の具合はよろしくない。白血球数まで上がっていなかったら、効果なしの判定を下さざるをえないが……。

‡10月27日(火)
 
 今日は診察。先週受けた検査の結果を聞く。いちばん心配していたのは白血球と腫瘍マーカー。白血球はまあよしとする。4000まで上がっていた。正常値下限の4500までもう一息。リンパ球は1350。これも下限の2000までもう一息、二息。
 サプリの効果はそれなりにあった、と判定してもいいだろう。

 腫瘍マーカーのSCCは1・0に下降。正常値は1・5以下で、前回がその1・5だっただけに、本当によかった!

 ほかの項目では、Hが3項目、Lが1項目。それぞれ正常値をわずかにはみ出しているだけで、心配する必要はなさそう。布施先生もまったく問題視していない。

 これで、寛解後1年6か月、治療終了後1年4か月の検査は異常なしとなった。次回は4か月先の来年2月。
 これからの4か月は、冬をつつがなく乗り切ること、なおいっそう食養生に努めること、楽しく愉快に暮らすこと――この3つを心に刻んでおきたい。

‡11月5日(木)
 時間が足りない。テニスの練習と食事の支度で、一日が終わるこのごろ。それも覚悟のうえなのだから、今の時期はテニスが仕事と思うことにした。テニスで身体を鍛え、がんを寄せつけない心身環境をつくることは、5年生存のためには非常に重要だ。

 そんな理屈をつけながら、実はテニスを極めたい、満足できるレベルまで達したい、という、それだけのことなのだが、ね。

 このところ、急に寒くなってきた。油断大敵。
 新型インフルエンザのワクチン接種も始まる。がん治療者は優先対象者になるのかどうか、要確認。季節性インフルワクチンは早めに打つこと。明日でもHクリニックに行ってみよう。ワクチンがないかも。

 新型インフルに関連し、高齢者は肺炎球菌ワクチンも打っておいたほうがいいようだ。ただ、日本では生涯に一度となっており、61歳のわたしは早すぎる。70歳とか75歳の人が対象のようだ。これは様子見。

  ◆発芽玄米
 玄米のフィチン酸問題を調べていくと、強力なキレート結合をとく方法が見つかった。それは玄米を発芽させること。
 玄米が発芽し、成長するには、たくわえている栄養分を使う。このとき、ミネラルが水に溶けない状態だと、自分自身、使えない。そこで、発芽しはじめた玄米の胚は、フィターゼという酵素をつくる。この酵素はフィチン酸を分解し、ミネラルをときはなつ働きを持っている。
 そう、発芽玄米は、フィチン酸問題を解決してくれる、今のところ唯一の方法なのだ。
 参考までに、発芽玄米の栄養価についての研究論文抜粋をあげておく。
 発芽玄米を取り寄せた。大潟村とファンケルの2種類。おいしいほうを採用する予定。ただし、無農薬栽培米ではない。値段は、今、食べている無農薬玄米よりも安い。
 無農薬か安全基準内の農薬か、心は揺れる。が、玄米と発芽玄米の栄養分の差異も気になる。しばらくは、栄養分に富む発芽玄米を食べてみる。

‡11月22日(日)
 昨日は62歳の誕生日。なのに日記を書き忘れている。いやはや誕生日といっても、この歳になると感慨も薄くなるものよ。
 62歳の朝、変な夢をふたつ見た。それを日記に書いておこうと思っていたのに忘れている。

 ひとつは他人のカバンに入っている小さなナイフを盗む夢。盗んだナイフが手から落ちたのでさがしていたら、持ち主がやってきて、そのナイフはどうしたんだ、と聞かれ、いいナイフなので同じものを買おうとつい見本で持ってきた、と苦しいいいわけをする。
 何を白々しい、盗んだくせに、と思っているのだろうが、相手はナイフを取りあげると何も言わずに去っていった。ああ、これで仲間内に盗んだことがばれるな、と思い、暗澹たる気持ちになる。……が、そうか、これは夢だ、大丈夫という思いがどこかにあって、やがて目が覚めた。

 もうひとつ夢を見たのだが、それは思い出せない。ハッピーな夢ではなかった。誕生日の朝になぜこんな夢を見てしまったのか。

‡11月23日(月)
 勤労感謝の日で休日。午前中2時間、テニスの練習。そのあと午後から小学校で老人テニス。かなり疲れた。夜は誕生日の外食。スペイン料理店で。長女が彼氏を伴ってやってきた。自分の誕生日よりめでたいことだ。

‡12月1日(火)
 
 5時半起床。今の時期は5時50分ごろにほんの少し明るくなる。55分に家を出ると、裏山に上る階段で、高幡不動の6時の鐘が聞こえる。階段を上ると東の空が少し紅くなっている。歩いているうちに夜が明け、木々の間が透明になっていく。この時間帯がいい。

 e−クリニックのサプリは4月9日から始め、約8か月がたった。しかし、この2、3か月続いているお腹の不調で、効き目に信頼がもてなくなった。今日の時点で、ビタミンE400、D、DHAの3つが切れた。補充はせずに、やめようと思う。

 今、使っているサプリは7種類。それぞれについて検討した結果(詳細はこちら)、継続するのは、eCNCRとメラトニンの2種類になった。
 ともあれ、注意深く様子を見ること。飲んでいたものをやめるのはなかなか勇気がいる。ひょっとしたら予想外に効いていたものをやめてしまったのかも……。専門家に頼りたくなるのはこういうときだ。

‡12月2日(水)
 たべ研の無農薬玄米をやめて、ファンケルの発芽玄米を買うことにした。8キロ5900円のものを2個注文。1キロ738円で、たべ研の無農薬玄米895円より安くなる。

‡2010年1月1日(金)
 午前中は年賀状書き。午後はマシン練習。今日は暖かい日和でいい練習ができた。元旦からテニスとは、病膏肓だな。

‡1月3日(日)
 今朝は5時ごろに目が覚めた。布団の中でうつらうつらしながら6時半までゆっくり休む。そのときにふと聖地めぐりの巡礼を思いついた。がんを封じ込めるための免疫力アップ作戦の一環として、病気に効く「聖地」をめぐる癒しの旅はどうだろうか。

 うん、なかなかいい。
 そうだ、がんになる前に一度だけ行ったことのある、四国お遍路旅を再開したらどうか。季節は春がいい。4月から5月にかけて、四国路をのんびり歩くのは夢のようだ。これはグッドアイデア。そうしよう!

 今年は国内で足慣らしをし、来年は海外に足をのばすのもいいな。最初は……奇跡の泉ルルドなんてどうだろう。

‡1月13日(水)
  ◆十次式
 HPを見ると「背骨の曲がりや歪みを正していくのが、十字式健康法」だという。レントゲンで、背骨が曲がっている、と診断されたわたしにはぴったりの健康法だ。HPには、以下のような紹介文が掲載されていた。
 「十字式健康普及会の施術者たちは、背骨を真っすぐにする技術を身につけています。
 この施術については、ほとんどの方に不思議がられますが、十字式健康法の創始者・安久津政人が脳生理学に基づいて開発いたしました。
 まず、背中の曲がりや歪み、骨盤のズレをチェックし、約1分ほどで背骨を真っすぐに、本来の状態に戻していきます。」





 知人から勧められた「十字式」に行ってきた。
 受付をすませたらすぐに名前を呼ばれ、あわてて待合室へ入る。上半身裸になって診察室へ。先生に背中を向け、すぐに治療が始まる。

 といっても、何をやっているかは後ろ向きなのでわからない。骨盤が左に傾いていると言われ、左の大臀筋をぐっと押される。イタタタ。
 痛みを感じるのは傾いている証拠――そんな説明だが、そこを強く押されるとだれでも痛い。スポーツマッサージで体験ずみだ。
 そのあと、ちょいちょいという感じで気合いを入れ、はい、まっすぐになった、と言われる。

 次は背骨、これもちょいちょい、はい、まっすぐ。骨盤が傾いているので、背骨が心臓を守るように曲がったそうだ。

 そして、首。ここは右側をぐっと押され、またもやイタタタ。左のリンパが少しはれているらしい。鼻か口か、どちらかが炎症を起こしている影響とか。首もちょいちょいで終わり。

 あっけない。2分もかかっていない。初回なので3500円也。2回目からは2000円。ほんとうに治れば安いものだが……。

 終わったあと、腰の重苦しさはなくなった。背中はまだ痛む。効果はありそう。来週、もう一度やってみよう。

‡1月16日(土)
 土・日と千葉の勝山へ。勝山アヴェールというプチホテル。小さな温泉宿で、客室風呂のある部屋だった。鉱泉なので沸かし湯、循環式。今年最初の温泉で、これを機に温泉めぐりのHPをつくることにした。

‡1月27日(水)
 生きがい療法実践会へ入会。メールを送る。

‡1月31日(日)
  ◆市民公開講座
 東大の安田講堂で開かれた市民公開講座に行く。各種がんの治療法や最新治療の話。中川恵一先生が司会で、各がんの権威が現状と展望を講義してくれた。直接のアドバイスは少なかったが、寛解の身としては再確認することが多々あった。

 食道がんの治療について、講演であげられた数字は、以前に調べたものと少し違って厳しいものだった。ステージV、Wの5年生存率は、わたしが調べたものより5パーセントほど低い。
 また、放射線治療後の再発時に行う救済手術はリスクが高い。通常の手術より10倍も危険だという。絶対に再発させないこと。改めてこころに誓う。

‡2月24日(水)
 
 4か月検診。9時から検査開始なので、朝5時起床で出発。7時45分に病院着。CT順調。内視鏡も順調。ただ胃を膨らますコップ一杯の液体が吐き気を誘う。前々回ぐらいからそうなった。それまでは朝ごはんぬきなので、おいしいとまで思ったこともあったのに。

 帰りに売店で饅頭とうぐいすパンを買って食べたら、なんだか気持が悪くなった。貧血のときの苦しさほどではないが意気消沈。細胞検査もなく上々の内容だったのに尻つぼみだ。

‡3月1日(月)
 e−クリニック通信で旅行の効能が出ていた。「自己治癒力を高める海外旅行と読書」というもの。

 時空を超えることのできる海外旅行と読書、この2項目も自己治癒力を有意に高めます。それは私たちもリンパ球数の増加や、がん患者さんの予後追跡調査などでも確認しています。しかも、読書も海外旅行も、時空を短期間(短時間)で変え、価値観を変えるのには格好の方法です。読書はもちろんですが、海外旅行も、時空を越えるツールとして、考えようによっては非常にコストパフォーマンスのいいツールだと思います。

 人が感動やカルチャーショックを受け、その感動やカルチャーショックがその人の考え方や生き方に変容を与えるほどのものであればあるほど、リンパ球数は増加します。すなわち自己治癒力が有意に高まると私は考えています。

 このような事実を踏まえて、がん患者さんにはもちろん、慢性疾患の方、あるいはストレス負荷の多い方には、1つの提案として読書や海外旅行をお勧めしています。

 慢性的な疾患をかかえている方は、その根本の1つには何か心の問題、あるいはストレス負荷を潜在的に持っていらっしゃるように思われます。それは本人もなかなか気づきにくい部分だと思いますが、その気づきにくい部分を価値観の変化が示現するのかもしれません。おそらくは心の奥底の能動的な内面の変化が、身体環境を変えるのではないかと私は推察しています。

 いずれにしましても、読書や海外旅行が私たちにもたらすしばしの異時空へのトラベルが何らかのプラス効果を私たちの心身に及ぼすことは間違いのないことでしょうし、自己治癒力を著明に高めるツールとして活用しない手はないと思います。

 海外旅行ではないが、四国のお遍路旅は、やはり実行しよう。

‡3月2日(火)
 
 布施先生の診察。結果はすべてOK。先生も上機嫌で応対してくれた。6月の検査もこんな調子なら、寛解2年目も無事にクリアなのだが。ま、あまり先走らないこと。

 CTと内視鏡で診られない部分、前立腺と大腸だけは注意するようにとのこと。大腸に関しては4月に内視鏡の検査を受けようと思っている。

 懸案の白血球もなんと5000になっていた。3か月前の4000から一挙に正常値の範囲に入り、しかも予想もしなかった5000という数値にびっくり。4500から4600ぐらいいけば御の字と思っていた。

 ともあれ今回の検査で、ようやく肩の荷が下りたというところだ。この生活の延長線上に5年生存がある。より徹底して養生の道を探求すること。食事、サプリ、免疫力アップ、いずれもまだまだだと思っている。僥倖に恵まれただけ。さらなる精進をすること。

‡3月4日(木)
 
 1月31日に開かれた、市民公開講座のときに質問した答えがネットに出ていた。

〈質問〉
 男性、62歳。再発のメカニズムと予防法。同じ病状でも再発する人としない人の違いはどこにあるのか。
〈回答〉(日月先生)
 小さながん細胞のすべてを検査で捉えることはできません。検査で捉えられたがん細胞が治療で消失しても、検査で捉えられないがん細胞が残っていることがあります。残っていたがん細胞が、後で検査で捉えられるようになったとき、再発と言います。治療後にがん細胞が残っているかいないかは、検査で捉えられなければわかりません。わずかに残った検査で捉えられないがん細胞は、自然に死んで消えてしまうこともあると考えられます。その違いはわかりません。

 再発の予防法についてはコメントなし。再発する人としない人の差は、わからないとの回答。がんの権威がそろった公開講座ではあるが、わたしたち患者がもっとも知りたいことはわからないというのが現状だ。
 頼みの綱は……なし。荒海を綱なしでどうやって渡るのか。強い思いでただ泳ぐしかない。

‡3月5日(金)
 大腸内視鏡の予約。

‡3月13日(土)
 土曜、日曜は千葉の千倉温泉へ。長女もついてきたので3人旅だった。途中、一時停止違反で切符を切られる。ああ……。どんな言い訳も通用しない。時間の無駄だった。

‡3月23日(火)
 
 過去の情報を整理していると、阿修羅というHPのドキュメントが残されていた。その中に断食の話があり、日本で唯一の公的断食道場の情報があった。それを読んでいると、道場を運営している人のコメントにぶつかった。要旨は、なぜ長続きしないか、というもの。

 そのHPの主題は断食だが、効果がすばらしいとわかっていても、道場での断食が終わると、ほとんどの人は数か月で元の木阿弥に戻ってしまう。なぜか?

 簡単にいうと、
 日常生活に戻る→ストレスの連続→道場での充実感の喪失→ストレスからの逃避→食べすぎ・飲みすぎの復活→元の木阿弥
 とまあ、こんな具合だ。(詳しい理由はこちら

 わたしのがん養生生活も2年を過ぎようとしているが、同じパターンに陥る可能性がある。このところ、明日からはちゃんとやる――と思いながら、不本意な一日を過ごすことが続いているのだ。

 自分で決めたルーチンワークを淡々とこなし、特別なこともなく一日が終わって夜がくる。静かで落ち着いた一日。
 今日一日が満ち足りて終わる充足感。そんな日が一日、一日と積み重なればいい。やがてはそれらの日々が一月となり一年となり、5年生存まで果たす。
 そんな生き方を、元の木阿弥にしてはならない。
 ストレスの対処法と充実感の補充法。スキルとして身につければ元の木阿弥にはならないはずだ。

‡3月29日(月)
 
 久しぶりにメールを開けたら I さんから連絡がきていた。H先生が舌がんで死去とのこと。ああ、そこまで病勢は進行していたのか!

 H先生と再会したのは09年の1月13日、郭林新気功の教室でだった。超能力者に治してもらった舌がんが再発したと言っていたが、いたって元気で、深刻な状態には見えなかった。3月23日死去だというから、あのときから1年2か月しかたっていない。

 舌がんを超能力者に治してもらった話を聞いたのは、わたしが食道がんの告知を受けるちょっと前だったから、07年の秋だったと思う。入院し、手術の直前までいったが、超能力者にパワーを送ってもらい、がんが消えたので手術をキャンセルした、と言っていた。
 残念ながら超能力をもってしても完治しなかったようだ。無念だっただろうが、これも定めと思うしかない。合掌。

 あらためて一日一日を充実して生きることの大切さを思った。明日のことはわからない。もしものことがあっても、一日一日を充実して生きていれば、それもまたよし、となるだろう。
 おだやかに安らかに死ねるとしたら、やるべきことはやった、悔いはない、未練はない、という心境のときだろう。うろたえたくはない。

‡3月30日(火)
 
 予約していた大腸検診の日。7時半出発。9時根津着。さて、Y胃腸科外科医院は? 住所を頼りに勘で歩いていたら、駅から3、4分のところにあった。
 外観は、マンションのワンフロアを使っているという感じ。小さな病院のようで、2階の受付に行くと、案の定、狭い待合室があるのみ。予約は午後の1時だが、早めに行き、待合室で下剤を飲みながら時間をつぶす、というやり方はできそうもない。出直してきます、と告げて根津の街に出る。

 来る途中に目星をつけておいた喫茶店で下剤を飲むことにする。9時35分開始。2時間かけてゆっくりと1800ccの下剤を飲んでいく。
 その喫茶店でずっと過ごすわけにもいかず、11時には2軒目の喫茶店へ。その店で下剤を飲みほし、寒い店だったので、散歩して体を温めることにした。

 しのばず通りを歩いていると、根津神社の案内がある。左に曲がって少し行くと境内に入る。けっこう大きな神社だった。トイレを探しつつ境内を突き抜けると、道路を隔てて日本医科大学があった。丸山ワクチンを研究・開発している大学じゃないか。こんなところにあったのか。

 偶然の出会いに驚きつつ、医科大学のトイレを借りる。
 喫茶店で4回もトイレに行き、ほとんど出つくしていたので安心していたら、ズボンを下ろそうとしたときにチョロッと出てしまった。
 あっと思ったときにはもう遅い。あわててパンツを見ると、少しぬれている。クソッ、替えを持ってきてないぞ。何があるかわからない。少しぐらい荷物が増えても、持ってくるべきだった。後悔の典型。

 パンツをぬいでズボンをはき、コンビニをさがす。ようやく赤札堂というスーパーを見つけ、一番安いパンツ280円也を購入。店のトイレではいてようやくひと安心。

 そんなこんなで時間をつぶし、1時、受付。検査着に着替えて検査開始。身長、体重、視力、眼圧、聴力、腹部超音波、血液、そして大腸内視鏡。
 身長が162.6センチに縮んでいた。いちばん高いときは166.4センチだったが、それからだと3.8センチも縮んだ。猫背が原因? あと、視力もかなり低下していた。眼鏡をはずすとほとんど見えない。

 
 検査の最後が大腸内視鏡。これが痛いのなんの、もうヤメテ! というほどの苦痛を感じる検査だった。胃の内視鏡とは雲泥の差がある。

 挿入のときはそれほどでもなかったが、少しするとお腹が張り、キュッと痛む。空気を入れて腸を膨らませているので、おならはどんどんしてもかまわない、と言われ、我慢せずにゆるめたら、空気がブブッと出た。するとお腹の痛みがすっと引く。コツがわかった。お腹が張って痛みだしたら、どんどんおならをして空気を出してしまえばいいのだ。

 とにかくお腹とお尻をゆるめて、おならが出るにまかせる。お腹が張って痛むのはそれでなんとか回避できた。

 浅い呼吸を繰り返しながら、意識はなるべく腹部から遠いところ、手の指先におく。これが痛みを和らげるコツなのだ。
 歯の治療のときに教わったやり方。歯の場合は、そこから一番遠い足の指先に意識をもっていくのだ。足の親指と人差し指を小さくこすりあわせ、その感触に注意を集中する。うまくいけば、歯から足先へ意識がうつり、歯のことを忘れられる。

 今の場合は足先よりも指先のほうが遠いので、親指と人差し指をこすりあわせながらその感触に集中していると、突然、なんの前触れもなく、キュキュッと猛烈な痛みが襲ってきた。
 イタイ、イタイッ! 思わず声が出る。
 痛いときは痛いと言ったほうがいい。なまじ我慢するとろくなことはない。以前、そんなことを本で読んでいたので、痛い、痛い、痛いと叫ぶ。
 先生は別に動揺した様子もなく、はいはい、わかりました、という感じだ。ちょっと我慢してくださいね。……我慢できないよ、イタイッ!

 
 この痛みは、お腹の張りとはまた違う。お腹をゆるめておならをしようにもそんな余裕はないし、我慢しようとお腹にウッと力を入れても関係なく痛い。身の置き所のない痛みとはこのことか。あ〜イタイ、イタイ……。と言っているうちにスッと痛みが遠のく。ハアッ。ひと息。

 腸の曲がり角で痛むようだが、また痛みますから我慢してくださいね、と言われてビクビクしていると、キュキュッと鋭い痛みが襲ってくる。
 アッッ、イタ〜〜イッ!
 はい、もう少しですよ。我慢してくださいね。
 なんべんも言わせるな、我慢できないって。内心、先生に毒づきながら、でも我慢するしかない、早く終わってくれ。

 内視鏡は奥へ奥へと入っているようだ。様子をモニターに映しだしてくれる病院もあるが、ここにはそれはない。あなたまかせで、ひたすら我慢。痛くならないようにた、だただおならを出し続ける。
 家に帰ってカミさんに話したら、恥ずかしいとのたまうが、なに、空気が出ているだけだよ、恥ずかしくもなんともない。それより空気がたまってお腹が痛むほうが、よっぽど我慢できない。

 こうして、3、4回、猛烈な痛みに襲われながらも、無事、挿入終了。ようやく最奥部まで達し、あとは抜いていくだけになった。
 挿していくときにも観察するが、抜くときにもう一度観察するという。空気を抜きながらゆっくりと抜いていく。

 こうなると安心。先生と話す余裕も出てくる。どうやら切り取るべき大きさのポリープもないようだし、ひと安心。ただ、最後の最後、いぼ痔の可能性が見られると言われた。いぼ痔は勘弁してほしい。ただ、なるかもしれないという初期の初期の話なので、心配することはないらしい。

 こうしてようやく大腸検診が終わりました。あ〜ツラカッタ。
 検査料=自費1万6500円。健康保険の補助1万5000円。

‡4月24日(土)
 土曜、日曜と山梨の温泉へ。温泉は普通。とりたてて書くこともなし。

  ◆横溝正史の家と色紙


 ホテルのすぐ近くに横溝正史の家(執筆に使っていたもの)を移築した記念館があったので見学。8畳+6畳の部屋、その裏側に細長い部屋がある。台所かと思ったら、書庫だった。執筆部屋の裏が書庫。理想的な環境じゃないか。

 色紙が飾ってあった。
 「謎の骨格に論理の肉附けをして浪漫の衣を着せましょう」
 さすがに推理小説の巨匠だね。うまいことを言う。ちなみに巨匠は、結腸がんで死去している。

‡4月26日(月)
 半年ぶり、2回目のベテランテニス挑戦。京王テニスクラブ。コート環境はいい。かなり広いテニスクラブだ。
 結果は、前回とまったく同じ。0-8の30分で終了という、情けない負け方。前回よりうまくなっていると思っていたのに、1ゲームもとれずに、あっという間の試合だった。
 落ち込む。半年間の進歩が感じられないのがいちばんつらい。あ〜あ、やる気なくした。

 2回戦を観戦。わたしが30分で負けてしまった相手は、2回戦でも粘り勝ち。食堂で昼飯を頼んでいるところに、その彼がやってきた。元体育教師。テニスを始めたのは36歳。スクールに8年通ったそうだ。で、毎日トーナメントに出てコテンパンにやられ、それからシングルスにのめりこんだ。以来14年、シングルス一筋でやってきたと言う。

 どうすれば勝てるか聞いたら、練習しかありません、とごくごくまっとうな答えが返ってきた。テニスクラブに入って練習を重ねるのが一番。思ったよりお金はかからないから、という。勝ちたければ、要、検討だな。

‡5月3日(月)
 
 夕方、長女の彼の両親と会食。
 父66歳(昭和18年生まれ)、母64歳(昭和21年生まれ)で、わたしより数年上の世代。お父さんは趣味人間のようで、以前はどうか知らないが、今は人生を楽しんで生きているようだ。

 養子に入り、義理の親父さんの死亡で食うに困らないお金が相続できた、と内緒話をしてくれた。たぶん、隣の奥さんは聞き耳をたて、あとでそこまで話す必要はないとケンカになったかもしれない。
 わたしにしても、初対面で声をひそめてそんな話を聞けるとは、思ってもみなかった。型破りな人だ。

 58歳で早期退職。以後は、テニス、囲碁、将棋、韓国語独習、時代小説の読書、孫の相手と、趣味のみに生きる年月を送ってきたようだ。

 お母さんは、名家の娘さんのようで、財産持ちの家に養子を迎えた。自分が一番という雰囲気を醸すのは無理からぬことだ。上流意識が顔を出すのも当然。わたしの身近にはいないタイプなので、学べるところがあるかもしれない。

‡5月25日(火)
 
 今日から1週間、四国お遍路の巡礼旅に出る。

 初めて四国へ行ったのは2005年。がんになる2年前のこと。当時、フリーランスの編集者だったわたしは、雑誌の企画としてお遍路をとりあげようと思い、取材を兼ねてのお遍路体験だった。

 当時は、聖地巡礼という意識はなく、ましてやがんを患って、5年後に再び巡礼することになるとは思いもしなかった。

 がんになって、生と死の崖っぷちをなんとか歩いてきた。これはけっこうしんどい。もっと心が安らかになるような道を歩いてみたい。
 で、一念発起、5年前に21番で終わっていたお遍路に出てみようと思ったわけだが、今回は、第22番札所・平等寺〜第32番札所・禅師峰寺まで。5年ぶりの同行二人の旅だ。

◆同行二人の旅、初日に詣でた第22番札所・平等寺。

‡6月8日(火)
 
 『死を忘れた日本人』(中川恵一著、朝日出版社)を読み始める。この本をたたき台に死について考えてみたい。

‡6月15日(火)
 朝、メールチェックをしたら、Fさんの奥さんの訃報が入っていた。びっくり。詳しいことは不明だが、進行性のがんらしい。見つかって半年ぐらいで亡くなったようだ。合掌。
 お通夜に行くと、知った顔があちこちに。Mさんの奥さんが乳がんを患ったとは知らなかった。治療後4年目。今も半年ごとに検査していると言う。帰りはAさんの車に同乗し、国立駅まで送ってもらう。小雨。

‡6月23日(水)
 定期検査。いつもどおり、血液検査・CT・内視鏡。CTの造影剤の注射は新米の先生みたいで失敗、打ち直しになった。初めてのことだ。内視鏡もちょっと時間がかかりすぎかな。新人とは思えないが。
 帰りの電車で少しだけ気分が悪くなる。

‡7月6日(火)
 今日は、寛解2年目、最後の診察だ。
 検査の結果はすべて問題なし。無事にクリア、よかった!
 ただし、白血球が下がっている。前回の5000から急落して3600。敵もさるもの、手放しで喜ばさせてはもらえない。
 白血球の数値は、気を引き締めよ、という天啓ととらえることにしよう。

 寛解2年目が終わり、これから3年目が始まる。養生の道はまだまだ続く。巡礼の旅がそうであったように、一歩ずつ歩いていこう。急がず、休まず、歩き続けること。そうすれば必ず目標地点に到達できる。

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