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異型細胞
 昨年5月のルルド巡礼以来、半年以上も旅に出ていない。
 それどころではなかったのだ。
 ルルド巡礼が終わった翌月、6月の定期検査で、胃にがんの芽といわれる「異型細胞」が見つかった。
 
 がんは、正常細胞→異型細胞→がん細胞というプロセスで、わたしたちの体内に発生する。
 といっても、すべての異型細胞がただちにがん細胞になるわけではない。
 しばらく様子を見ましょう。これが主治医の判断だ。

 梅雨が終わり大好きな夏がきても、鬱々とした気分がつきまとう日々。食道のがんは、まだ治っていない。胃にまでがんができたら……。

 3か月後の9月に再検査。異型細胞は消失していることがわかった。
 検査結果を聞いたときは、思わず安堵のため息がもれたものだ。

 ちょっと油断するとこのざまだ。たるんでいた気を引き締めなおし、秋から冬は体力増強に邁進した。がんを防ぐには、とにかく免疫力を高めること。それには土台となる体を鍛えなければ。

 さて、年も変わったし、養ってきた体力を試してみるか。
 久しぶりに歩いてみよう。沖縄の宮古島は一周100キロあるらしい。体が縮こまる真冬の季節、南の島で筋肉をときほぐし、背中を伸ばして歩けたら気持ちいいだろう。

沖縄は雨もよう
 というわけで、1月12日、沖縄行の飛行機に乗っている。
 9時15分、地上が見えてきた。しかし、期待していた陽射しいっぱいの明るい景色はどこにもない。地表は寒々とした灰色で、いつ雨が降りだしてもおかしくない、そんな光景だった。
  那覇空港の雨雲。
 那覇で乗り換え、10時49分、宮古空港に到着。
 11時20分、リュックを背負い、空港ビルの外に出ると、どんよりとした曇り空で風も吹いている。が、寒くはない。歩きはじめたら半袖でも問題ないような気温だ。

 天気は悪いけれど、これはまるで春だな。今朝の東京とはえらい違いだ。東京でこんな曇り空なら、首を縮め背中を丸めて歩くところだ。
 リュックを背負っても、しゃんと背筋が伸び、筋肉がほぐれて、準備OK、どこまでも歩けるよ、と体が喜んでいる。
  宮古空港前の大通り。路面が少しぬれている。降るなら降れだ。あったかいし、問題はない。
  道路脇に咲くブーゲンビリアが沖縄を感じさせる。
 空港を後にして小一時間ほど歩くと与那覇湾に着く。曇天だがけっこう明るい。ただし海の色は少しくすんでいる。改めて、まぶしいほどの太陽こそ沖縄の風景をつくりだすモトなんだ、と思う。

 お昼もまわっているし、ここで今日初めての食事。ムラサキ芋をゆでてつぶし、丸めただけのもの
で、機内で朝食代わりに食べようと思っていたのだが、おなかがすかずにここまで持ってきた。

 目の前に広がる与那覇湾は波もなく静かなものだ。無人の小島が2つ、3つ浮かび、遠く対岸には細長く横たわる岬がかすかに見える。
 海も空もぼんやりしているなあ。やっぱり天気のせいだ。
  波もなく大きな湖のように静かに広がる与那覇湾。
久松五勇士
 降りそうで降らない空の下、のんびり歩く。今日の予定は10キロ少々。お遍路1200キロを踏破したわたしには、歩いたうちには入らない距離だ。
 見るべきポイントは3つ。最初の久松五勇士の顕彰碑には1時すぎに到着。
  久松五勇士の顕彰碑。五勇士とはなんとも大時代な名前だが、日露戦争の頃の出来事に由来する名前とのことで、納得。
なんでも日露戦争時、島の沖合いを通過するバルチック艦隊を発見、危険をおかして小舟で八重山通信局(石垣島)まで渡海、大本営に急報した島人5人の功績をたたえるものだという。
5本の白い柱は五勇士、上の細長いものは渡海に使った小舟=サバニを模したものだ。由来を知れば妙にリアルに見える顕彰碑だった。

テニス観戦
 ちょっと休んだだけで、次のポイントであるカママ嶺公園をめざす。ここには市営のテニスコートがあるのだ。テニス好きのわたしには見逃せない重要ポイント。

 のんきな気分で歩いていると、なんだか右足の小指がヒリヒリ痛むのに気づいた。
 指先がすれてマメができた? 時計を見ると1時39分。たった2時間歩いただけでマメ? まいったな。おまけに雨もポツリ、ポツリ。あ〜あ、ダブルパンチだよ。

 宮古島気象台をすぎると公園が見えてきた。幸いなことに雨はポツリだけで終わった。広場の向こうにあるのはテニスコートだ。コートでは島のおじさん・おばさんたちがゲームをやっていた。しばし休憩。リュックをおろして観戦する。
  平日の昼間にテニスをやっているということは、わたしと同じリタイア組だろうな。腕前は……6−3で勝てそうな気がするぜ。
バイナガマビーチ
 カママ嶺公園から歩くこと20分でバイナガマビーチに到着。ここはきれいなビーチで有名なところだが、なんと砂浜にフェンスが張り巡らされ、工事中の看板がかかっている。見るとショベルカーで砂浜を掘り返し、大きな岩を敷き並べている。観光客の少ない冬場に、自慢の砂浜を整備しようというのだろう。
 残念。冬に訪れたわたしが悪かった。
  バイナガマビーチ。工事をしている砂浜を背にして撮った。工事中の砂浜を入れると、この倍ぐらいの長さになるだろう。
写真の奥のほうに見える白い建物が宿泊予定のホテルアトールエメラルド宮古島だ。
港を見下ろすホテル
 今日泊まるホテルはビーチの目と鼻の先だ。足のマメも痛いし早めにチェックイン。511号。
 部屋から見下ろすと、まん前は平良港だ。明日の朝はここから伊良部島に渡る。写真には写っていないが、窓の左手には建設中の伊良部大橋が見えた。
  部屋からは平良港が目の前。
 夕食はホテルのレストランでステーキセット。通常3800円のところ、宿泊客割引で2600円。ずいぶん割引くものだ。
  久しぶりの肉料理はおいしかった。ちゃんとした食事は今日だけだろう。明日からは素泊まりの宿ばかりだ。
 広いレストランに客はわたしひとり。夏は満員だろうに、季節外れの観光地はどことなく寂しいものだ。レストランの外は日もとっぷり暮れ、風が強いみたいだ。明日はけっこう寒いんじゃないかねえ。

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