忘れ物はなし。部屋をひとわたり見回し、電気のスイッチを切る。部屋が薄暗くなる。まだ夜が明けき
っていない。沖縄の朝は遅いからなあ。
7時19分、チェックアウト。ホテルの外に出ると路面がぬれていた。どうやら夜の間に雨が降ったよう
だ。今日は雨がくるかもしれない。
歩いて1分で平良港。7時35分発のスーパーライナーはやてで伊良部島に向かう。
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宮古島の平良港を後に伊良部島へ。スーパーライナーはやての運賃は片道400円。往復で買うと100円引きの700円だった。
右端の大きな建物が宿泊したホテルアトールエメラルド宮古島。
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たった15分で伊良部島の佐良浜港着。サンマリンターミナルでお昼の弁当を買い、いざ出発。ここの路面もぬれている。雨の確率大だな。空は文字 どおりの曇天。
港からほんの少し歩くと、道の両側にえんえんと墓が並ぶ一帯に出た。沖縄特有の屋根付き・家の形をした墓だ。一見すると住宅と見まがうような大きく立派な墓もある。
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家の形をしているので屋形墓というらしい。
ちなみに、沖縄の墓といえば、亀甲墓が有名。これは、亀の甲羅のような石屋根が特徴で、島のあちこちで見かけた。 |
1時間歩いて大和ブー大岩に着いたところで、雨が降ってきた。激しくはないが雨支度をする。カメラも防水仕様のコンパクトなものに替える。一眼レフのニコンはリュックに収納。本当なら2台も持ち歩きたくないのだが、大事なニコンをぬらすわけにもいかないし、こればかりはしかたがない。
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道路脇にそびえる大和ブー大岩。高さは約15メートル。案内板の地図にはここから牧山展望台まで行く近道が描いてあったので、岩の右手に見える林の中に入ってみた。
たしかに舗装された小道がある。しかし、進むほどに草や枝が張りだし、歩きにくくなる。ジャングルのような密林の中には別れ道もたくさんあり、歩いているうちにどこに向かっているのかわからなくなる。20分ほど歩いたところでついに断念、引き返す。急がば回れ、だった。 |
牧山展望台への近道をあきらめ、元の道路に戻って、降ったりやんだりの天候の中、10時前に展望台への分岐道に到着。道路脇の案内標識を見ながら、さて、どうしたものか……。
結局、展望台はパスした。ここから1時間かかるうえ、こんな天気では眺望は望めない。またの機会ということでそのまま直進する。
少し歩くと、なにやら工事をしている。伊良部大橋の工事現場だった。だいぶできてるようだ。警備のおじさんに聞いたら、完成までにあと2年かかるそうだ。
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今日は工事車両の出入りも少なくてヒマそう。2年後には立派な橋が完成するそうなので、できあがったら車で海を渡ってみたいものだ。 |
工事現場を過ぎると、あとはひたすら204号線を歩くのみ。雨はやんだ。
ときおり車が通るだけで、人にはまったく出会わない。道は歩道と車道が分かれ、ヤシ並木もあって立派だが、まわりはサトウキビ畑が続く単調な風景だ。
収穫期のサトウキビは人の背丈を越え、ススキに似た穂をつけている。細い道だと、まるでやぶの中を歩いているようで、見通しは悪い。ときおり現れるカボチャ畑が唯一のアクセントだ。
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歩道に植えられているヤシ。名前はマニラヤシというらしい。熟した実がついていた。赤い実をもいでみたが食べられそうにもない。投げ捨てるとゴムまりのようにはずんでいった。
ちなみに、道路の左側の茂みは収穫期のサトウキビ。まるで雑草のようだが、こんな風景が道の両側にえんえん続くと、歩いていてもちっとも楽しくない。 |
晴れていればまだしも、雨でびちょびちょの路面、ススキもどきが連なるだけの単調な風景、少々ウンザリしたころ、渡口の浜に到着。11時5分。
浜への入口には海の家があり、軽食の看板をかかげて営業中だった。わざわざ重い弁当を用意してくることはなかったなあ。
海の家の脇から浜辺に降りる。うわ〜ぁ、これはすばらしい! 曇り空でも目に痛いほどの白砂が広がっている。
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伊良部島の渡口の浜は、宮古島の前浜ビーチと甲乙つけがたいほどのすばらしさだった。晴れていればもっと色鮮やかな白とブルーが見られたのに、それだけが残念だ。 |
砂浜の木陰にビニールシートを広げて早めの昼食。朝食は昨日の残りの芋タルト2個だったので、おなかはペコペコだ。
佐良浜港のマリンタワーで買ってきた「惣菜屋奥さんの弁当」がじつにうまい。本当かどうか疑っていたが、このうまさは、惣菜屋の奥さんがつくったのに間違いない。
昼食を終わり、砂浜を歩く。渡口の浜はパウダーサンドと呼びたいほどきめ細かい。その砂にポツリポツリと雨が落ちてきた。
浜伝いに歩き、伊良部島から下地島へ渡る橋のあたりまでくると本降りになった。橋を渡らずに直進すると、今日の宿まであと5キロ。下地島に渡って一周してから宿に行くと倍の10キロ。雨も激しく降ってきたし、宿に直行でもいいんじゃない。どうする……。
迷ったらゴー。見た、聞いた、感じた――の「みきかノート」なのだから、見ないことには始まらない。
橋を渡る。川ではない。海にかかった橋なのだ。
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伊良部島と下地島を結ぶ橋の上から見た海峡。ここはいちばん広いところだが、狭いところでは20メートル足らずの幅になる。
これでも海峡なんだなあ、と驚くが、上には上があり、日本最小の海峡は幅が9・93メートルだという。
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橋を渡って下地島に入ると、道の両側はサトウキビ畑が広がるだけの風景になる。
雨のせいか、作業をする人はまったく見当たらない。畑には、刈り取る前準備として葉っぱを落とされたサトウキビが立ち並んでいた。かじると甘そうなサトウキビの茎が林立している。
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やぶにしか思えない茂みも、葉っぱを切り落とすと、立派なサトウキビが現れる。 |
ようやくサトウキビ畑が終わると、道の右手に飛行場、左手は海が見えるようになる。ここまで来れば目的の「通り池」も近い。
歩いていると、帯岩と書かれた矢印の看板を見つけた。ちょっと寄ってみるか。
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道路から少し入ると鳥居があり、その向こうに大きな岩が見える。それが帯岩だった。
高さ13メートル、周囲60メートルの巨岩で、大津波によって海から打ち上げられたものだという。
以前なら信じられなかったかもしれないが、東日本大震災の惨状を見ているだけに、津波の強大なパワ―をもってすれば、こんな巨岩も楽に転がせるのだろう。
ちなみに、このとき(1771年)の津波は、高さが85メートルもあったと記録されているそうだ。 |
帯岩から10分ほど歩くと通り池に着く。ここは、下地島の観光スポットとしてはいちばん有名なところだろう。
通り池は、海のすぐそばの広い岩場にできた小さな池だ。2つの池が隣り合っているように見えるが、池と池の間はアーチ状の岩で橋のようになっており、水中でつながっているという。
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通り池。入り口から見たときに左に位置する池。手前の草が茂っている部分が、2つの池を分ける橋の役目をしている岩場。 |
地表から見ているとよくわからないが、この池にもぐると、つながっていることがよくわかるらしい。さらに池は、地下の洞窟で外海ともつながっている。ダイバーには大人気のスポットというのも、そのあたりに理由があるのだろう。
右と左に池を見ながら進むと、すぐにウッドデッキの木道になる。どうやら鍋底まで続いているようだ。しばらく歩くと、その木道が壊れている。しかたなく岩場に下りて歩き、続きの木道によじのぼる。
たどり着いた鍋底は、岩場にぽっかり開いた穴だった。底には水がたまっている。岩の向こうはすぐ海で、ここもまた海に通じている。
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左:途中で壊れている木道。台風で吹き飛ばされたのだろうか。ここから引き返すのもしゃくなので、岩場に下りて歩いた。大小の岩がゴロゴロしており、けっこうあぶない。
右:岩場にぽっかりと開いた鍋底。木道の突き当りに顔をのぞかせていた。剛の者は木道を下り、鍋の底まで行くそうだが、さすがにひとりでは危険すぎる。やめにしておいた。 |
通り池を後にほんの少し歩くと、フェンスの向こうに広々とした滑走路が見えてくる。下地島空港だ。この空港は民間のパイロット訓練飛行場だという。
歩いていると、巨大な飛行機が降下してくる。そして、飛行場に車輪をつけるものの、すぐに上昇していく。タッチ&ゴーというやつだな。初めて見た。
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海上の誘導標識に沿って舞い降りる飛行機。マニアはこうした姿が見られる訓練時間を調べてから見学にくるという。何も考えずに歩いてきたのに見られたのはラッキー。 |
下地島空港の滑走路は3000メートルもある本格的なもの。飛んでくる飛行機も巨大だ。着陸態勢に入っているから、飛行機は頭のすぐ上を通過していく。すごい迫力。
見学ツアーの観光バスが2台もとまっていた。マニアらしき若者がカメラを構えている。なかなかの人気スポットのようだ。
さてと、飛行場のまわりをぐるりと半周して、次の目的はテニスコートだ。
下地島空港から2キロほど離れたところに「さしばの里」という空港関係者の宿泊施設がある。そこには一般の人が泊まれる「オーシャンハウスinさしば」があり、付属のテニスコートがあるのだ。避寒をかね、冬場はこの「オーシャンハウスinさしば」でテニス合宿をしたい。そのための下見。
前もって調べてきたグーグル地図の空撮では、道がある……はずだった。たしかに最初はあった。が、進むほどに草が生い茂り、やがてジャングルと化してしまった。大和ブー大岩のときと同じだ。
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草を踏み分けると下は固い。道の両側から延びてきたつる草でジャングル化しているが、この草の下は間違いなく舗装道路なのだ。
引き返そうか迷ったが、プリントしてきた地図で見る限り、せいぜい200〜300メートルでちゃんとした道路に出るはずだ。強引に歩ききった。
それにしても恐るべし。沖縄の植物の生命力を痛感した。 |
この道の出口には岩が5、6個並べられ、立ち入り禁止になっていた。それなら、反対側の入り口のところも同じようにやってほしいよなあ。入り口はちゃんとした道路に思えたから、入っていったのに。
4時15分、さしばの里に到着。ANAやJALの乗員宿舎はちょっとしたマンション。それにひきかえ一般人用は公団アパートのようだった。
コートはと見れば、全面芝生の立派なグランド脇に、オムニコートが3面並んでいる。うち1面には「航空会社の優先コート」という札がかかっていた。もともとが航空関係者の施設だから文句は言えない。ともあれ、冬の寒さを逃れ、テニス三昧で過ごすには最適の環境だ。
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冬の盛りの1月、2月に、この暖かさの中で体を動かすことができれば最高だ。さぞかし免疫力も高まることだろう。
問題は、テニスの相手がいるかどうかだが、いなければいないで、ひとり練習てもいいか。とにかく寒さというストレスを感じなくてすむのが、なによりのがん養生なのだから。 |
金網越しにコートを見ながら、なんとなく疲れを感じる。もしさそわれても、今はテニスをやる気分じゃないな。雨にたたられた一日が気力を奪ってしまった。
さしばの里のテニスコートも見たし、今日は終了だ。予約してある「いなうの郷」に向かおう。
5時過ぎに佐和田の浜に着いた。ふれあい広場という海浜公園のあずまやで休憩。目の前の浜は潮が引いて、無数の岩がころがっている。これまた大津波によって運ばれてきたものだという。
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佐和田の浜は、日本の渚百選のひとつだという。夕日がきれいなのが自慢らしいが、この曇り空ではあきらめるしかない。 |
ポツリ、ポツリ、雨が落ちてきた。
本日はこれにて終了。明日に期待しよう。
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