有形登録文化財のお風呂
どうです、写真のお風呂。名前は「元禄の湯」です。いいですねえ、歴史を感じさせますねえ。ちなみに国の有形登録文化財です。おそれ多くも入らせていただきました。もちろん、文化財のお風呂なんぞは初体験です。
建築は昭和5年。大正ロマネスクの様式を用いた造りを、当時のままの姿で今日まで守りつづけてきたといいます。その努力には頭が下がりますね。5つの湯船のほかに2つの蒸し風呂があります。サウナじゃありませんよ。蒸し風呂です。
湯けむり温泉
露天めぐり
10湯―四万温泉
蒸し風呂はサウナより気持ちいい
人ひとりが入れるぐらいの小さな部屋が蒸し風呂です。中にはタイル貼りのリクライニングソファ? 背もたれの角度は固定です。この背もたれの下、床の部分に穴があいていて、温泉がふつふつとわき立っているわけですよ。で、その蒸気が狭い部屋に充満し、じんわりと体を温めてくれます。サウナのようなツンとくる暑さは皆無。温泉の蒸気ですからしっとりとやさしく体を包む感じで、超いい気持ち。
千と千尋の神隠し
レトロな雰囲気いっぱいの積善館は、名作アニメのイメージモデルになったそうです。言われればまさにこの風景を「千と千尋の神隠し」で見ましたね。
秋の雨にぬれる鮮やかな朱色の橋――慶雲橋を渡ると積善館の本館。元禄4年から受け継がれ、現存する日本最古の湯宿建築ということです。ちなみに「千と千尋」では、赤い橋の向こうに煙がもくもく出ている湯屋がありました。
左の写真は本館と山荘をつなぐ浪漫のトンネル。これまた「千と千尋」に出てくる、不思議の街へ続くトンネルとイメージが重なりませんか。
また来たい湯治宿
温泉というのは元来、湯治が目的だと思います。病んだり傷ついたりした体を癒すために、心身を開放してお湯につかる――。温泉の発見譚で、傷ついた獣や鳥が湯あみをしているのを人間が見つけ、どれどれ、わしもひとつ……とお湯につかったのが起源という話が数多くあります。
積善館の本館はそうした湯治宿として使えるそうです。ただし、冷房なし、部屋にバス・トイレはなくて共同、布団の上げ下げは自分で、となります。実にいいですねえ。今度はぜひ湯治を目的に、ひと月ほど滞在したいものです。
露天の杜の湯(上)のほかに、岩風呂(左)や山荘の湯(右)など、いろいろな温泉を楽しみました。