ペースメーカーの憂鬱 【032】 メインテート錠の効力 |
032 ♥ 2017.01.10 今日は予約してあったT病院の循環器内科へ行く。ペースメーカーのチェックではなく、服用しているメインテート錠が切れるので、再処方の通院だ。 薬の処方が目的なので、問題がなければすぐに終わる。ただ、この日はそうはいかない。相談したいことがあった。 というのも、毎日、午前中に測っている脈拍が、12月はずっと「50/分」という低い値で推移したのだ。数えてみると、28日の測定(3日忘れた)で、「50」という同じ数字が19日も並んでいる。じつに67.8%にもなる。 「50/分」ですぐに思い当たるのは、「レート 50~130」というペースメーカーの設定数値だ(第026回で説明)。 つまり、わたしのペースメーカーは、自脈が50以下の除脈になる(あるいは自脈がなくなる)と、レート50でペーシングする設定になっている。 それを考えると、1か月で19日も測定された50/分という脈拍は、自脈ではなく、ペースメーカーによる「ペーシング脈」と考えたほうが合理的ではないのか。 もしそうだとするなら、ペースメーカーはきちんと機能しており、ノープロブレム。喜ぶべきことで、問題にはならないじゃないか。 ところが、そうもいかないのだ。 ここで問題にしたいのは、「脈を抑えるため」に服用しているメインテート2.5mg錠の存在だ。もし、メインテート錠を飲まなければ、自脈が50を切ることはないのでは? つまり、メインテート錠が効きすぎているのでは? という疑問である。 自脈が50以上あれば、ペースメーカーは稼働しない。したがって電池も使わない(これが最重要)。だったら、自脈50以上を保つように、メインテートを減量したら? 普通、成人男性の脈拍は70/分とされている。しかるに、メインテートを飲みはじめた7月以降は、50台がほとんどを占め、たまに60台が出て、今日は珍しいなと思うと、アッ、朝ごはんのあとに飲み忘れた、という始末。 ちなみに先月(12月)は、28日測ったうち60台は一度もなく、月平均は「51・14」という低い脈だった。 とにかくよく効く薬という印象は、飲みはじめてすぐに抱いた。しかし、効きすぎてペースメーカーを作動させてしまうのは、本末転倒という気がしないでもない。 だいたい、体は必要だから脈を高くするのであり、わたしの場合、どんな必要性があるのか、何が原因で脈が高いのか、また、脈が高いと困ることがあるのか、さらに人より速く脈が上昇するとは、そもそもどんなデータから導きだしたのか。 手術のあと、脈が速いので抑えるための薬を出します、とY先生に言われたとき、何の疑問も抱かず、ハイ、わかりました、と返事をした。でも、今になって上記のような疑問が出てくるのは、じつは何もわかっていなかったということだ。 いかんなあ。自分でもダメだと思っているのだが、つい「依存」してしまうクセがある。相手は専門家だし、お任せすれば楽だから、深く考えようとしない。悪いクセだが、なかなかなおらない。 自分でよく考えなくちゃ、ということで、ひょっと思いだしたのが、検査入院していたとき、病院内でやっていた「エアジョギング」のことだ。 わたしがエアジョグと呼ぶそれは、なんとか「めまい」を起こしたいと思って考えたもの。それには以下のようなわけがあった。 Y先生が「脈を抑えるために薬を使う」ことにしたのは、そうしなければならない心電図があったからだ。 では、その心電図はいつとられたのか? 考えるまでもない。検査入院をしていた6月22日から29日の8日間だ。その間は24時間、ポータブル心電計を着用し、心電図を記録していた。 もともとわたしの検査入院は、めまい出現時の心電図が、ペースメーカーが必要なほどの不整脈を示しているかどうか、それを確認するのが目的だった。 確認が取れない限り、ペースメーカー手術の適応にならない。 で、困ったのは、これまでめまいに襲われたのは運動時だけということ。だから、検査入院という安静環境下で、目まいが起きるとはとうてい考えられないのだ。 最初の担当だったS先生にもそれを話した。だが、寝ている間に不整脈が出ているかもしれないし、やるだけやってみましょう。ダメだったら、強制的に調べる方法もありますから、と言われた。 先生の言う強制的な方法とは、ひとつは「運動負荷試験」。
これは「心電図の電極をつけたまま、電動のベルトの上を歩き、運動時の心電図や血圧を調べる検査」(左の写真参照。*1)だ。 検査に使うトレッドミルと呼ばれる機器は、スポーツジムで見かけるものと同じ構造になっている。 もうひとつは「誘発試験」。なるべくなら受けたくない検査だ。 というのも、この検査は、脚のつけ根などの動脈or静脈から、電極の付いたカテーテルを心臓内に挿入する。 そして、心臓を電気的に刺激し、わたしの場合は、めまい発作を誘発する。 めまいだけならまだしも、失神したらどうしてくれるんだ。検査中は意識を失わないよう、目をカッと見開いて天井をにらみつけていたことを思いだす。 それはさておき、そんなオソロシイ検査はやりたくない。そこで考えたのが、食事時以外はほとんど人がいない、病棟のダイニングルームで走ること。もちろん、走りまわることはできないので、その場足踏みならぬ、その場ジョギング、エアジョグだ。 知らない人が見たらアホみたいだろうが、本人はいたって真面目。30分もやると汗びっしょりになるくらい真剣に走った。 めまいが起きればめっけもの。誘発検査をパスできる。だから、一日に2回、午前と午後の1時間ほどをそれに当てた。が、成果はまったくなし。 土曜から日曜にかけては外泊許可をもらい、携帯型の心電計(ホルター心電計)を着け、いつもやっているテニスをやりもした。だが、こんなときに限って、激しくプレイしても、めまいの気配もない。 検査入院から手術に至る経緯は、いずれヒマなときに詳細な記録を残すことにして、先に進む。 話をメインテート錠に戻すと、効きすぎているのでは、という先述した疑問がひとつ。もうひとつ疑問があり、それは上述した検査入院中の「運動」に関するものだ。 検査入院中は担当医師がS先生。しかし、ペースメーカー手術からY先生に変わり、以後、Y先生にずっと担当していただいている。薬の処方もY先生だ。 S先生とはめまいを起こすために、自主的な運動の件も話し、相談しながら外泊テニスなど、いろんなことを試した。 もし、そのやりとりが、手術以降、主治医になったY先生にうまく伝わっていなかったとしたら、心電図を見て「この患者はときどき異常に脈が速くなることがある」と判断しはしないか。 普通は、入院患者が、汗びっしょりになるような運動をやっているなんて、だれも思わないだろう。だから、事情を知らずに心電図を見れば、この患者の脈は異常、と判断するのは当然だ。 そんな考えが浮かぶと、薬が必要と判断した根拠となる心電図を見てみたくなる。今日の診察では、疑問を聞くのと一緒にそれも見せてもらおう。 【032・メインテート錠の効力】 |
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