青 爺 残日録 ペースメーカーの憂鬱 【028】
PM手帳を読む 7 心室細動を予防するAMS


028 2016.10.25

 手帳6ページ目の最終回。
 9つ目の機能設定は、次のようになっている。

   AMS Mode(DDIR )  OFF  

 「AMS Mode」のSJM社の定義は、「心房細動・心房粗動時のペーシングモード」となっている。
 この定義から察するに、心房が「細動・粗動」になったときは、本来のペーシングモードである「DDD」が「DDIR」というモードになる、ということのようだ。

 さて、ややこしいことになってきた。まず、「細動・粗動」なるものはナニ?
 「心房細動→心房が350/min以上の頻度で無秩序に興奮している状態」
 「心房粗動→心房が250~350/minの頻度で無秩序に興奮している状態」

 上記のように、細動と粗動は、心房の興奮回数が違うだけで、本質は同じ。心房がけいれんのような状態になることを指す。脈拍でいうと、1分間に250回以上も。とんでもない脈拍数で、まさにけいれんという言葉がふさわしい。

 引用した資料は「心房細動と心房粗動 *1」というサイトのもの。このサイトの心臓アニメがすばらしい。心房のけいれんがどんなものか、まさに百聞は一見にしかずの見本になる。

 ただし、この心房細動・粗動は、症状が出たら、即、命にかかわる、ということでもなさそうだ(*2)。

 ちなみに、よく似た症状に「心室細動」がある。心房ではなく心室がけいれんするのだ。こちらは命にかかわる。
 というのも、心室は全身に血液を送りだす場所で、そこがけいれんしてしまうと、心臓がポンプ機能をなくし、血液が流れなくなるからだ。

 「日本では、救急車の到着まで平均約8.6分です。除細動までの時間が1分経過するごとに、生存率は約7~10%低下します。心臓が血液を送らなくなると、3~4分以上で脳の回復が困難になると言われています」(*3)というデータもある。

 そうした突発事態で命を救ってくれるのが「AED(自動体外式除細動器)*4」だ。
 AEDは「除細動」の機器。つまり細動を除く。イメージとしては、心臓に「ドンッ!」と大きな刺激を与えることで、けいれんしている心臓の動きをリセットし、正常な拍動に戻す――と言えばわかりやすいだろう。

 一方、ペースメーカーの「DDIR」モードは、心房の細動をどうにかしようという機能ではない。細動はそのまま放っておく。心房細動は、即、命にかかわらないから。

 コワイのは、心房の細動が心室へそのまま伝わり、心室がめちゃくちゃに動きだすことだ。もし、心室まで細動するようになったら、命がアブナイ。
 そこで、 心房頻拍検出レート(180 )min-1  を設定し、「心房で180以上の脈をセンシングしたら、心房頻拍と認識」する。

 認識したら、通常は連動して動く心房と心室が切り離され、心室は心房の動きとは関係なく、独自のレートでペーシングを行う。

 その設定が AMS基本レート(60 )min-1 だ。わたしの場合、心房が180以上の異常な脈拍数になっていても、心室は60回/分という正常な拍動になるわけだ。いやあ、ホントによくできている。仕組みがわかればわかるほど、ペースメーカーに感謝、感謝である。   【028・心室細動を予防する機能】

参考データ
*1 http://www.cardiac.jp/view.php?target=af_af.xml
*2 http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph111.html
*3 https://www.aed.omron.co.jp/revive/
*4 https://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/400/186440.html

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