青 爺 残日録 ペースメーカーの憂鬱 【024】
PM手帳を読む 3 ペーシング閾値


024 2016.10.12

 さて、手帳の5ページ目。

閾 値
 この項目では、心房と心室それぞれについて、 「ペーシング閾値」が記入されている。
 では、ペーシングとは何? 閾値とはナニ?

 調べると、「ペーシング」とは「ペースメーカーで電気刺激を与え、心臓を動かす」こと。
 そして「心臓を動かすために必要な最小の電気刺激」を「閾値」と呼ぶ。

 したがって「ペーシング閾値」とは、「ペースメーカーが心臓を動かすために必要な最小の電気刺激の値」ということ。

 これは、ペースメーカーの基本中の基本事項だと思う。だけど、入院中、医師からなんの説明もなかった。じつに残念。だからこうやって、自分で調べるハメになるのだけど。

 それはさておき、わたしの場合、心房は 「閾値電圧 」が「0.5 V」、心室は「0.3V」の数値が書き込まれている。

 この数値は低ければ低いほどいいとされる。理由は簡単。使用電圧が低いほど電池が長持ちするから。一般的には、心房・心室とも1.0V以下が望ましいとされている。

 では、閾値電圧はどうやって決める? じつはこれ、手術時に決まってしまう。
 リードを心腔内に挿入したあと、閾値電圧がなるべく低くなる場所をあちこちさがすのだ。そして、ここだ、という場所が見つかったら、リードを固定する。

 そんな面倒なことをしてるなんて、手術中のわたしはまったく知らなかった。しかも、慎重にさがしていただいた結果、0.5Vや0.3Vという低い閾値電圧になり、感謝、感謝です。

 調べていくといろんなことがわかってくる。でも、次の行にある 「パルス幅」になると、めんどうくさい。
 なんとなくわかったのは、心臓への電気刺激は、1分間に50回とか60回といった「 ごく短い時間だけ流れる電流の連続=パルス」であり、1回あたりの刺激(電流が流れる)時間を「パルス幅」で表す。単位の「ms」は「ミリ秒」、すなわち1000分の1秒。

 わたしの場合、心房・心室とも「0.4ms」と記入されている。これは「0・0004秒」だ。それだけの短時間、ペースメーカーからの電気で心臓を刺激(ペーシング)すれば、心臓はキチンと動くということ。

 この数値を見るときに重要なのは、パルス幅が大きくなるほど、電気を流している時間が長くなることを意味し、電池を消耗してしまうことだ。といって、パルス幅が小さすぎると、刺激が足りなくて心臓が動いてくれない。そのさじ加減が医師の腕の見せどころなのだろう。

 次は 「抵抗」だ。セント・ジュード・メディカル社の定義は「ペーシング時、リードを経由して心臓に流れる際の電気抵抗。単位はオーム・Ω」となる。
 それはわかった。だからナニ? 抵抗なんか測ってどうしようというんだ?

 だから素人はこまる。じつはこれ、けっこう重要なことがわかる。わたしもびっくりした。
 まず、抵抗が非常に大きくなった場合は、リード断線の可能性がある。
 逆に、抵抗が非常に小さくなったときは、リード被膜の損傷、あるいは異常短絡が起きている可能性がある。

 いずれにしても、リードに異変が起きている。
 リードの危機は命の危機。だからこの数値は、検査のたびに確認しなくちゃならない最重要の数値なのだ。

 で、わたしの数値を見ると、心房リードが521Ω、心室リードが1012Ω。
 ざっくり言って、抵抗は500Ωあたりが問題なしだという。すると、心室が少し高くない? 要厳重観察なり!

 さて、ペーシング閾値欄の最後は 「閾値電流」だ。
 これは簡単。定義は「閾値電圧でペーシングしたときに流れる電流量。単位はミリアンペア・mA」。
 心房0.9mA、心室0・3mAで、問題はなさそうだ。

 閾値項目の最後は 「心内電位」だ。
 メーカーのSJM社が答えてくれた定義は、
 「心内電位とは、自己心拍の電位波高値(センシング閾値・心内波高値とも呼ぶ)」
 というもの。なんのことやらさっぱり。

 さらに電位について追加説明があり、
 「電位(波高値)は、自己心拍時に、心臓自身電位(波高値)が自ら発生させる電気の大きさ(ミリアンペア・mA)」とされている。
 これまた、う~ん、まいった、まいった、だ。

 電話で再度の問い合わせをしたり、ネットで検索したりして、ようやくわかった。
 なんのことはない。前出の回答のかっこ書きにある「センシング閾値」という言葉が端的に表していたのだ。

 これまでの閾値は「ペーシング」に関するもの。で、この「心内電位」は「センシング」に関する閾値。
 センシング(sensing)は、文字どおり心臓の動きを「感知する」こと。ペーシングと対をなすペースメーカーの重要な機能だ。

 ペースメーカーは、心臓が自力で動いている(自己心拍がある)かどうか、常に監視している。その際、心臓が動いている、動いていない、それを判断するのがこの心内電位の値なのだ。

 心内電位は、P波=心房の電位と、R波=心室の電位に分かれている。
 わたしの数値だと、 P波=7.4mV 。だから、これ以下の数値だったら、心房は自力拍動していないと判断し、ペーシングを開始する。
 R波も同じこと。 R波=17.2mV 以下なら心室ペーシング開始。17.2mV以上なら、自己心拍があると判断してペーシングを抑制する。

 じつによくできている。不整脈の心臓をかかえたわたしには、本当の命綱だ。

ペースメーカ植込み部位
 この項目は即OK。左胸に間違いない。

交換指標
 何を交換するかというと、電池、すなわちペースメーカー本体だ。
 わたしの場合は、バッテリー電圧が2.6V以下に低下」 にチェックが入っている。交換時期はこれで判断する。2.6Vだよ。ハイ、わかりました。                                【024・ペーシング閾値】

♥ 参考データ
*ここで説明した設定項目については、詳しく解説したサイトが数多くある。参考にしたものをあげておく。
http://blogs.yahoo.co.jp/pacemaker0714/28534560.html

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