0042016.07.01

 枕元に看護師さん手書きの行動メニューがぶら下がっている。それを見ると、手術をした昨日の「ベッド上安静」が、今日は「ベッド上座位」に変わっている。
▲手術日6月30日からの行動メニュー。

 安静と座位の違い。安静はじっと寝ている、座位は起きあがって座ってもいい、ということのようだ。
 そのほか今日は「清拭、ポータブルトイレ可」とも書いてある。

 ベッド上という制約は昨日と変わらないので、今日もベッドを離れて歩くことはできない。ただ、安静から座位に変わっただけで、すごく楽になった。

 ポータブルトイレ可ということは、ウンチもベッド脇でできるということのようだが……。

 そう言われてもなあ。尿瓶には慣れたものの、ウンチはちょっとカンベンだよ。
 明日になれば「トイレ、洗面のみ歩行可」となっているので、今日のところはウンチは我慢ガマン。一日ぐらいやんなくたって大丈夫だ。

 所在なくテレビを見ていると、看護師がペースメーカーの注意事項をまとめた冊子をもってきた。ぱらぱらめくってみると、ゲッ、なんだこれは!

6.日常生活の注意点
1)運動
 退院後、特に運動の制限はありません。今まで通りの生活を続けてください。
 腕立て伏せや、鉄棒へぶら下がるなど、ペースメーカーの植え込み位置に近い筋肉を動かす運動は避けましょう。

 運動の制限はない、と書いておきながら、腕立て伏せや鉄棒は避けましょう、とはこれいかに?
 とくに腕立て伏せは、わたしが毎日やっている筋トレのメインメニューだ。こいつを禁止されたら、サルコペニアが一気に進んでしまう。

 ちなみに、サルコペニア(Sarcopenia)とは、「骨格筋・筋肉(Sarco)が減少(penia)」する「老年症候群」だ。まあ、加齢に伴う筋肉量の低下だな。

 しかし、こいつはまいった。
 還暦でがんを患い、なんとか生きながらえた。その原動力は手術でも薬でもない。己が体力。体力あったればこそ、過酷ながん戦争に勝利できた。他人はどうあれ、わたしはそう思っている。

 そこで、がんとの闘病以来、使い果たした体力の回復が、わたしの隠居仕事になった。ポイントは食いものと運動。
 1)食いものは自分で料理する玄米菜食が基本。タンパク質は魚。肉は料理しない(なるべく食べない)。
 2)運動はテニスを中心に筋トレで老化予防。
▲老化予防のテニスが、おもしろくてやめられない。
 この2本柱でがん闘病の5年を切りぬけ、次なる5年のサバイバル戦をやっている最中なのに、運動を禁止されては、まったくもって、どげんもなら~ん!

 思い起こせば、突然の失神でT病院の救急外来に駆け込み、そのまま入院。
 「不整脈だと思われるので、ペースメーカーの植込みが必要かもしれません」
 と、循環器内科のS先生に言われた。そのとき、わたしは思わず、
 「ペースメーカーを植込んでもテニスはできますか?」
 と聞いた。先生は、
 「大丈夫です。今までやってきたスポーツはほとんどできます」と断言した。

 ところがである。これが大丈夫どころではなかった。
 前述したように、腕立て伏せができない、鉄棒にぶら下がるのもダメ。また、左手で重い荷物を持ってはいけない、エトセトラ。

 病院で渡された注意書きとは別に、ペースメーカーの製造会社(セント・ジュード・メディカル社)から出されている「しおり」ももらった。そこにはさらに厳しい運動制約が。

●腕を激しく使う運動又は仕事をする方はあらかじめ担当医に相談してください。
 ぶら下がり健康器の使用およびザイルを使用する登山は避けてください。運動の種類及び程度によってはペースメーカ、ICDのリードを損傷することがあります。ペースメーカ、ICDの刺激が心臓に伝わらなくなり、場合によっては失神等を起こすことがあります。もし、身体に異常(めまい、ふらつき、動悸等)を感じた場合、ただちに専門医の診察を受けてください。
●ペースメーカ、ICDの植込まれた側の腕に非常に重い荷物を持つ等、力がかかるような動作及び運動は避けてください。
 ペースメーカ、ICDの動作に影響を及ぼし、(中略)動作及び運動を中止すれば、ペースメーカ、ICDの作動は元に戻ります。(後略)
▲ペースメーカのしおり。

 とにかく左腕を酷使する運動や動作は禁止ということ。となれば、わたしが日ごろやってきた運動のほとんどができない。

 毎日の筋トレ、週に4、5回やっているテニス、年に1回はやりたいバックパックをかついだ歩き旅、とくに今年は富士登山をもくろんでいただけに、ショック、ショック、ショック! おまけにもうひとつショック!

 「大丈夫です。今までやってきたスポーツはほとんどできます」と断言したS先生。いったい何を根拠に言い放ったのか、怒りさえわいてくる。

 ちなみに、先の注意書きでは「ザイルを使用する登山」が禁止になっている。
 それは、全体重を(左)腕にかける場合もあるので、ダメなのだろう。でも、富士登山にはザイルなど使わない。なのになぜ、わたしは富士山にはもう登れないとあきらめたのか。

 じつは、車の助手席側のシートベルト、これが非常にあぶないことと関連する。
 助手席に座ってシートベルトをする。すると、ベルトは植込まれたペースメーカー本体の真上を通るのだ。

 もし、急ブレーキや衝突事故などでベルトがギュッと引っ張られ、胸が圧迫・こすれたら、皮膚がベロリと剥けて金属のペースメーカー本体が露出する……だろう。

 重いパックパックも同じこと。かつぐと、パックの全重量をになうショルダーハーネスが、シートベルトと同じでペースメーカー本体の真上を通り、もろにペースメーカーを圧迫する。一日かついで歩いたら、絶対、皮膚が破れ、血みどろのペースメーカーが、顔をのぞかせるはず……。

 イヤだ、イヤだ、考えたくもない。
 もはや後の祭り。どげんもならん。あ~あ、憂鬱。            【004・運動禁止令】

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