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夢中で読みあさったがんの本の中で、わたしのこころに響いた文章をメモしたもの。がんとの闘いでは、これらの文章が灯台の光となり、真っ暗な道をひとり歩くわたしを導いてくれた。感謝にたえない。

がん患者学T(柳原和子/中公文庫)
*玄米とふんだんの野菜を食べることが原則。もち米とその加工品、甘いものはがんをより成長させるので厳禁。鶏肉を除く肉類、灰汁の強い山菜は禁止。(末期卵巣がん・70歳)
*生活習慣もほとんど病気前と変えましたね。……なにもしないでのほほんとしていよう、と。(同上)
*副作用のない治療というのは、やはり効果が出てくるまでに最低半年から一年はかかると考えたほうがいい。逆に、それまで身体がもたないような薬は使わないほうがいい、ということかもしれません。(同上)
*そもそも人間ががんを治そうなんて、おこがましい話です。がんになるのも人間やし、直すのも人間という気持ちでつき合っていくしかありません。いや、それが一番いいんじゃないでしょうか?(同上)

*生きがい療法(伊丹仁朗博士)
・自分が自分の主治医のつもりでがんと闘う。
・今日一日の生きる目標に打ち込む。
・人のためになることを実行する。
・死の不安、恐怖と共存する訓練をする。
・死をいやいやながら認め、現実的、建設的準備だけはしておく。

・こうした基本を繰り返し、自分の頭に焼きつける。そして毎日を笑って過ごすためにユーモアを身につける療法等を学習会で行う。

*がんを告知されたときなすべき五〇のポイント
・怯えるな
・責任感を取り戻そう
・医師に自分のがん、組織、進行度、治療法について詳しく説明を求め、質問しよう
・セカンド・オピニオンを聞こう
・がん協会に連絡しよう(日本であるなら、がんに関する本を資料として集め、知る)
・静かな気分で、自分の置かれている現実について考える。治っている人がいる。
・治療について、そのメカニズム、方法、薬の量、副作用について理解しよう
・主治医に対する信頼度を評価しよう。(信頼できないなら、その理由を考え、治療が始まる前に別の医療機関を探すこともいい)
・治療が始まる前にもう一度、みずからに問いかけよう
 「この治療がほんとうに自分にとって正しい、と信じているだろうか?」
・治療について時間をかけて何度も考えよう。誰にも決断を急がせることはできない
・決心! 決意は力だ
・インフォームド・コンセント、理解できるまで、納得できるまで徹底して説明を繰り返し聞こう。質問をしよう
・決心したら、あなたが受ける治療を信じよう
・医療チームとは徹底して話し合う
・あなたの問いに医師が答えてくれないときは別の医師があなたを助けてくれるはずだ
・あなたの経過、検査結果などの経過について確認しつづけよう
・よりすばらしい生き方(感情、精神、肉体)を探しだそう
・あなたには自分の生き方を選ぶ責任がある。注意深く、日常生活を反省しよう
・回復への自分なりのプログラムをたてよう
・煙草は絶対に禁止
・体重の増加に注意
・新鮮な果物、野菜、全粒の穀類を食べる
・毎日コップ八杯の水を飲もう
・なぜ今食べたいのか? 精神的、感情的欲求なのか、空腹なのかをチェックせよ
・自分に合った健康補助食品を探そう
・運動、そして自分に必要なリハビリを心がける
・熟睡しよう
・自分の参加できる患者団体、クラブ、サポーティンググループを探そう
・病から精神的に解放される本を読もう
・信仰心を持とう
・自分の症状に合わせて、その都度、がん闘病計画を組み立てなおそう
・独り言は寂しさ、孤独感を増すばかり、やめたい
・毎朝、その日の自分を励ます格言を選ぶ
・美しく装う練習
・副作用を最小限に抑え込むための医師との相談、研究をする
・病からのメッセージを理解しよう
・今を生きる
・遊ぶ時間を作る
・治癒力を高めるために、笑おう
・あなたの人間関係を再評価しなおしてみよう
・なぜ? という問いに溺れまい
・自分自身の規律を作り、守っていこう
・精神的な目で自分の人生を見直してみよう
・自分の精神力の成長に価値を置こう
・あなたの身体、心の声に素直になろう
・自分を許そう
・感謝の気持ちを大切に
・無条件の愛を
・他の患者たち、家族、友人たちと希望を分かち合おう

『がん患者学T』より抽出した参考データ
*郭林新気功
・中国の気功師・郭林女史が、末期の子宮がんで七回の手術に耐えながら編みだした抗がん功法。
・鼻から二度、静かに息を吸い、鼻から一度、息を吐く風呼吸をしながら、歩く。
・手や足などの力を抜き、独特の動きでなるべくは森や林、そして海や川などの近くで早朝に行うことが望まれる。
・呼吸法で安定した酸素を体内に定着させ、歩くことである程度の運動にもなり、しかも「私は気功でがんを治します」というような祈念の誓いを立てて歩くことでイメージ療法にもつながる。

*玄米菜食
・一番ちがっていたのは少食・咀嚼です。……軟弱な野菜をどうでもええんです。牛蒡、人参、玉葱、大根、蓮根、南瓜、里芋。青い葉っぱも小松菜、菊菜、大根の葉、かぶらの葉というように緑の濃い、お日様の光をしっかりと浴びて育ったものにかぎるんですね。
・食べ方も厳しく決まっていました。ご飯を口にいっぱいほうばらない。ひとくち口に入れたら、箸を置いて百回ずつ噛む。口の中で玄米が粕になっていきます。それでもさらに噛み砕く。噛むべき粒々がなくなっても、噛む。

*森下式自然療法
・現代医学を受けず、玄米と健康食品を併用して腸の活性化を図り、がんを治そうとする療法。具体的には玄米雑穀を主食に、動物性たん白質を極力減らし、野菜と海藻、野草を中心に食べる。

*サイモントン療法
・がん専門の放射線治療医師カール・サイモントンによって一九六八年に陽の目を見た。
・同じようながんを患っていながらなぜ少数の者が自然発生的な小康状態得ていくのかを観察した。結論は、「やすやすと負けてたまるか」と最悪の予測に挑戦するファイターが勝つ、と。またある者は子どもがいるから死ねない、自分がいなければ会社はやっていけない、という気持ちがある、と。
・彼の方法論では、二つの免疫を高める心理的療法があげられている。一つは患者を怒りっぽいエゴイストにすることで、感情抑圧によってできた心理学的特徴から解放する、第二は病気の治った我が身を具体的に想像することにある。(『癌の歴史』より)

*参考文献
『歩く郭林新気功で「ガン」に克つ』伊丹仁朗ほか 講談社
『がんのセルフ・コントロール』サイモントン著 創元社
『安心できるがん治療法』近藤誠著 講談社文庫


がん患者学U(柳原和子/中公文庫)
◆がん患者はなにを怒り、恨むのか――石川寛俊/弁護士
*現在の日本のインフォームド・コンセントの一番の誤りはインフォームしておけばいい、ということになっている点です。インフォームについては、医師は自分のやろとしている治療についての説明としてしかとらえてはいません。しかし、患者にしてみたら、目の前の医者がやろうとしている治療以外の方法がはたしてあるのかどうか、が知りたいのです。あるいはそもそも治療を受けなかったら、どのような結果になるのか、という予測、つまり、患者には目の前の医師がやろうとしている治療法、ほかの医者やほかの病院でやっている、またはやるかもしれない治療法、いずれの治療もやらないという少なくとも三つの選択肢があるはずです。そのいずれを選ぶのか? これこそが患者の自己決定であり、そのためにより広範に、深い情報が欲しいということでしょう。医師が自分のやろうとしている治療について副作用などを説明するのは当然のことでしかないし、それではやるかやらないのか? という二者択一しかなくなります。
*カルテ閲覧に関する患者の権利を保障する法律はありません。
*平成一二年、二〇〇〇年から、日本医師会ではカルテを患者の請求に応じて開示することになりました。
*批判は簡単です。いくらでも悪いことがあるだろう。しかし、批判は育てるために行われなければ意味がないのです。
*カルテは患者のもの、という主張ばかりがまかりとおることとなると、患者に見られることを意識したカルテ記述が行われるようになるにちがいない。

◆抗がん剤治療、その選択権は誰に?――福島雅典/京大大学院医学研究科教授
*再発するのが遅れれば遅れるほど、再発後もけっこう長く生きられる。
*がんは原発巣から順に広がってゆくわけで、がんの生物学的な基本を踏まえて、治療を考えなければいけない。抗がん剤で殺されるがん細胞の数というのは一定数で決まっているんです。すべての細胞がそれで死んでしまうわけではない。死滅しないわけです。生き残った細胞がまた、動き始める。動き始めるのにかかる時間、増殖速度がそれぞれによってちがう。たとえば、一度叩いて、半分の大きさになる。さらに叩いてその半分になる。結局、どんどん殺していって、生き残っているがん細胞もへばっていて、それ以上成長できない。成長したとしても何年もかかる。抗がん剤で殺しきれない場合には、再び必ず出てくる。だけど、生き残ったがん細胞が一〇の六乗、百万個くらいならば身体の免疫力で何とか抑え込める。十の六乗個というのは大きさで言えば耳かき一杯くらいかな。
 二ミリ以上の大きさになると、そこに血管が入ってきて一つの悪性腫瘍として大きく増殖を始める。二ミリ以下だとまだ血管が入り込んでいない。がんの性質も非常に穏やか、成長しにくい、眠った状態と考えていい。それが胡麻の大きさを超える頃になるとはっきりとした形で息づいてくる。
 だけどこれは動物実験でわかっている事実で必ずしも、人間にこれが適用できるかどうかはわかっていない。
*だけど、治癒ということにあまりこだわることはないように、僕はこの頃思い始めているんです。
 それについては医学の問題ということよりも、人生観の問題としてね。人間はいつ死ぬかわからないわけだから……。がんが治るか治らないかではなく、再発の確率が非常に高いのか、低いのか、というようなものの見方をするようにもっていったほうがいいのではないか、と。
*心筋梗塞を起こした人はもう治らないわけでしょう。でも、また起こすかどうか、それが問題なんです。起こさないようにするにはどうしたらいいのか、それは基礎療法が大きいわけです。基礎療法というのは、食事、睡眠、運動、ストレスというような生活習慣をいかにコントロールしていくのか……ということです。がんだって、大きくみれば生活習慣病の一種ですからね。
*がんについても明らかに体調と関係が深いと言えます。体内のどこかに潜んでいるがん細胞、百個か二百個が疲れたり、衰弱してくると増えはじめるかもしれない。そういうことがあると思うから日常生活の管理は重要だとは思うけれども、まだそのところはよくわかっていないんです。
*柳原 一度の治療が終わった。再発をしないように丁寧に生きよう、再発したら致死的な厳しい状態になる、という感じでいい。なのに、五年生存率という言葉があることで、本来は医学、医療の側にとっての目安でしかない言葉が、がんは五年間はがん患者でいるべきだ、という暗黙のイメージを作ってしまっている。
*がんについては騙し騙し殺していく。副作用のない状態で抗がん剤漬けにして、がん細胞が出てくるのを抑えつづける。それでなければむずかしい。
*今まではがん細胞を殺さなければいけない、という考え方だったけれど、成長させなくする、という考え方に変わってきつつある。
*シスプラチンもまたなくなる薬なんです。特別な場合以外には使わない薬になるでしょう。
*がんというのは、よほどのことがない限り再発したら、治らないと考えなければいけない。再発以後は治すことを考える治療ではなく、いかにクォリティの高い日常を続けられるか、のための治療を考えた方がいい。再発したときにいかなる治療を選択するのか、といえば一年、二年、ひょっとして五年かもしれませんが、その間、悔いのない人生を生きていけるようにいかにすべきか、という基準で考えるべきでしょう。
*抗がん剤について問題は副作用なんです。しかし、副作用がない、入院しなくてもいい、という条件さえ満足できれば受けて損はないでしょう。今では、それが可能になったんです。副作用のない抗がん剤治療はできる。一回治療を受けて効かないときには、やめていい。
*我慢して医者にいい顔する患者が一番いけないんですね。口ではなにも言わず、笑っているかと思えば、陰で悪口言うっていうのはほんとうに問題をこじらせるばかりです。あのときそう思っていたのに、ってあとで後悔しても遅いですから、自分の訴えをきちんと医師に伝えるのも患者としての務めではないでしょうか。自分のすべてを医師にゆだねるというのは、患者として無責任といってもいいかもしれません。

◆私が代替医療に与しない理由――近藤誠/慶応大学医学部講師
*私は代替医療を頭から否定していません。……ただ、(1)はっきり有効性が証明されたものがないこと、(2)効果があるなら副作用があるはずですが、それを言わないか調べていない代替医療がほとんどであること、(3)一般に値段が高く、患者さんの経済的負担が大きいこと、をもんだいにしているのです。
*柳原 わたしの入院生活の実感で言えば、婦人科がんの患者さん、とくに再発がんの患者さんにはある大まかな傾向があります。がんの手術、抗がん剤、放射線といった厳しい治療をうけたあとにもかかわらず、温泉、おいしいものずくめの退院祝いに忙しくって、その間の食生活は高たん白、高脂肪、低繊維、低ビタミン、低ミネラルというがん細胞が喜ぶものに囲まれていたらしい。便秘もそのままにしている。病院を信じているんでしょうけれど、治療をやった、退院したからもう大丈夫、と思って何も警戒していなかったっていう人が、一年以内の再発組に多いんです。医者に厳しいことを言われて怯えて必死にがんばって闘病したっていう人のほうが再発を遅らせているか、治っている。
 ……そうした手術後、化学治療後の生活姿勢のちがいが、再発の速度とかなり相関関係があるように見えたんです。手術前の身体はがんが拡大するほど疲弊していた状態にあったわけで、そこに激しい治療がたてつづけに行われる。にもかかわらず、間違ったカロリー中心、高たん白の栄養状態に戻る。しかもあまり運動はしない。また心理的な原因があったとしても、そのことを排除しないままに、元の木阿弥という暮らしをつづけてしまう。そこをもう少し、なんとかすれば再発が防げないまでも長い期間楽しい、清々しい日々が送れたんじゃないかって思ったりするんですけれど……。
 ……5年以上生きた人は、必ず、自分なりの代替療法のプログラムをやっている。
*たいていのがんの再発は、二年以内に生じ、再発してから三年以内に死亡することが多い。それゆえ五年生存していると治った、ということになるわけです。

◆開業医が進めるサイコオンコロジー――河野博臣/医師
*ただし、一つ問題がある。日本人は「私はがんです」って言い方をします。「私はがんを持っています」とは言いません。がんを持っていようがいまいが私、人間としての私は変わらずにあるということがなかなか理解されていない、それが大事なんです。
柳原 私も言います。わたしはがんです。って……。あ、そうか……。
河野 あなたはがんではありません。卵管がんを持ったあなたなんです。がんっていうもの、がんはあくまで私のなかの一つの要素なんです。要素ではあるけれど、全体ではない。だから、がんについて私という全体はコントロールできるはずなんです。がんも身の内って考えるべきかな。日本人はがんに私という全体を支配されてしまいがちなんですね。どうしようもない。それがやっぱり欧米の人とちがうってところだ。
 日本人の精神構造にかかわってくる。日本人は相手の顔見て自分の態度を変えてゆくでしょう。相手の顔を見る、気持ちを察する、というのが問題なんだね。がんになってもそうした傾向が抜けない。医療の場合にはとくに記録とかデータがすべて医師に握られているから、とくにそうした傾向が極端に出てくる。がんを持っている人間として、患者として、自分のがんを治すあらゆる可能性、治療を試し、受けていく権利があるということ。自分でそのことをはっきりと意識してほしい。医者に叱られるからというように、医者の顔を見て態度を変えるのは日本人の最もいけないところではないだろうか。
*大事なのはあなたがなんでがんになったのか? がん患者さんにとっては、自分がなぜがんになるのか? ということではないかと思っているんです。
*事前に患者の免疫値を計る血液検査をしなければいけない。MK細胞の値とTB細胞の値を計るんです。
*免疫を活性化するという療法を勧める。
*柳原 さて、最後の質問です。先生自身はがん患者になったとしたら、医療に対してどういう選択をしますか?
河野 そうだなあ。免疫力をまずチェックするなあ。それと自分の心自体にがんと闘う、いや、がんの化学治療に耐えるだけの力があるかどうかを考える。それがない場合には手術も、もちろん、抗がん剤も使いたくはない。

◆栄養学はがん治療に無力化?――中村丁次/聖マリアンナ医科大学病院栄養部部長
*水を飲むと体内の老廃物の排泄をよくすると同時に、便通をよくする意味もあります。つまり排泄機能がよくなるのです。現代人の多くは便秘に悩んでいます。一般に高脂肪食になると穀類が減ってきます。でも、便通をよくする食物繊維はじつは通常食用されている穀類には多く含まれてはいません。白米にしても、パンにしても、ファイバーは少ないのです。でも、穀類が減ると便秘になる。それはなぜかというと、穀類に入っているスターチ、つまり澱粉のなかの一部がファイバーとしての働きをするからです。
 かつてイギリスの研究者が、小腸を通過して大腸に入るところの盲腸部分の内容物を出して調べたことがあります。その結果、そのなかに未消化の澱粉がかなり存在していたことがわかったのです。これまで、栄養学では澱粉は百パーセント消化、吸収される、食物繊維は消化、吸収されない。だから、食物繊維が便通をよくし、澱粉は関係ないとされいたわけです。なぜそう考えていたかというと、消化、吸収の実験をするときに、便の量で逆算していたからです。便のなかの澱粉量を計ると、たしかにほぼ百パーセント消化、吸収されていると考えられたのです。
 ところが大腸にいく前の盲腸の内容物に、未消化の澱粉がたくさんあったという事実がわかったわけです。結局、大腸に行くまでにかなりの穀類、とくに澱粉はたしかに消化されているのですが、一部は未消化のまま大腸に送り込まれているということです。にもかかわらず便としてすべてが出てきているとしたら、大腸でも消火作業が行われていると考えざるをえません。つまり、大腸内で腸内細菌がこれらを分解してるんですよ。発酵と言います。発酵すると、澱粉から短鎖の脂肪酸が出てくるんです。そしてそれをエネルギー源として使っているし、これは酸だから大腸を刺激するのです。そして蠕動運動を促して、便通をよくしています。
 だから、古典的なファイバーも腸内細菌の素材になるけど、澱粉も素材になる。食物繊維としても作用する。
 統計的にみると、じつは世間で騒がれているほど戦後の食物繊維の摂取量は変わっていません。しかし摂取量が極端に減ったのは穀類です。穀類の澱粉は大腸でファイバーの役割を果たしていたわけです。
 難消化性澱粉と言います。未消化の澱粉が大腸に行き、その作用で腸内細菌が発酵します。この発酵作用ががんの増殖防止にもなると考えられます。
 穀類は便通をよくするためには本当に重要な役割を果たしていたわけです。穀類であれば白米でもよいし小麦でも構いません。玄米にするともっとよい。なぜなら、食物繊維そのものも入っているし、未消化な部分が白米よりもはるかに多くなるために腸内細菌の発酵も強くなると考えることができます。玄米採食というのは、そういうところで穀類の力と野菜の有効性をかみ合わせた食事療法と考えることができます。
 次に味噌です。味噌の効果というのは、別の意味があります。
 味噌のなかの大豆が発酵すると、エストロゲンの類似物質ができるということが知られるようになりました。更年期障害の症状の一つにほてりがありますが、あの症状が日本人には意外に少ないと言われています。欧米人には多いんです。それは味噌のせいではないか、と言われています。味噌を毎日のように飲んでいる人には更年期障害が少ないことを発見し、味噌を調べたのです。そしたら、大豆からエストロゲンの構造式に似ている物質が出た。同じ働きをしているのはないかと考えられています。じつはこのエストロゲンというのはがんの予防効果があることで知られています。

◆日米のがん医療現場を解読する――入江健二/医師
*ただ、免疫というのは両刃の剣ですからね。動物実験のなかでは、抗体をつくらせて、その抗体の量をコントロールできるでしょう。そうすると抗体の量が中途半端だと、がん細胞の表面を包んでしまって、外からがんを壊すような抗体が入ってこなくなってしまう。抗体にもいろいろな駿河ありますからね。逆にがん細胞を守ってしまう。エンハンストメント(促進作用)という学術用語ができているぐらいです。
*純系のマウスにがん細胞植えてやる実験で、がん細胞の数を変えて注射します。もちろん体のなかをがん細胞が回るわけです。でもある一定の数までは消えてしまう。ある一定の数以上になると定着してしまうのです。マウスの抵抗力を下回る数だったらがんとして定着しません。そういう事実から一般的に「ガンはしょっちゅうできているんだ。細胞としては出たり引っ込んだりしてて、生き物の抵抗力が弱くなると数が一挙に増え、定着してしまうのだ」と言うんですね。

◆再生――私とがん――柳原和子
*今、私の体内にあるがんは、これまでの私の身体が好きなのだ。だから増殖した。がん細胞も生命体である以上、環境の変化にもっとも弱いはずだ。がんが嫌いな身体になろう。今残っているがんの嫌いな身体は、もしかしたら別の種類のがんが好きな身体であるかもしれない。
 でも、ともかく、一回は試してみるのだ、と。
 それまでの自分をめぐる一切の心身の環境を変えてみる。
 人間関係、仕事をめぐる環境はもちろんのこと、生活の細部にいたるまで、私は具体的にプログラムを組んで、替えたのである。
*私のがんは私の身体とがん細胞との組み合わせでひとつの性格を形成しているとしたら、がん細胞の個性は変えられぬものの、私の身体の状態を変えることはできる。
*とくに腸と腎臓の排泄機能に関係する水を大量に飲み、肝臓などに関係しているという大蒜を毎日、なんらかの形で食べる。アメリカのFDA(食品医薬品局)が決めている抗がんのための食品、デザイナーズ・フードをふんだんに食生活に取り込む。


がん患者学V(柳原和子/中公文庫)
*なぜ、悲しい記録を書くのか? それも、冒頭で……。
 見ないわけにはいかないから……だ。無数の現実の悲惨さを知って、そのうえでがん患者の希望と再生、成長へとたどりつきたいと思う。それが、同じ患者仲間である私のささやかな志だ。
*がんという病に特徴を見出すとしたら第一に、その多くが無症状の段階で、実感ではなく、医療によって発見され、医療によって余命までも測られる、ということがある。……
 元気なのに、ある日突然、がん患者になっていた。
 肉体的な実感がないままに、病院という収容所に強制的に収容され、医療によって患者にされてゆく……、という印象が色濃い。
 がん患者において、病院の収容所性が突出して問題にされるひとつの理由がここにある。
 ……必要以上に敗北感と孤独に苛まれている。
 なぜだろうか?
 がんという病名が持つイメージが大きい。
*誤解を恐れずに言い換えれば、医療が原因で患者たちの不安が増幅していると言ってもいい。
*栄養士に相談を持ちかければ、あれを食べろ、これを食べろ、と勧めます。でも、グループ・カウンセリングに来ている患者たちはそうしたものを食べてはいません。
 でも、生きている。
 彼女たちは知っているのです。肉や魚などで栄養をつけ過ぎないほうがいい。なるべく、食べないほうがいい、ということを……。


防ぐ、治す 食道ガンの最新治療』(大津敦・監修/講談社)
*酒が肝臓で分解される際、アルコールはいったんアセトアルデヒドという物質に分解されます。
 アセトアルデヒドは、頭痛や吐き気など 悪酔い の症状を起こすだけでなく、食道がんの危険因子と考えられています。
*「早期ガン」とは、ガンが粘膜下層にとどまっている「表在ガン」のうち、リンパ節転移のないものをいいます。
 ガンが粘膜下層より深く達してしまうと「進行ガン」となります。
*食道ガンは、食道の壁の浅いところ(粘膜)に発生します。
 そのうち、粘膜を形成する扁平上皮から発生するガンを「扁平上皮ガン」といいます。一方、粘膜の層の内部の腺組織から発生するガンを「腺ガン」といいます。
*内視鏡的粘膜切除術(EMR)は、ガンが浅く、粘膜筋板に達していない場合の治療です。
*食道がんの治療では、放射線を単独でおこなうことは、ほとんどありません。現在では、抗ガン剤と組み合わせて、放射線化学療法として治療にあたることが一般的になってきました。
 この治療法がおこなわれるようになって一〇年あまり。いまやガンの根治を目指す治療として、めざましい進歩を遂げています。
*手術だけなら死亡率は二パーセント程度ですが、放射線化学療法をした後の手術の死亡率は、以前より低下したといっても一〇パーセントあります。
*食道ガンの手術は、大きなリスクを伴います。手術後一カ月以内に死亡する「手術死」は、経験の多い医療機関では二パーセント以下ですが、経験の少ないところでは二桁に上るといわれます。
*再発した食道ガンでも、治癒することがありますが、多くは厳しいものがあり、数か月から一年前後の余命となるのが実情です。


『私のがん養生ごはん』(柳原和子/主婦と生活社)
【イメージ療法】
*がん細胞をイメージする。
*がん細胞と闘っている自分の白血球や、免疫機構を具体的にイメージする。
*抗がん剤ががん細胞を破壊してゆくさまを具体的に絵画のように、物語のようにイメージする。
*がん細胞と闘って疲労困憊している自分の数々の臓器、組織、機能のひとつひとつに言葉で呼びかけ、語りかけ、ねぎらう。
*がん細胞が敗北してゆく物語を繰り返し、イメージする。
*5年後、友人、家族に囲まれ、祝杯をあげている姿、さらに自分が勇気をもってそうありたいと願っている暮らしを続けている姿を具体的にイメージする。


安心できるがん治療法』(近藤誠/講談社+α文庫)
*がんの治療は原則として一回かぎりでやり直しがきかない、という性質が大きく影響しています。
*そもそもリンパ節の切除が必要かについても疑問があるのです。胃がん→南アフリカのくじ引き実験→広い範囲にわたってリンパ節を切除しても生存成績に差はなく、合併症がふえるので、すすめられないという結論になりました。1988
*乳がんの「くじ引き人体実験」では、リンパ節を切除しても、リンパ節をそっくり残しても、臓器転移の出現率や生存率に変わりがないという結果がえられています。1985.1981
 ……リンパ節まで切除するのは、リンパ節に転移している場合があるからです。……それでも臓器転移の出現率が変わらないところからみると、リンパ節の転移病巣から臓器に転移するのではない、という結論がでてきます。そして、がんで死ぬのはふつう臓器転移のためですから、臓器転移の出現率が変わらなければ、生存率が変わらないのは当然の結果になります。
*なぜならば一つには、食道がんの手術を受けると、それを原因として死亡する危険性が非常に高いからです。ある大学病院からの報告では、手術による死亡は一九パーセントもありました。
*食道がんで、家庭医学書の記載を信じると後悔するもう一つの理由は、放射線治療という、別の治療法があるからです。じつは食道がんでは、手術がすぐれていて、放射線治療が劣っている証拠はないのです。この点、日本では、切除できそうな食道がんはみな切除されてしまい、治療の中心は手術になっていますが、世界をみると、むしろ放射線治療のほうが主流です。
*将来的には、医師たちが患者さんの目のまえでカンファレンスをおこなう制度にすべきです。

*がん治療では、どういう治療をうけても、生存率は変わらないのではないか、ということがあるのです。……その理由を考えてみると、結局、転移が存在するからです。……転移が存在しているかどうかは、治療の前からあらかじめ決まっているので、生き残れるかどうかも決まっているわけです。……転移は、がんが発生した臓器に治療を加えるまえに、すでに他の臓器に成立しているのです。
*転移というのは、最初にがんが発生した臓器から、がん細胞の一部が遊離して、血管などをつたって他の臓器にたどりつき、そこに定着して成立するものです。
*みなさんとしては、その時点ではじめて転移が生じたかのように思ってしまうわけです。しかし実際には、かくれていた微小な転移が増大して感知されるようになったのですから、正確には転移が顕現した、または出現した、とでも表現すべきです。
*同一部位を二度治療してはならないのは、照射された記憶がいつまでも臓器に残るからです。……正確には、記憶が残るというより、影響が残っているといったほうがいいでしょう。
*食道がんの放射線+化学治療の有効性→「NEJM」326巻1593ページ 1992 /「J Clin Oncol」15巻277ページ 1997

*食道がんにかかったら、どういう進行度でも、どういう年齢でも、手術以外の治療にしたほうがいいでしょう。


『抗がん剤のやめ方始め方』(近藤誠/三省堂  2004)
*化学治療→自分のがんが抗がん剤で治るのか、治るとしてどの程度治るのかを知っておく必要がある。

*抗がん剤の効果→渡辺亨・国立がんセンター中央病院内科医長→食道がんは「C症状を和らげる」という分類(薬理と治療 1998)
(A病気を治す B病気の進行を遅らせる)
*抗がん剤で一番問題なのは、死亡を筆頭とする回復不能な「毒性」です

*教訓
 『自覚症状がない段階で中止の決断をするしかない、と自覚しておくことが必要』です
*ダブリングタイムの表→肺がん(扁平上皮がん 84日 乳がん96日
*経口抗がん剤
 口→消化管から吸収→肝臓→全身諸臓器
 肝臓は、種々の化学物質を無毒化する処理工場で、処理効率は抜群です。したがって、5FUが肝臓で分解されてしまい、全身諸臓器へ送りだすことができないか、送りだす量が少なくなってしまいます
*放射線単独治療と化学放射線療法を比べるくじ引き試験が米国で行われました。結果、化学放射線療法のほうが生存率が良好でした(1992)
*化学療法の危険性が増す高齢者や体力がない患者の場合には、放射線治療単独にしておくという決断も必要になるでしょう
*……したがって、化学放射線療法を受ける場合には、同時併用法を選ぶのが妥当です
*強力な化学療法を行うのは、臓器転移が潜んでいる場合にそれを叩く目的もあるからです。しかし、ここで述べてきた種類のがんでは、化学療法で臓器転移を減らせるという確実なデータはありません
*放射線と併用する場合には、副作用や毒性はなおさら強くなります。たとえて言えば1プラス1が2ではなく、3にも4にもなるのです。化学療法を併用する目的は、放射線の効果を高めるだけと心得て、抗がん剤を少量併用するのが妥当でしょう
*体感できる副作用が減ったため、化学療法を続行する気になり、いきなり回復不能な毒性に遭遇する可能性が高まっているからです……一番危険なのは、副作用が軽いからと、抗がん剤の回数をどんどん重ねることです。……副作用がマイルド、QOLがいい??に惑わされないこと
*1回で副作用がひどかったら、そこでやめる。……最初から「何サイクル受ける」と決めないことです。まず1回受けてみて、がんの反応を診察・検査で確かめ、副作用を身体で感じ、毒性が生じてないかチェックするのです。……白血球減少のような副作用が強くでたり、神経症状のような毒性が出現したときには、がんの反応程度の如何を問わず、そこでやめるのが上策でしょう。

*抗がん剤は特殊な薬です。100%毒物、という特殊性があります。

*これまで日本では、進行した食道がんの治療は、食道全摘術が優先されてきました。開胸、開腹のうえ、頸部まで切開する大手術で、胃(か大腸)を胸部に吊り上げて代用食道とします。現在でも、術後1ケ月以内に、手術を受けた患者の5%(全国平均)が死亡する(=術死)という、危険な手術です。手術で死なずに退院できても、代用食道がうまく働かず、摂食障害をかかえたまま生活しなければならなくなるなど、後遺症の多い手術でもあります。


『癌の生態学』(佐藤博/ブルーバックス)
*宿主が癌細胞を異物として認識するには、人工的に癌細胞をなま殺しにできればよい。なま殺しの状態で暫く生活させ、時間をかけてゆっくり死んでもらうことである。すなわち癌細胞が「癌細胞モドキ」として生活し、宿主にとって異種たんぱく質として認識されればよい。……では、癌細胞モドキを作るにはどうしたらよいか。生体内においては、抗癌剤のきわめて適切な量が癌細胞に作用した場合に限ってできることがある。……宿主を保護しながら癌細胞の息の根をとめるためには、どうしても免疫監視を伴う生体防御機構の出番を待つより他に方法はない。……癌細胞が徐々に死滅した第二グループの生き残りラットでは、移植癌がなかなかふえない。つまり第二グループでは二回めの移植癌に対して免疫的に増殖を抑制する力が働き、癌が排除されるラットが多い、という結果が得られているのである。
*BRM剤((Biological Response Modifies 生体防御機構を強化し正常化しようとする薬)……BRM剤の作用は、一般にきわめて目立つものではなく、おだやかなものである。そして正常な宿主に対しては、本来働き得ないものである。


『わたし、ガンです ある精神科医の耐病記』(頼藤和寛/文春文庫)
*……しかも注射を刺したあとの静脈は十センチほど黒ずんできて、数週間は元にもどらない。たぶん、高濃度の抗ガン剤に触れた血管内壁が障害されるのだろう。
*ガンというのは何かの間違いで偶然ぽつりとできたデキモノというよりも、発ガンを許す体質や体調(その代表例は老化である)といった背景の問題を無視できない病態なのだ。
*そもそも最大のリスク・ファクターは加齢なのである。人も知るように「生きていることは健康にわるい」
*ガンを含む慢性難病向き食事療法の原則として、主食は玄米・基本は菜食・無精白・減塩減糖減脂肪・全体食(食材はその全体を食べる)・少食・咀嚼専念(一口数十回噛む)などが勧められ、逆に獣肉、動物性脂肪、農薬や食品添加物はまるで毒でもあるかのように嫌う。
*臨床的にガンが発病するのは、一つには正常細胞がガン化する原因(つまり遺伝子エラーの蓄積や、その修復困難をもたらしやすい要因)と、ガン細胞がどんどん増殖することを宿主が阻止できなくなる原因(抗腫瘍免疫やその他の防衛機構が破綻する要因)の両者が揃うからである。
*ふつう遺伝子レベルの障害という最初の一歩から明らかなガンとして診断されるまで、数年から数十年ほどもかかっている。平均十九年というから、わたしも知らないままずいぶん長くガンとつきあってきた勘定になる。


ヨーガに生きる中村天風とカリアッパ師の歩み(おおいみつる/春秋社)
(カリアッパ師はカルマ・ヨーガの大聖者)
*感情にとらわれたり、感覚的な衝動に見舞われた時、それから逃げようとか、打ち消そうなんてことは考えないで、一瞬、まず肛門を閉めてしまうんです。
 かっと腹をたてたり、恐ろしいと思ったような時にですよ、それを鎮めようと、たいていの人は一所懸命努力するんですが、それは、一見もっともなようでいて、これほど無駄なことはないんです。それで押さえられればいいですけど、押さえられない。
 それよりも、それはそれで放っておくんです。それで気づいたら、さっと肛門を閉める。そして同時に、お腹の下の方にぐっと力を入れる。その時、肩に力が入ったり、上がったりしてはいけないから、肩の力を意識的に抜いてやるんです。
 肛門と、お腹と、そして肩と、この三つを瞬間、同時にやるんです。同時ですよ。一、二、三と次々にやるんじゃないんですよ。一緒にやらなきゃあいけない。
 また、一瞬でいいんです。いつまでもやっていたら、第一、息ができないでしょう。一瞬、そして、またお腹の力も抜いて、もとにもどし、次の瞬間にもう一度、という具合に何度でもやるんです。どうです、いたって簡単でしょう。

*「いいか、病は病、苦しみは苦しみだ。そういう時こそ、それをよりよいほうへ引っ張ってくれるのが心ではないか」
「なぜ、お前の心を花の咲いている方へ向けないのだ。幸不幸というのは、心の向け方一つで決まるものなのだ。……」
「……お前の心の中には、お前をそうやって悲観的にさせている、もう一人のお前がいるのだが。ま、それはおいおい分かってくるだろう。とにかく、明日の朝からは、どんなに体が悪くとも、けっして口にしてはいけない。『気分がいい』とか『元気です』とか人が聞いても爽やかさを感じさせるような、そういう言葉だけを使いなさい。言葉(ルビ・マントラ)というのは神聖なものなのだ。自分の命を汚すような言葉は断じて使ってはいけない」
*……暗示というものは昼間より夜の方がかかりやすいということである。……
*そして、さらに暗示が最高度に入りやすいのは、夜、床に入ってから寝込むまでのごくわずかな間で、この時は暗示が直接的に深層部に入っていく。
*人間を生かし、心臓を動かしている、何らかの力(ルビ・エネルギー)も、この世に隈なく遍満存在している。そしてそれが体内に受けいれられた時、それは命と呼ばれるものとなる。命、すなわち大宇宙に存する一つの気(ルビ・エネルギー)が働いている間は生きているが、これが電源を断たれたと同様に働かなくなった時死が訪れる。


生きがい療法でガンに克つ』(伊丹仁朗/講談社)
*精神神経免疫学と呼ばれるこの新しい領域の研究によって、闘争心、生きる目標、生きがい、ユーモアなどは免疫力を高め、ガンの治療効果にプラスであることがわかってきた。一方、不安や恐怖、悲しみ、抑うつなどはマイナスに作用するのである。
*この生きがい療法で学習訓練するポイントがいくつかある。まず、心理学的トレーニングが免疫力を高めるという、大脳生理学のしくみを理解すること。そして、生きる目標、生きがいを発見する方法や闘争心を強める方策を知ること。さまざまな不安やマイナス感情のコントロール法、死の恐怖への対応の仕方のコツを学ぶこと、などである。
 わたしは生きがい療法は、テニス・空手・お茶・車の運転などのスポーツやお稽古ごとと同じ技術の習得だと考えている。自分の脳の免疫中枢を活発化させる技術なのである。


『がんのイメージ・コントロール法』(川畑伸子/同文館出版)
*私たちは本来、生まれながらにして健康な存在で、自然の流れに沿って生きていれば健康を維持することができるはずなのです。
*がんは、身体症状を通しての「自分の本性に還りなさい」というお告げを伝えるメッセンジャーなのです。
*私たちががんと診断された時に持つべき大切な姿勢は、がんを攻撃者としてではなく、メッセンジャーとしてとらえ、そのメッセージに率直に耳を傾け、自分の歩む道を変更することです。
*病気の反対が……ただもとの状態に戻る、「元気」だということです。これは、私たちの本質が健康であることを意味しています。
*最低五つ、自分の人生に喜びや深い充足感をもたらすものをリストに上げる」ということ。
*私たちにとって、何がよいのか」に目を向けることです。……「元気になるにはどうしたらよいか」に注意を払うのです。
*生命エネルギーを高めるのにもっとも効果的なのが、喜びや深い充足感などの幸福感がある状態をつくることだと教えています。
*がんは、ストレスの影響を受けやすいことから言っても、多くのがん患者はストレスを溜め込みやすい性質を持っていると言えるでしょう。そこで、まず自分がどのようなパターンでストレスに陥っていくかを観察することはたいへん効果的です。
*インドのヴェーダ医療では、「病気は恵みである」とはっきり定義しているほどです。
*病気になって得られたもの、つまり病気になってまで得ようとしたものはいったい何だったのでしょうか? これを知ることは病気の意味を知ることになり、あなたを本性に引き戻すよいガイドとなるでしょう。
*不安を引き起こすような不健全な解釈を健全な解釈に変える方法を学ぶ……。
*自分に優しくなるという変化を起こすとき、勇気が必要となります。
*がんは、強くて攻撃的な細胞というイメージが一般的ですが、がん細胞は、正常細胞攻撃することはありません。がんは本質的に、弱くて不安定な細胞なのです。がんは混乱して、誤った情報を得たために、本来死ぬべきタイミングで死ぬことができずに増え続ける細胞なのです。
*「ゴボウには抗がん作用がある」という言葉を耳にしたとき、「これだ!」という揺るぎない確信を得たと言うのです。
*ここで大切なことは、自分にとってしっくりくる、または心に響くものを見つけて、本気でそれに取り組むということです。
*大切なのは、死を受容しつつ、健康になる希望を持って生きる姿勢です。
*私たちにもし、「このように死を迎えたい」という理想があるなら、そのように生きることが大切になってくるのです。
*ダライ・ラマの言葉
「私たちが、穏やかに死を迎えたいと思うのは当然のことです。ほとんどの人が、そのように思って生きています。ところが、私たちが暮らすこの世の中に、たくさんの暴力が氾濫している今、そのように望みながら、穏やかな死を迎えることはとても困難なことになっています。多くの怒りや執着や恐怖が存在し、とてもイライラしている中で、穏やかに死を迎えることは非常に難しいでしょう。しかしもし、あなたが心地よく死にたいと思うのであれば、やはりそのように生きることが必要になるのです。あなたが、心に平安を持って死を迎えたいと思うなら、心の中に平安を持って、日々の生活を営むことが大切なことなのです」
*健康に取り組むときに大切なことは、自分自身が「健康になりたい」と願うこと、すなわち健康への希望ですが、その希望を抱くと同時に、「今日、死んでもいい」という、執着を手放す姿勢をはぐくむことが大切です。
*遊ぶことを忘れない
*まず、あなた自身の気分にきちんと注意を払ってあげてください。よくない気分や悪い気分のときは、自分の健康にとって悪い状況に陥っていることを理解しておいてください。私たちが気づいていなくても、気分の悪くなることを続けていると病気になってしまいます。自分たちの気分に、今まで以上に繊細に注意を向けるようにしてください。
*カウンセリングや指導を受けに行ったときは、行ったあと、きちんと気分がよくなっているかどうかを確認するようにしてください。カウンセリングを受けに行ったあと、気分が悪くなるなら、そのカウンセリングはやめるべきです。
 その他にも、気分の悪くなるようなことはたくさんありますから、お金を払ってまで気分を悪くしてもらう必要はない、ということをきちんと理解しておいてください。
*しだいに行きたくなくなってきたら、そのグループに漫然と行くのではなく、きちんと行く前と行ったあとの自分自身の気分を注意深く観察してみましょう。もし、行なったあとのほうが行く前より気分が悪くなっているようなら、そのグループには参加しないようにしてください。
*まずきちんと自分自身のサポーターになるようにしてください。完全に自分自身をサポートし、完全に自分を中心としたケアをするようにしてください。


晩年の美学を求めて』(曾野綾子/朝日新聞社)
*引退後に目指す「悠々自適」は、自己完結型でなければならない。つまり山間の庵に一人でも住める心身の能力を有することである。そしてそれは、やはり若い時から節制し、常に訓練をし続けることを条件にしている。

*非科学的かもしれないが、人間の体のしこりが、長年の心理的な抑圧、つまりストレスと関係がある、という実感は私の中にあった。……人中に出ることが嫌いな私が組織や大勢の人前で暮らすことは、つまりいささかのストレスにはなっているのだと思う。
 しかし私が癌にならなかったのは、つまり私は根本の所で見栄っ張りではなかったからだ、と思う。
 「人の世にあることはすべて自分の上にも起こり、人の中にある思いはすべて私の中にもある」と私は思っているから、なにごとにも、悲しみはしても驚かないのである。
 なにものにもおおっぴらで、なにが起きても仕方なくそれを受け入れる、という姿勢は、いわゆる「快活な」とか「ネアカ」と言われる人の特徴である。それに対して、襲いかかる運命をすべて不当なものと感じ、その不運に襲われた自分を隠そうとする人が「ネクラ」と言われる人になる。私のほんとうの「地」はネクラなのだが、私は意識的に、後天的に、ネアカになる技術を覚えたのである。
*……「人はいつ完全といえるのでしょうか。自分のありのままを自分で認めた時です。飾らず格好つけることなく、そのままの自分を『これがわたしです』と心から言えた時、その人は完全への道にあるのです」
 と前島氏は書いておられる。その不格好な自分も、そのまま使って頂いて、祭壇の石材になることは可能なのだ。
 年を取って老年になるか、病気の末に自分の死の近いことを知るか、どのような経過を辿るにせよ、晩年にこうした冷徹な目ができるとすればすばらしいことである。
*生活とは、雑事の総合デパートである。……喜んでやるのではない。むしろいやいや「ああ、面倒くさい」という呟きも漏れるのだが、人間は嫌なことをしていないと多分ばかになる。なぜなら、それが生きる世界の実相だからだ。
*どのような人も晩年まで生活と闘わねばならないのである。体が動く間は、自分で「餌」を探しに行くのが当然だ。それが動物の基本姿勢である。
*……だから晩年も感謝して明るく生きることである。いや、もっとはっきりいえば、心の中は不満だらけでも表向きだけは明るく振る舞う義務が晩年にはある。
*それよりも私は、人間は今日一日で完結する自分独自の美学があっていい、あるべきだ、と思っている。
*次の世代に言い残すことなど何もない。どの時代も、若者たちは自分で迷い、自分でどうやら答えを出す。残すとしたら知恵と技術と徳の本質そのものを残すことしかない。



空腹力』(石原結實/PHP新書)
*問題は、人間が飽食に対処する機能をほとんど持ち合わせていないことです。そのため、食べ過ぎるとさまざまな障害が生じます。まず、消化、吸収をつかさどるために胃や小腸に長時間、大量の血液が集中するので、排泄を担当する大腸や直腸、腎臓への血流が不足することになり、大便や小便の排泄が悪くなり、血液中や体内に老廃物が溜まります。吸収は排泄を妨げるのです。
 また、胃腸に血液が集中すると、骨格筋や脳、心臓をはじめ、他の器官や細胞への血液供給量が低下します。そのために、食後に眠気を感じたり、体を動かすのがおっくうになるのです。
*私たちがおなかをすかせている状態では、血液中の栄養が悪くなります。すると、白血球もお腹がすいていて、ばい菌が入ってきたり、ガン細胞ができたときなどに、よく食べるというわけです。
*われわれがお腹いっぱい食べると、血液中の栄養が多くなります。すると、白血球も腹いっぱいになってしまって、そのときにばい菌が入ってきても、ガン細胞ができていても食べなくなってしまいます。だから、私たちがお腹がいっぱいのときには、免疫力も落ちるわけです。
 逆に、私たちがお腹をすかせている状態では、血液中の栄養が悪くなります。すると、白血球もお腹がすいていて、ばい菌が入ってきたり、ガン細胞ができたときなどに、よく食べるというわけです。
*お腹がすいたと思ったときには、チョコレート、黒砂糖、ショウガ紅茶などで糖分を補うと、1分で血糖値が上がって、空腹感がなくなります。
*メタボリックシンドロームは「代謝症候群」のことですが、正確には「代謝『低下』症候群」といえるのです。若いときと同じように食べていれば当然太ることになります。
*肉、卵、牛乳、バターといった欧米食は、食物繊維が含まれていないため、便秘を誘発し、腸内に腐敗菌を増殖させます。これらの悪玉禁は腸内にアミン、アンモニア、スカトール、インドールといった猛毒物質をつくり出します。それが血液に吸収されるので、血液を汚すことになります。また動物性タンパク質の摂り過ぎは血液中の尿酸も増加させて、痛風、動脈硬化、腎障害の一因になります。
 さらには、吸収された動物性タンパク質は肝臓でタンパク質分解酵素によってアミノ酸になり、過剰分は血液に排出されます。すると、血液は酸性に傾くので、それを中和するために骨や歯からカルシウムやマグネシウムなどのミネラルを引き出します。その結果、体内のミネラルが不足してくるのです。
*老廃物を濃縮した血液が鬱血し、その結果極度に筋肉が硬直するのが凝りです。肩や首が凝ると、肩や首の血管も一緒に硬直した状態になり、血流が極度に悪くなり脳への血液補給が激減します。そのシグナルが頭痛です。
*ガン細胞が早期発見される大きさは豆粒大で、そのときにはガン細胞数が約10億個もあります。この大きさになるには、10?30年、平均で約19年かかるとされています。ですから、がんは「超慢性病」なのです。
*東洋医学ではこれらの現象は過剰な水分による体温低下と、それがもたらす水分の淀みが原因である「水毒」としてとらえます。
*黒砂糖に含まれるカルシウム量は、100グラム中約300ミリグラムも含まれていて、むしろ骨、歯の強化に役立ちます。さらに、かなり多く含まれる亜鉛には、強精作用があります。
*ニンジン・リンゴ・ジュース
 ニンジン中2本(400グラム程度)とリンゴ中1個(300グラム程度)です。これでコップ3杯程度のニンジン・リンゴ・ジュースができます。……がんの人はキャベツ50?100グラムを追加。
*ショウガ紅茶
 熱い紅茶にショウガ汁5?10滴かおろしショウガ一、二つまみ入れ、黒砂糖か蜂蜜を加えて味つけをするだけです。ショウガが切れていれば、チュープ入りのショウガでもかまいません。
*つまり、体にとって不要な細胞は、心臓、肺、肝臓、腎臓、脳などの細胞の栄養素に使われることによって、なくなっていくのです。これを「自己融解」といいますが、断食でガンが治ることがあるのも、このメカニズムによるのです。
*東洋医学ではこれらの現象は過剰な水分による体温低下と、それがもたらす水分の淀みが原因である「水毒」としてとらえます。
*ガン細胞は体温が35度のときにもっとも増殖し、39・3度以上の高温になると死滅します。ですから、ガンの治療法のひとつに発熱療法があるのです。マラリアにかかって発熱し、マラリアが治ったときにガンも消失したという報告もあります。




放射線治療医の本音』 西尾正道(国立札幌病院・北海道地方がんセンター放射線科医長)/NHK出版
*ある程度進行した食道がんは、手術療法と放射線治療以外に治癒に導く方法はないが、最近は手術を避け、抗がん剤と放射線を同時併用して治療する方法が普及してきた。それは、米国の比較研究で放射線治療単独よりも、照射と抗がん剤を同時併用した化学放射線療法のほうが優れた治療成績を得られるという結果が報告されたためである。しかしこの比較試験にはいくつかの問題点が含まれている。対象とした食道がんのタイプ(病理組織型)が日本の一般的な食道がんのタイプと異なること、放射線治療単独群の成績があまりにも悪すぎること、日本では当然手術される3期のがんが多く含まれていることなどで、食道がんの専門医の間ではその結論を単純に日本の食道がんの治療に当てはめていいのかという疑問がある。P124
*がんの進行度は国際的な病期分類があり、TNMという三つの因子を組み合わせて決定されている。TとはTUMOR(原発巣)を意味し、腫瘍の大きさや進達度(どの程度深く、がんが進んでいるか)により、T1からT4の四段階に分類されている。NとはNODE(リンパ節)のことで、周囲のリンパ節転移の状態を表し、リンパ転移がなければN0と記載される。MはMETASTASIS(遠隔転移)の有無を表し、M0は遠隔転移なし、M1は遠隔転移ありということになる。
 この三つの因子を組み合わせて、総合的にがんの進行病期を、1期から4期まで四段階に区別している。肺の抹消にできた三センチ以下の腫瘍で、胸くう内のリンパ節転移がなく、遠隔転移もない場合には、T1N0M0=1期ということになる。