●医学的断食療法(ファースティング)の注意点

 医学的断食療法(ファースティング)の注意点は、第1には、家に帰ってから以前と同じ生活をすれば、元の木阿弥になること。第2は、「あれだけやって良くなったのに、また戻ってしまった。私はやはり駄目なのだ」と自己否定に陥り精神的後遺症になることがあること、第3は、「強い人間になる」ことを目的にしてやると、豊かな感情まで捨て去り自己喪失になることです。

 医学的断食療法(ファースティング)の著明な効果が現れる理由は、心身相関を良くするためです。「身体を活性化し、同時に頭をカラッポ」にすることです。しかし、これは健康道場のように何もないところだからできることです。あるいは孤島や山の中に住んでいるのであれば、医学的断食療法(ファースティング)で充実感と生命力が高まり、本当の自分を感じられれば、それで幸せです。

 しかし、日常生活に帰れば、ストレスが一杯です。日常生活では至るところからストレスがやってきます。ストレスの中で暮らしていると言っても良いでしょう。ストレスがあれば、心身相関が悪化し、過食・お酒・タバコも必要になり生活習慣が乱れます。充実感と生命力が食いつぶされていきます。日常生活のなかではどうすればよいのでしょうか。ここにファースティングの限界があります。道場にいるときは良いが、家に帰ると元の木阿弥になるという点です。

 医学的断食療法(ファースティング)をしても大体半年から1年で元の木阿弥に戻る人がほとんどです。「元の木阿弥になれば、またファースティングをしたらいい」ということで再度来られます。しかし、また帰ったら元の木阿弥になる。だんだん「ファースティングをしてもしょうがない。効果は一時的でしかない」ということになって、ご本人も困られますが、健康医学に人生をかけてきた私も本当に困ります。

 ひどいときには、「また元に戻ってしまった。私は駄目だ」と医学的断食療法(ファースティング)を繰り返せば繰り返すほど自信を失って暗くなっていく方もあり、なんとしても元に戻らない方法にしなければならないと思いました。しかし、心身相関を考えるとそうなるのが当然だったのです。日常生活での生活習慣は何も変わっていないのですから。

「体質は変わらないのですか。どんなに食べても太らないとか、どんになお酒を飲んでも肝臓が悪くならない」と言う人は少なくありません。むしろ、大部分の人は大かれ少なかれ、そう思っておられるのかもしれません。

 しかし、体質は遺伝子で規定されています。「医学的断食療法(ファースティング)を2、3回したら別人になってしまった」、そんなことでは困ります。そんなに都合よく体質は変わりません。

 変わったと感じるのは、悪化していた心身相関と生活習慣が良くなり、その結果しとて体調が良くなったということです。日常生活の生活習慣が変わらなければ、心身ともに元に戻るのが時間の問題であるのは当然のことなのです。

 しかし逆に、では「なぜ半年から1年は持続できるのでしょうか」。体重ならもっと短時間で戻ります。お酒やタバコなら1週間で元の木阿弥でも良いはずです。なぜ、半年から1年も持続できるのでしょうか。
 それは、医学的断食療法(ファースティング)で充実感が高まっているからです。充実感があるときは、ストレスがきてもこたえません。だから、精神力が出ます。知識も使いこなせます。

 ところが、半年から1年位すると、日常生活のなかで充実感が消えてしまうので、どんなに頑張ろうとしても、どんなに精神力を出そうとしても、空振りばかりになります。少しストレスがかかるとまいってしまいます。頑張ろうとすればするほど、泥沼に落ちて行くということになります。

 これだけ素晴らしい医学的断食療法(ファースティング)を経験しても、日常生活のストレスを解決しなければ、その効果は元に戻ってしまいます。そのために、健康道場の入所中に、帰られてからのストレスの解決方法についの講義をしています。是非、講義を聴いていただき、その方法も身につけてください。