青 爺 残日録 脳梗塞よれよれ日記【012】
助けて! 深夜の心臓異変
◆2017年03月23日(木) 発症15日目
 今日は、午前1時55分、トイレ覚醒。
 トイレに行って帰ってくると、眠気は完全になくなっている。あ~あ、これから長い一日が始まるのか。どげんもならんなあ。

 いつものようにウォークマンで「雨音」を聞く。眠れぬ夜のベストパートナーだ。長さは1時間。そのあとは「波音」が1時間、「小鳥のさえずり」1時間と続く。

 雨音を聞きながら、とりとめもなく、あれやこれや頭に浮かぶにまかせて過ごしていたが、なんだかおかしい。何か来るぞ、来るぞ、と思っていると、来た! 時計は丑三つ時の2時45分。

 頭がふらつく感じで、体がやや熱くなる。動悸が激しくなる。
 携帯心電計を見ると、脈は100超、波形は大波連続。朝の発作と同じだ。
 ほかに方法がないので、深呼吸を繰り返す。もちろんナースコール。

 駆けつけたナースが血圧を測る。190近辺。高い!
 異常だが、様子をみるしかなす術はない。
 不安がいやますぜ。ひょっとして、この不安感が誘発要因か?

 5、6分ぐらいかな、発作はおさまっていった。あとに残るのは不安のみ。なぜこんなことが起こるのか、原因がわからないから。

 看護師も他社のペースメーカーは、手の出しようがないという。夜が明けたら、ペースメーカー手術をしたT病院で診てもらえるよう、何か手を考えないと。

 看護師が引き上げ、また闇の中にとりのこされる。
 どげんもならんことは続けて起こる。30分もたたない3時10分ごろ、またまた胸がおかしくなりふらつき感。体が熱くなるのは血圧が急上昇するからか。動悸も高まる。

 携帯心電計の脈拍数は見る間に100超。波形は連続大波。こんな状態にひとりでいたくはない。ナースコールを押す。


 看護師は血圧を測り脈をとってくれるが、やれるのはそれだけ。おさまるのを待つしかない。それでも見守ってくれる人がいるだけで安心できる。
 2、3分。前より短い。ほぼおさまる。心電計の波形が見慣れた形になった。

 二度あることは三度ある。
 夜が明けた6時5分ごろ、またまた脈拍・血圧急上昇、動悸ドキドキ、大波波形。そして、三度あることはなんと四度あった。ちょっと間を置いた6時50分ごろ、同じ発作。

 こうなったらT病院に行くしかない。今のK病院は退院し、T病院に緊急入院する。あるいは、この病院から救急車でT病院に転院する。
 一過性脳虚血発作の治療は終わったも同然だし、明日のCT検査は、どうしても受けなければいけないものではない。退院しても問題はないだろう。

 考えたすえ、この異常頻脈は、心臓、あるいはペースメーカーの問題だと思うし、それに対して手の打ちようがないのなら、ペースメーカー手術をしたT病院で治療を受けたいと申し入れた。

 ところが、今日は主治医が不在で、許可なしに退院・転院はできないと言われる。
 じゃあ、どうすればいいんだ?
 原因もわからないまま、手をこまねいて時間を過ごすのはいやだ。
 主任が出勤してきたら相談します、となだめられ、どげんもならん。

 やがて看護師が、夜勤明けの循環器内科の先生が心電図を見てくれた、と言ってきた。そして、
 「どうやらペースメーカーのセッティング不良のようだ。心臓の異常ではないので、セッティングを調整すれば症状はなくなる、心配することはない」
 と言っているという。

 OK、OK。それなら命にかかわることにはならないだろう。少し安心する。

 昼間のスタッフが出てきたあと、また新しい方針が伝えられた。循環器内科のペースメーカー担当者が、わたしのペースメーカーの製造もとのSJM社に連絡をとり、調整スタッフを呼び寄せてくれるとのこと。

 助かった。今の発作がペースメーカーの設定不良で起きているのなら、調整すれば症状が出なくなる。12時半には来てくれるそうだ。
 安心したら元気が出てきた。カミさんも来た。

 11時30分から栄養指導。約1時間。特筆すべきことはなし。脳梗塞対策の食事療法は、自分でルールを決めるしかない。

 12時ごろ、ペースメーカー担当の臨床工学技士、I さんが来室。SJMの技術者が少し遅れ、12時半の予定を30分ほどずらしたいと言ってきた。了承。

 12時40分、SJM社の技術者2人来室。厚みのあるアタッシュケース大のかばんを開き、テーブルにセット。これがペースメーカー調整用の専用コンピューターだ。そして、横たわったわたしの左胸、ペースメーカーの上あたりに(服を着たままで)テレメトリーワンドを乗せ、調整に入る(*注1参照)。

 一人が数値を細かく読み上げ、もう一人が記入していく。
 やがて「心臓が速く動きます」と言って、なにやらやっている。動悸がしてきた。
 さらに「今度はゆっくりになります」と言うと、動悸はなくなり、なんというか、どんよりした感じが左胸をおおう。

  苦しい、とか、心臓がとまる、とか、そんな感じはまったくない。意識も明瞭。ただし、なんとなくヘンとしか言いようのない重たさ感がある。

 ふと思ったのは、心臓の鼓動がだんだん少なると、こういう気分になるのか。鼓動が0になれば死。その過程の一部分を今、体験している、ということ?


 あとで、ペースメーカー調整を見ていたカミさんに聞いたら、このとき、鼓動の数値は30まで下がったそうだ。

 ということは、脈拍30なら、まだ意識はちゃんとある、ということだ。体を動かせるかどうかはわからないが。

 調整は20分ぐらいで終わった。
 「これで発作は起きませんよ」
 と言われて大安心。本日の一大メインイベントだった。

 ちなみに、心臓の異変は、やはり頻脈。最高で115もあったそうだ。
 運動をしている人なら、それぐらいの脈拍には驚かない。激しい運動をすれば、150ぐらいまでは平気で上がる。

 しかし、深夜、寝ているとき、突然そこまで脈が上がることは、普通はない。
 しかもそれが「ペースメーカー起因性頻脈(PMT)」というのだから、オドロキモモノキなんとやらだ。

 原因は心臓にあるのではなく、ペースメーカーをつけているがゆえに起きる現象だという。詳しいことは割愛するが、このPMTは作動設定を微調整することで防げる。植込んで日が浅いわたしの場合、そうした調整が必要なようだ。

 まあ、なにはともあれ、丑三つ時の恐怖からは解放された。今回はどげんかなって、メデタシメデタシである。                  【012・助けて! 深夜の心臓異変 了】

◆参考データ
*注1  ペースメーカー調整専用コンピューターは「プログラマー」と呼ばれる。これとセットになるのがテレメトリーワンドだ。
 テレメトリーワンドは、プログラマーが、ペースメーカー本体と交信して作動状況を調べたり、セッティングを修正したりするときの「アンテナ」の役目をする機器。ドーナツの形をした磁石だ。
 これらを使い、ペースメーカーの作動状況、バッテリーの残量、電極の状態など、細かくチェックすることができる。
 体内に植込んだペースメーカーを体外から自由に操る、そんなイメージの頼りになるフォローアップマシンである。
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Contents
【001】アッ!ろれつが回らない
【002】梗塞とは細胞壊死のこと
【003】アテローム血栓性脳梗塞
【004】
ラクナ梗塞は15mm以下
【005】心原性脳塞栓症はコワイ
【006】
MRIは検査なしになった
【007】
脳梗塞の黒幕は動脈硬化
【008】
退院できない眠れぬ夜は
【009】
アテローム血栓が原因?
【010】
医者の怒声が響いた面談
【011】心臓までおかしくなった
【012】
助けて! 深夜の心臓異変
【013】入院生活ともオサラバなり
【014】MRI撮影は認定病院のみ
【015】ペースメーカーは異常なし
【016】MRIで脳梗塞が見つかった
【017】頻脈の大波小波に翻弄!
【018】ラクナ梗塞という十字架
【019】


サイト運営の青爺より
68歳でペースメーカーを
植込んだ隠居じ~さんが、
69歳で脳梗塞の発作で倒れ、
どげんもなら~んと大パニック。
救急車で運ばれた先では
なんとも不可解な治療を受け、
良くなったのか悪くなったのか。
ホントにどげんもなら~ん!









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【004】ラクナ梗塞は15mm以下
【007】脳梗塞の黒幕は動脈硬化
【010】医者の怒声が響いた面談
【013】入院生活ともオサラバなり
【016】MRIで脳梗塞が見つかった

【002】梗塞とは細胞壊死のこと
【005】心原性脳塞栓症はコワイ
【008】退院できない眠れぬ夜は
【011】心臓までおかしくなった
【014】MRI撮影は認定病院のみ
【017】頻脈の大波小波に翻弄!

【003】アテローム血栓性脳梗塞
【006】MRIは検査なしになった
【009】アテローム血栓が原因?
【012】助けて! 深夜の心臓異変
【015】ペースメーカーは異常なし
【018】ラクナ梗塞という十字架