青 爺 残日録 脳梗塞よれよれ日記【004】
ラクナ梗塞は15mm以下
◆2017年03月12日(日) 発症4日目
 今日は日曜日。入院している身としては曜日は関係ないものの、気分はやっぱり違う。休みモード。 勉強にも身が入らない。

 とはいえ、今やるべきことの優先順位は、脳梗塞とはなんぞや、という疑問を解明することが第一。シャキッとしなくちゃ。

 さて、前回、脳梗塞の3タイプをあげた。

 1)アテローム血栓性脳梗塞
 2)ラクナ梗塞
 3)心原性脳塞栓症

 今日のテーマの「ラクナ梗塞」とは、どんな特徴を持つ脳梗塞なのだろう。

 前回のアテローム同様、これも「ラクナ lacunar」という病名がヒントになる。
 名前のラクナは「小さな空洞」を意味するラテン語。

 ラクナ梗塞では、脳の細い血管が詰まり、脳細胞が壊死して「小さな空洞」のような梗塞巣になる。だからそう呼ばれる。
 ラクナ梗塞は、15mm未満の小梗塞を指すとされる。大半を占めるのは3mm~5mmの大きさだ。

 脳に酸素と栄養を運ぶ血管は、太い皮質動脈(皮質枝)と、枝分かれして脳内部に向かう細い穿通(せんつう)動脈(穿通枝)がある。
 ラクナ梗塞は脳内部に張りめぐらされた穿通枝領域(注*1)で起きる梗塞だ。


▲太い皮質動脈から枝分かれしていく中・小動脈。さらに細い末梢の穿通動脈は、脳の内部にも入っていく。図では皮質の小動脈が障害されている(赤い丸)が、ラクナ梗塞は、こうした障害が脳の深部の穿通枝領域で起きる。




 この穿通枝はとても細い血管だ。

 小動脈で直径300~100μm、さらに細動脈になると直径100μm以下。1μmが0.001mmなので、穿通枝は0.3mm以下の極細血管というわけだ。

 ちなみに、皮質を走る太い血管は3~6mm程度だという(*注2)。

 太い血管と違い、細い血管が詰まって起きる梗塞だから、梗塞巣も小さい。先ほどの15mm以下という定義もそこに理由がある。
 「1本の穿通枝が詰まると壊死に陥る範囲は最大でも1.5cmを超えない」といわれているのだ(*注3)。

 当然、症状も軽いことが多い。それもラクナ梗塞の特徴といえるだろう。

 最近よく耳にする「隠れ脳梗塞」とは、最も軽いというか、症状を感じさせない無症候性のラクナ梗塞だ。

 これなんかは、たまたま受けた人間ドックなどの画像検査で発見され、エッと驚くことになる。それもこれも、極細血管の詰まりによる梗塞だからだ。

 とはいえ、症状の軽重は、梗塞した部位によるところが大きいのも事実。
 無症状から重篤な症状まで、ピンキリだ。あなどってはいけない。

 その症状は「ラクナ症候群」(*注4)としてまとめられている。列記すると、

*純粋運動性不全片麻痺
*純粋感覚性脳卒中
*運動失調性不全片麻痺
*構音障害・手不器用症候群
*感覚運動性脳卒中

 ということになる。

 わたしの印象としては、予後も良好なことが多いというし、おおむね軽い脳梗塞ですむのでは、というものだ。

 ただ、注意しなければいけないのは、たとえば、偶然、検査で発見されても、無症候性だからといって放っておくことだ。

 というのも、ラクナ梗塞は繰り返し起きるという特徴がある(多発性脳梗塞)。
 多発すると、脳機能の低下を招き、脳血管性認知症(*注5)やパーキンソン症候群にもなりかねないという。

 脳血管の病変だけに小なりといえども決してあなどらず――が鉄則。


 最後に、ラクナ梗塞の原因を書いておく。原因がわかれば対策が立てられる。

 さて、その原因だが、わたしが読んだ資料のすべてが同じことをいっている。
 それは「高血圧」だ。

 血圧が高い➜極細の血管壁に強い圧力➜壁が傷つく➜修復作用が働く➜動脈硬
 化の進行➜血管が詰まる➜血流がストップする➜脳細胞が死ぬ➜体の障害発症


 ここでもまた、アテローム血栓性脳梗塞と同じような時系列式ができるのだ。
 ただし、キーになるのは高血圧。
 脳の内部を走る極細の穿通枝は、「高血圧の影響を非常に強く受け、動脈硬化が進行しやすい形態になっている」(*注6)のである。

 以上、タイプの違う2つの脳梗塞をみてきた。
 そして、似通った時系列式ができることがわかった。この式をもっとシンプルにしてみると、次のようになる。

 危険因子➜動脈硬化➜血管が詰まる➜脳梗塞発症

 ここでいう「危険因子」とは、動脈硬化を引き起こす「原因」のこと。ラクナ梗塞の危険因子は主に高血圧。そのほか、4つの因子を含め、5大危険因子が知られている。

 1)高血圧
 2)脂質異常症
 3)糖尿病
 4)喫煙
 5)加齢

 とうことで、5大危険因子、略して「5RC(Risk Factor)」抑制が、わたしの新たな生活目標だ(*注7)。

 加齢はいかんともしがたいし、喫煙は15年前にやめた。だから、残る3つをいかにコントロールするか、真剣に考える必要がありそうだ。

 これは、どげんもならん~ことではない。
 日々の生活を改めていけば、必ずできることだろう。

 うん、久しぶりに、どげんかなりそうなことが見つかったな。
                                 【004・ラクナ梗塞は15mm以下 了】

◆参考データ
*注1 穿通枝領域は、大脳基底核、内包、視床、橋といった、脳の深奥部に位置する。詳細は下記のサイトが詳しい。ラクナ梗塞についてもよくわかる。
*http://medical-checkup.biz/archives/11686
*脳の構造がわかりやすいサイト。
*https://rehatora.net/%E8%84%B3%E3%81%AE%E9%83%A8%E4%BD%8D%E3%81%A8%E5%BD%B9%E5%89%B2%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%8F%E8%A7%A3%E8%AA%AC/

*注2 脳動脈の興味深い話を現役の脳外科医が紹介している。脳梗塞とは直接の関係はないが、とてもおもしろい。
*http://ameblo.jp/nsdr-rookie/entry-11599499700.html

*注3 *lhttp://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/1/pub0005/G0000068/0003

*注4 ラクナ症候群の詳しい内容は次のサイトで。
*http://medical-checkup.biz/archives/11686

*注5 脳血管性認知症についてはこのサイトが詳しい。
*https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/nou-kekkansei.htm

*注6 ラクナ梗塞の概要を知るにはWikipediaなどがいいだろう。
*https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%83%8A%E6%A2%97%E5%A1%9E
*https://medley.life/news/item/56bb507cb74f3112008b4fdd

*注7 危険因子についてはこのサイトが参考になる。
*http://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/1/pub0005/G0000068/0006
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Contents
【001】アッ!ろれつが回らない
【002】梗塞とは細胞壊死のこと
【003】アテローム血栓性脳梗塞
【004】
ラクナ梗塞は15mm以下
【005】心原性脳塞栓症はコワイ
【006】MRIは検査なしになった
【007】脳梗塞の黒幕は動脈硬化
【008】退院できない眠れぬ夜は
【009】アテローム血栓が原因?
【010】医者の怒声が響いた面談
【011】心臓までおかしくなった?
【012】助けて! 深夜の心臓異変
【013】入院生活ともオサラバなり
【014】MRI撮影は認定病院のみ
【015】ペースメーカーは異常なし
【016】MRIで脳梗塞が見つかった
【017】頻脈の大波小波に翻弄!
【018】ラクナ梗塞という十字架
【019】


サイト運営の青爺より
68歳でペースメーカーを
植込んだ隠居じ~さんが、
69歳で脳梗塞の発作で倒れ、
どげんもなら~んと大パニック。
救急車で運ばれた先では
なんとも不可解な治療を受け、
良くなったのか悪くなったのか。
ホントにどげんもなら~ん!









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【016】MRIで脳梗塞が見つかった

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【005】心原性脳塞栓症はコワイ
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【011】心臓までおかしくなった?
【014】MRI撮影は認定病院のみ
【017】頻脈の大波小波に翻弄!
【003】アテローム血栓性脳梗塞
【006】MRIは検査なしになった
【009】アテローム血栓が原因?
【012】助けて! 深夜の心臓異変
【015】ペースメーカーは異常なし
【018】ラクナ梗塞という十字架